甲子園出場を決め喜ぶ八王子実践ナイン(7月26日 神宮球場/榎園哲哉)

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第108回「全国高校野球選手権大会(甲子園大会)」が5日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。

最高気温35度を超える猛暑日が続き、選手やスタッフの体調面も心配されるが、熱中症対策はどのように取られるのだろうか。主催する日本高等学校野球連盟(高野連)と朝日新聞社にそれぞれ聞いた。

また、対策にもかかわらず万が一、熱中症による被害が発生した場合の法的責任を問われる可能性について、甲子園大会出場経験のある弁護士に取材した。(ライター・榎園哲哉)

予選から8分間の「クーリングタイム」導入

筆者は7月26日、夏の日差しが照りつける東京・神宮球場で西東京大会の決勝戦を取材した。

試合では熱中症への対策が随所で取られていた。5回終了と同時に、8分間の「クーリングタイム」に入り、体の冷却等のために両校の選手が一斉にベンチ裏へ消えていった。

対策は、選手たち以外にも呼び掛けられた。ほぼ満席のスタンドの両校応援団、観客らに対し、各イニングの合間ごとに「こまめな水分補給など熱中症の予防をお願い致します」とのアナウンスが流された。

気象庁によると、この100年間で世界の年平均気温は0.79度上昇。数年に一度レベルだった猛暑日などが毎年のように発生するようになり、スポーツ界では熱中症対策が避けられなくなっている。

先月、スペインの優勝で幕を閉じたサッカーのワールドカップ(メキシコ、カナダ、アメリカの3か国で開催)でも各試合の前・後半の合間に、それぞれ3分間の「ハイドレーションブレイク(給水タイム)」が全試合に義務付けられた。

第2試合の時間帯避けた「2部制」の実施を拡大

日差しが照り付けるグラウンドで、ユニフォームに身を包んでプレーする球児らをどうやって守るか。

高野連広報担当者は、甲子園大会の開幕を前に「暑さ対策については、選手や観客の健康を最優先に、あらゆる対策を検討しています」と語る。

2年前の106回大会から導入している朝と午後・夕方の時間帯に試合を分ける「2部制」は今回、全18日間の大会期間中の10日間に拡大した。また、開会式は前回に引き続き、夕方の時間帯(午後4時~)に行われる。

広報担当者によると、過去2大会の選手の熱中症疑い件数は106回大会で58件、107回大会で24件あった。

今大会の2部制は、「過去3大会で熱中症疑いの発生が比較的多かった従来の第2試合(午前10時半頃~午後0時半頃)の時間帯を避ける設定としました」(同担当者)。

試合開始前の本塁付近などと、観客席の複数地点で、定期的に暑さ指数(WBGT=湿球黒球温度)と気温も測定し、必要に応じて当該試合の審判委員らに注意喚起を行う。

球場敷地内には救護室を設置。内科医と看護師の各2人が体調不良者らの診療にあたる。必要に応じて地元病院へ救急搬送する。

「クーリングタイム」も取られる。5回終了後、選手はベンチ裏の冷房が効いた「クーリングスペース」に移動し、理学療法士の指導の下、着替え、手のひらや頸部の冷却、アイススラリー(シャーベット状の飲料)の摂取などを行う。

「具体的な状況次第」では法的責任問われる可能性も

このような万全の対策にもかかわらず、熱中症による健康被害が生じた場合、関係者らが法的責任を問われる可能性はあるのだろうか。

石川・遊学館高校在学中の2002年夏に、自らも甲子園大会に出場した経験を持つ高根和也弁護士は、「熱中症により死傷者が出ることを具体的に予見し、それを回避することができる立場にある者が結果を回避する措置をとらなかったときは、刑事・民事上の責任が生じる可能性があります」と語る。

裁判になった場合の争点については、「具体的な状況次第です」と指摘。

たとえば、「ここまで極端な事例はないでしょうが、監督が試合中に水分をとることを禁止して選手たちに試合をさせれば、監督に責任が生じるだろうと思います」(高根弁護士)

結果を回避する措置をとったか否かに加え、「当日の天候、試合時間の長短、その選手の体調と疾患の有無、当人からの申し出の有無、異変(普段の様子との違い)の有無、水分補給ができる環境の有無、などが争点になると思われます」(同弁護士)

「代表として恥じない試合をしたい」

全国大会に出場する都道府県代表は全49校。8月5日の開会式から同22日の閉会式まで18日間にわたって、優勝旗を目指し熱戦を繰り広げる。

熱中症への万全の対策を講じる高野連。高野連と共に大会を主催する朝日新聞社(広報部)も、「選手・観客等の熱中症対策に細心の注意を払って取り組んでまいります」とのコメントを寄せる。

筆者が取材した西東京大会を制した八王子実践高校の河本ロバート監督は、「東京都代表として恥じない試合をしたい」と語った。その思いは、各チームも同じだろう。郷土の期待を背負う球児たちの“夏”が間もなく開幕する。