かつて女子を沸かせたテクニックもいまやただの「危ない人」!?

 時代は高度成長期、バブル真っ只中の80年代。六本木では万札を束にしてタクシーを奪い合い、メルセデスやBMWが「六本木のカローラ」なんて言われるくらいウジャウジャと走っていたものでした。現在50代の皆さんが、遊び盛りの20代を謳歌していた頃のことです。

 当時の女性たちからすると、「クルマ持ってない男なんて論外」だったそうで、電車ならたった10分そこそこの渋谷から六本木を、わざわざ大渋滞にハマりながら2時間かけてでもクルマで行く。これがステイタスだったのでした。そんな時代だから、女性たちが運転する男性の姿にときめくのも必至。その代表的な運転テクニックが、通称「モテバック」ですね。車庫入れなどでバックをする際に、助手席の背もたれに手を回し、後ろを振り向きながらバックをすると、まるで女性は自分が抱かれているような気分になってキュンキュンする、というものです。

 でも今となっては、バックモニターなどが普及したおかげですっかり「モテバック」はすたれ、そんなことをしてバックするヤツは運転が下手だ、くらいのひどい言われよう。未だにやっている人はどうぞご注意くださいね。そしてじつはほかにも、80年代トレンディドラマでも見かける、当時の女性たちはときめいた運転テクニックなのに、今じゃドン引きされるだけ、というものがありますので、ご紹介したいと思います。

 まず、モテバックと同様に昔は「カッコいい!」「運転がうまい!」と目がハートになる女性が多かった、ドア開けバック。これは、車内で後ろを振り向く代わりに運転席のドアを開けて、顔を出して後ろを振り向きながら、駐車場などの白線を確認してバックする運転テクニックです。これはとくに、女性との待ち合わせ場所で車庫入れや縦列駐車をする場合などに、外から見ている女性をキュンとさせるためのものでした。が、今こんなことをやったらただの「危ない人」。

 バックモニターがあれば液晶画面でいくらでも白線なんか確認できるし、むしろ死角もなくなるから安全。ドアを開けた方しか見てないってことなので、もし助手席側に歩行者などがいたら危ないですよね。サイドミラーとバックモニターを上手に使って、安全にスムースにバックできる人に女性はときめくはずです。

女性が感じる「男性らしさ」も時代とともに変化している

 次に、シートをめいっぱい後ろに下げて寝そべるように座り、片手をまっすぐに伸ばしてハンドルを握って運転する「ストレートアーム」。これも昔はカッコいいと思われていたようですね。確かに、腕まくりしたワイシャツから日焼けした腕がのぞいているところは、ちょっと男らしさを感じてキュンとくるかもしれません。

 でも今考えれば、もし何かが急に飛び出してきて、とっさにハンドル操作で避けなければならない場合などに、こんなに腕が伸びていたら正確なハンドル操作はできません。シートが遠くて寝そべったような姿勢では、しっかりと視界も確保できていないということなので、そもそも危険です。そんな人の助手席に乗って命を預けるなんて、考えたくもないですよね。ハンドルはしっかり両手で9時15分を持ち、適度に肘が曲がって余裕のある状態がベスト。そういう男性の隣りに乗りたいものです。

 続いて、カーブを曲がる時に、一度曲がりたい方向とは逆にハンドルを切ってから、グイッと曲がりたい方向に切り込む運転テクニック、フェイント。これも今やると、ただの「乱暴な運転」と思われがちです。これは、昔の4WDのように曲がりにくクルマの場合に、フェイントを使うことでカーブのイン側になるタイヤに一気に荷重を移動させて、クルリと鼻先を曲がる方向に向けるためのもの。ラリーなどの競技でも、テールスライドのきっかけを作るのに有効とされ、競技では今でも使われているテクニックです。

 でも、制御技術の進化で昔ほど曲がりにくい4WDはなくなり、そんなことをしなくたってちゃんと曲がります。昔は女性も、Gがかかることに対して寛容というか、むしろそこに男らしさを感じていたフシがありましたが、今はちがいます。丁寧なハンドル操作がいちばん、女性に優しいのです。

 さて、最後はテクニックとは言えませんが、昔は女性がときめいたものとして、くわえタバコでの運転というのがありました。けむりが目にしみて、ちょっと目を細めたりする顔がまたいい、なんて話もあったほどですが、今じゃもうすっかり、世の中的にそもそもタバコが悪者の時代。逃げ場のない車内で吸われたら、助手席の女性も確実に受動喫煙確定ですから、これは嫌ですよね。いくら自分のクルマの中とはいえ、ほかの人を乗せている時には喫煙は慎み、パーキングなどの喫煙所で吸うのがマナーだと思います。

 というわけで、トレンディドラマでは女性たちをキュンキュンさせていたのに、今やったらかなりドン引きな運転テクニックをご紹介しました。クルマの進化とともに消えたものもあれば、時代の変化で印象が変わったものもありますね。女性たちが感じる「男性らしさ」も時代とともに変化していますので、ぜひ運転する際には助手席だけでなく周囲にも優しい、スマートな運転を披露してくださいね。