開発遅れる「MRJ」が迎える正念場の夏
三菱航空機は国産初ジェット旅客機「MRJ」の開発の遅れで納期を5度延期し、開発費用は当初想定の約3倍の累計6000億円に膨らんだ。18年3月末の債務超過額は1000億円規模。資本増強に向けて三菱重工はステークホルダーとの協議を本格化する。
三菱重工の宮永俊一社長は「18年度内の資本増強と債務超過解消はコミットメント。(事業化までの)レールを敷くところまでは、どんな形であれ責任を持つ」と断言しており、協議は夏以降に本格化する模様だ。
だが課題は多い。一つは航空当局からの型式証明(TC)取得だ。設計変更を反映した試験機2機を米国で19年に試験飛行する計画。追加試験機での作業を順調にこなし、実際の取得作業であるTCフライトに入ることを目指す。量産初号機納入に向けた最大のハードルとなる。
営業面では受注の半分以上を占める北米で、航空会社とパイロット組合の労使協定条項「スコープクローズ」の緩和が実現するかが焦点。緩和されれば座席数88のMRJ90を販売できる。だが交渉は難航し、座席数76のMRJ70を北米の主力製品に位置付けた。
MRJ70の市場投入は20年半ばを目指すMRJ90の1年遅れを見込むが、前倒しを視野に入れる。競合のブラジル・エンブラエルには70席級の新型機の開発計画がない。
ただ、エンブラエルはボーイングと提携交渉中。三菱重工はボーイングの機体部品を長年開発し、MRJの保守サポートを受ける予定。長年の盟友が競合を全面支援すれば、MRJの受注への影響も懸念される。ただ、三菱重工首脳のもとにはボーイング関係者から「我々の友好関係は変わらない」との連絡があったという。
開発スケジュールには変数が多く、正確な納期を伝えられぬ中、受注交渉を重ねながらも新規契約は見送っている状況。三菱航空機は7月に英国で開かれる航空宇宙産業展「ファンボロー国際航空ショー」でMRJの初の飛行展示を実施する計画で、アピールできなければ航空会社からの信頼を失いかねない。
