学生の窓口編集部

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わきや足の裏に代表される「くすぐったさ」。友達や兄弟とくすぐり合って遊んだ経験は誰でもあるだろうが、脳の成長に大事な役割をしているのはご存じだろうか?

くすぐったさは快と不快が同居するフシギな感覚で、「快」はA10と呼ばれる神経系を刺激し、好き嫌いを判断する扁桃体(へんとうたい)の発達をうながす。好きなものを見て喜んだり、危ないものを避ける能力が身につく「くすぐり」は、赤ちゃんにとって遊びだけでなくトレーニングにもなっているのだ。

■笑いは好意の証

「くすぐったい」は、心地良いと感じる「快」と、イヤだと思う「不快」が同居した感覚で、メカニズムには解き明かされていない点が多い。くすぐられる=笑ってしまう、の印象が強いものの、これは皮膚に受ける刺激だけが原因ではなく、相手に対する好意の表れであり、精神的な要素が多く含まれた「感覚」なのだ。

赤ちゃんの年齢と、足の裏をくすぐられたときの反応を比較すると、
 ・生後2〜3ヶ月 … 足を引っ込める
 ・生後7〜8ヶ月 … 笑顔を見せる、手足をバタつかせる
で、足を引っ込めるのは「不快」と感じている証拠だ。ところが成長するにつれて笑顔をみせる、笑い声をあげるようになるのは「心地良い」と感じているからで、1歳以上になるとくすぐられる=笑うが定着するようになる。

くすぐられると笑ってしまうのはなぜか? 身をよじって逃げようとしながら笑い声をあげる理由は、不快と感じながらも「もっと続けて欲しい」の合図で、
 ・逃げようとする … 防衛本能
 ・笑う … くすぐりが「遊び」であることを理解している
が同時におこなわれている。とくに、相手が親や家族など親しいひとならコミュニケーションと判断し、それを楽しむようになる。もし笑わずに逃げるだけなら、くすぐっているひとを警戒している=「快」と感じていない証なので、自分がどれくらい好意的に見られているかのバロメーターとしても利用できる。

■くすぐりは、危機管理能力を発達させる

くすぐりは遊びとしてだけでなく、脳の成長にも大いに役立つ。A10と呼ばれる神経系が刺激され、感情や運動、危険を避ける能力が高まるのだ。
くすぐられて「快」と感じると、「やる気」の素であるドーパミンの分泌量が増え、A10神経系を刺激する。するとA10神経系につながっているほかの部分も刺激され、
 ・扁桃体(へんとうたい) … 好き嫌いを判断する
 ・海馬(かいば) … 記憶
 ・脳基底核(きていかく) … 運動
 ・側座核(そくざかく) … やる気や恐怖
が発達する。赤ちゃんにとって遊びに過ぎない「くすぐり」が、じつは脳のトレーニングにもなっているのだ。

なかでも重要なのは扁桃体で、ここには多くの情報が集まり、恐怖への「条件付け」がなされる部分なので、扁桃体が発達すれば危険を回避する能力も高まる。もしこの部分の働きが悪いと恐怖を感じることができなくなり、ムシでもガラスでも平気で触れてしまうようになる。条件付けが正しくおこなわれないので、頭のなかに「近寄ると危ないものリスト」が作れなくなってしまうのだ。

からだに触れられることは、乳幼児にとって自分のからだの構造を知る機会にもなるので、子どもへのスキンシップが足りないと感じているひとは、くすぐり遊びを取り入れてみると良いだろう。

■まとめ
 ・「くすぐったい」は、快と不快が同居した感覚
 ・くすぐられて笑うのは、相手に対する好意のあらわれ
 ・扁桃体や側座核などを刺激し、脳の発達をうながす