株式会社ウィルコム サービス計画部 須永康弘氏

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株式会社ウィルコムが6月27日に発売したスマートフォン「WILLCOM 03(ウィルコム ゼロスリー)」は、ワンセグチューナーや2モードイルミネーションキー、デコラティブメールの表示機能を備えるなど、多機能ケータイを強く意識している。

第4世代となるウィルコムのスマートフォン「WILLCOM 03」はどのようなユーザーをターゲットとしているのか? また、今後の次世代PHS「WILLCOM CORE」への対応はどうなっているのか?

今回は、WILLCOM 03の開発担当者のウィルコム サービス計画部 須永康弘氏に、WILLCOM 03開発までの経緯と同社のスマートフォン戦略、そして「WILLCOM CORE」のサービスについてうかがってみた。

■ スマートフォンを意識しないで触れる端末へ - ビジネス以外でも楽しめる端末
編集部:まずはじめにWILLCOM 03の開発の経緯を教えていただけますか。
須永氏:私たちのスマートフォンは、最初のW-ZERO3から始まってマーケットの声を聞きながら歴代ブラッシュアップをしてきました。WILLCOM 03はマーケットサイズをさらに拡大したいという思いから今までのスマートフォンから大きくジャンプアップしようと考えました。

今までのスマートフォンで成し遂げられなかったことをすべて成し遂げようというコンセプトから作り上げたのが、今回のWILLCOM 03です。今までのコンセプトを残しながら一新する意味を込めて名前も今までは「W-ZERO3」と言っていたものを今回からは「WILLCOM 03」と新しく変えました。

編集部:どういうユーザーがターゲット層なのでしょうか。
須永氏:今まではスマートフォンを意識してご購入いただいていましたが、今回はケータイ売り場に来て「気づいたらWILLCOM 03を触っていた」「少し気になるので触ってみらWILLCOM 03だった」というように、お客様にスマートフォンを意識しないでまずは触れていただける端末を目指して開発を進めてきました。基本的にはケータイにないビジネスツールとなる機能を盛り込んでいますので、メインターゲットはビジネスユーザーですが、今回は学生や女性にも手軽に使っていただける設計を取り入れています。

また、デザインも含めてより楽しめる部分を充実させています。
たとえば「コミック&ブンコビューア」はケータイでもなかなか実現されていない横画面のフルワイドコミックコンテンツなどのアプリケーションがインストールされています。

そういった意味でスマートフォンとして見ていただくのではなく新しいタイプのケータイとして見ていただくのもよいのではないかと考えています。
写真1「DEATH NOTE」(C)大場 つぐみ・小畑 健/集英社写真2 ワンセグ放送を受信しているところ
写真1「DEATH NOTE」(C)大場 つぐみ・小畑 健/集英社写真2 ワンセグ放送を受信しているところ

編集部:カラーバリエーションを3色揃えた点もそこにあるのでしょうか。
須永氏:そのとおりです。さらに今までは、白や黒、グレーなど、ビジネスマンが好んで使えそうな定番色を採用してきました。今回のWILLCOM 03では、そのような色をあえて採用しないで、すべてが新しい色ということを意識しました。特にライムトーンやピンクトーンの調色は大変難易度の高いもので、おそらく携帯電話でもこの手の色をうまく引き出せているものは極めて稀ではないかと思います。

シャープさんのデザインのコダワリとして液晶部と本体部との色味を変えています。このグラデーション感は、折り畳みタイプやストレートタイプの携帯電話では演出できないような色味となっています。
写真3 WILLCOM 03は液晶部と本体部との色味を変えている写真4 左からライムトーン、ゴールドトーン、ピンクトーン
写真3 WILLCOM 03は液晶部と本体部との色味を変えている写真4 左からライムトーン、ゴールドトーン、ピンクトーン

編集部:「コンセプトを維持したまま」とおっしゃいましたが、具体的にはどういうことでしょうか。
須永氏:QWERTY配列のキーボードですね。私もそうですがパソコンに使い慣れた人たちはQWERTY配列のキーボードのほうが使いやすいと思っています。過去のシリーズで最も打ちやすいものに仕上がったと思っており、メールを多用されるお客様にはケータイとは違う有効な入力手段を持っている点が大きな違いと考えています。

また、携帯電話は縦ベースで使用しますが、パソコンは横ベースですので横にしたときに一番価値が出る商品にしたかった訳です。WILLCOM 03は、パソコン向けのウェブサイトやメールをそのままのかたちで使用できる点も大きな強みであると考えています。

■今までできなかった機能の実現を!
編集部:「今までに成し遂げられなかったことをすべて成し遂げようとした」というのは、どういうことでしょうか。
須永氏:まずご覧になってわかると思いますが端末のデザインが圧倒的に進化しています。ひとつは「フラットパネル」と言われるものです。今までの弊社のスマートフォンでは上からタッチパネルを押さえていたので、パネルのまわりにある程度の幅と高さを持たせる必要がありました。それが今回のWILLCOM 03ではフラットなかたちとなっております。

今までのW-ZERO3シリーズでも小型・軽量化を実現すべく努力してまいりましたが、今回は小型・軽量化かつデザイン性を意識しております。これが大きなジャンプアップのポイントです。

編集部:小型化の工夫は、どこでしょうか。
須永氏:今までのW-ZERO3シリーズでは、コストを削減できることからできるだけ汎用の部品を使用していました。そのぶん端末の値段を安く提供できています。今回のWILLCOM 03は小型化を実現するために、汎用の部品ではなく専用部品を使用していますが、なるべく端末の価格が高くならないように努力しています。

たとえば、ある機能を実現するために今までは2つ必要だった部品を専用部品ひとつにするなどの技術要素を各所に埋め込んで、ここまでそぎ落としてきました。

編集部:そこまで努力されていると、今までのスマートフォンよりも開発に時間がかかったのではないでしょうか。
須永氏:むしろ短くしていただきました。今までのモデルはどれも7月に発売されていたので、開発に12ヶ月かかっています。WILLCOM 03は6月に発売ですので、開発期間は11ヶ月と、平たく考えても1ヶ月縮まっています。

編集部:開発期間を短縮した理由というのは?
須永氏:ボーナス商戦を逃したくないということです。ご存じのとおり携帯各社さんはiPhone3Gを含めて夏モデルを発表されています。7月はじめから販売は山場を迎えます。我々はそれらに対して先手先手でいきたいという思いがあって、それを実現するために6月に発売したかった訳です。

開発元であるシャープさんとできる限り開発の効率をあげて、あまり検討期間を長引かせずに開発することができました。

■「03」は3つの機能と原点回帰の思いを込めて
編集部:ところで、名前の由来を教えていただけますか。
須永氏:基本性能である通話・メール・ウェブの3つの機能をさらに強化したという意味が込められています。さらに「03」の「0」は、原点に立ち返るという意味合いが込められています。

編集部:かなりコンシューマーよりのスマートフォンに見えますが、法人でもお使いいただけるかたちにも仕上がっているのでしょうか。
須永氏:私たちはおかげさまでスマートフォンのシェアは7割をいただいております。法人のユーザー様からも圧倒的な支持をいただいていると考えております。見ためはかなりコンシューマー寄りですが、法人様に導入できないかというと、そうではありません。

WILLCOM 03はOSにWindows Mobile 6.1を採用していますが、これは日本で初めての採用です。今までのバージョンとどこが変わったかというと、法人向けの機能が強化されています。私たちがあえて言っていないのは個人のユーザー様にアピールしているからです。

そういった意味では、他社のスマートフォンよりも一歩先の機能を備えている訳です。私たちの歴代の商品をお使いいただいているユーザー様にWILLCOM 03を見ていただければ、その違いがハッキリとわかっていただけるものと考えております。とくにセキュリティが強化されておりますので法人様にも安心して導入していただける商品に仕上がっています。


次のページでは、WILLCOM 03の強みと開発時の苦労話、次世代PHS「WILLCOM CORE」についてうかがってみた。