「糖尿病の初期症状」として「足」にどんな症状が現れるかご存知ですか?【医師監修】
糖尿病では、血糖値が高い状態が長く続くと、神経や血管に負担がかかります。足は身体の末端にあり、感覚の変化や血流の低下が現れやすい部位です。そのため、糖尿病の方は、しびれ、痛み、冷え、感覚の鈍さ、傷の治りにくさなどが足のサインとして現れる場合があります。
足の異常が強い痛みとして現れるとは限らないです。糖尿病による神経障害が進むと、傷ややけどに気付きにくくなります。小さな靴ずれ、水ぶくれ、爪の食い込み、水虫などが悪化し、潰瘍や感染、壊疽へ進む場合もあります。足のトラブルを糖尿病性足病変と呼びます。
記事では、糖尿病で足に現れる初期症状、進行したときの足病変、毎日のフットケア、受診の目安を解説します。
監修医師:
高宮 新之介(信州大学医学部附属病院 呼吸器外科)
昭和大学(現・昭和医科大学)卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、日本外科学会専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事する中、医学博士を取得。昭和大学横浜市北部病院(現・昭和医科大学横浜市北部病院)呼吸器センターを経て、現在は信州大学医学部附属病院 呼吸器外科に勤務。肺がんを中心とした呼吸器外科診療、低侵襲手術、肺がん術後QOL、術前心理状態と術後疼痛に関する研究に取り組む。日本外科学会専門医、日本呼吸器外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。
糖尿病で足に現れる初期症状

糖尿病の初期に足ではどのような症状が現れますか?
糖尿病の初期には、足の症状がはっきり出ない場合があります。ただし、血糖値が高い状態が続くと、足先の神経や血管に影響が出て、次のような変化に気付く場合があります。しびれ
チクチク感
ピリピリ感
痛み
冷え
ほてり
感覚低下
皮膚の乾燥
傷の治りにくさ
糖尿病による神経障害は、両足のつま先から症状が出ることがあります。靴下を履いているような違和感、足の裏に紙が貼り付いたような感覚、正座の後のようなしびれを訴える方もいます。一方で、感覚が鈍くなるだけで痛みが少ない場合もあります。痛みがないために、靴ずれや小さな傷に気付くのが遅れることがあります。
足のしびれや痛みは糖尿病と関係があるのでしょうか?
関係する場合があります。糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、末梢神経の働きが障害され、足のしびれや痛みが起こることがあります。糖尿病情報センターは、高血糖が続くと、しびれや痛み、反対に感覚がなくなる障害が起こる場合があると説明されています。糖尿病による神経障害は、症状の出方が同じではないこともあります。強い痛みを感じる方もいれば、痛みよりも感覚の鈍さが目立つ方もいます。足の裏に小石が入っていても気付かない、水ぶくれができても気付かない、熱い湯や暖房器具によるやけどに気付くのが遅れるなどが起こります。
足の冷えや感覚の鈍さも糖尿病のサインですか?
糖尿病と関係する場合があります。足の冷えは、神経障害だけでなく、足の血管が狭くなる末梢動脈疾患との関係もあります。糖尿病情報センターは、足の血流が悪くなると、足先の冷え、しびれ、休み休みでないと歩けない症状が出る場合があると説明されています。感覚の鈍さは、足を守るうえで大きな問題です。痛みは身体の異常を知らせるサインですが、神経障害があると、サインを受け取りにくくなります。足に画びょう、ガラス片、小石が当たっても気付かない場合、傷が深くなるまで歩き続けてしまうおそれがあります。
参照:
『神経障害』(糖尿病情報センター)
『大血管症』(糖尿病情報センター)
『Symptoms of Diabetes』(CDC)
足の症状の進行と糖尿病性足病変

糖尿病性足病変とはどのような状態か教えてください
糖尿病性足病変とは、糖尿病を背景に足に起こるトラブルをまとめた呼び方です。具体的には、水虫や細菌感染、足の変形、たこ、潰瘍、壊疽などが含まれます。糖尿病の方は、足の血管が狭くなることや神経の働きが弱くなることにより、潰瘍や感染が起こりやすくなるとされています。糖尿病性足病変が問題になる理由は、足の小さな異常が重症化しやすいからです。神経障害があると傷に気付きにくく、血流障害があると傷の治りが遅くなります。さらに、高血糖の状態では感染への抵抗力が落ち、細菌や真菌による感染が悪化しやすくなります。
足に潰瘍や壊疽が起こるのはなぜですか?
足に潰瘍や壊疽が起こる背景には、主に神経障害、血流障害、感染があります。神経障害があると、靴ずれ、やけど、切り傷、爪の食い込みなどに気付きにくくなります。血流障害があると、傷を治すための血液や酸素が届きにくくなり、治癒が遅れます。感染が加わると、赤み、熱感、腫れ、膿、悪臭などが出る場合があります。潰瘍は、皮膚や皮膚の下の組織が傷つき、えぐれたようになった状態です。糖尿病では、たこや魚の目の下に傷が隠れている場合もあります。たこは一見よくある皮膚の変化にみえますが、神経障害がある方は、同じ場所に圧力がかかり続け、潰瘍へ進む場合があります。
壊疽は、血流不足や感染などにより、足の組織が死んでしまった状態です。皮膚が黒くなる、悪臭がある、膿が出る、足が赤く腫れる、熱を持つ、発熱を伴う場合は、速やかな受診が必要です。NICEの糖尿病足病変ガイドラインでも、壊疽、発熱や敗血症の兆候を伴う潰瘍、虚血を伴う潰瘍、深い軟部組織や骨の感染が疑われる場合は、緊急対応の対象として扱われています。
足の合併症を予防するためのフットケアについて教えてください
足の合併症を予防する基本は、毎日みること、清潔に保つこと、傷を作らないこと、異常があれば早く相談する姿勢です。フットケアは特別な処置だけを指す言葉ではありません。入浴後や靴を脱いだ後に足をみる、足に合う靴を選ぶ、爪を深く切り過ぎない、裸足を避けるなど、毎日の行動が中心です。参照:
『糖尿病足病変』(糖尿病情報センター)
『フットケア』(糖尿病情報センター)
『Diabetic foot problems: prevention and management』(NICE)
糖尿病の足の症状についてよくある質問

足の症状に気付いたらいつ受診すればよいですか?
糖尿病の方が足の異常に気付いた場合、症状が軽くみえても早めの相談が大切です。特に、傷、赤み、腫れ、熱感、膿、悪臭、黒色変化、発熱、歩くと出る足の痛み、安静中の痛みがある場合は、受診を先延ばしにしないでください。
自宅での足のセルフチェックのポイントを教えてください
セルフチェックは、毎日同じタイミングで行うと続けやすくなります。入浴後、靴下を脱いだ後、就寝前など、生活の流れに組み込みやすい場面を選びます。足をみて、触って、左右差を比べます。足の裏がみえにくい場合は鏡を使います。視力が低下している方や身体が曲げにくい方は、ご家族や介護者に協力してもらいましょう。セルフチェックは、完璧に行おうとすると続きにくくなります。入浴後に足を拭く流れで足裏をみる、靴下を履く前に爪と指の間をみる、就寝前に足の色と温度を比べるなど、生活の流れに組み込む方法が現実的です。足をみる場所を明るくし、必要であれば手鏡を置いておくと、足裏やかかとを確認しやすくなります。
変化を見つけた場合は、写真を残しておくと、赤みや腫れの広がりを比べやすくなります。ただし、写真だけで状態を判断するのは避けてください。痛みが弱い場合でも、赤み、熱感、膿、悪臭、黒色変化があれば、医療機関への相談を優先します。
参照:
『糖尿病足病変』(糖尿病情報センター)
『フットケア』(糖尿病情報センター)
編集部まとめ

糖尿病は、高血糖が長く続くことで、神経障害、血流障害、感染への抵抗力の低下が重なり、足に症状が出る場合があります。足は毎日使う部位であり、靴による圧迫、歩行による摩擦、乾燥、爪の変化などの影響を受けます。しびれ、痛み、冷え、感覚の鈍さ、傷の治りにくさは、足からの大切なサインです。足の感覚が鈍くなると、傷ややけどに気付きにくくなることです。痛みがないから問題がないとは判断できません。小さな靴ずれや水虫、巻き爪、たこが悪化し、潰瘍や壊疽につながる場合があります。
足を守るためには、毎日のセルフチェック、清潔、保湿、爪の管理、足に合う靴、裸足を避ける行動が欠かせません。足に傷、赤み、腫れ、熱感、膿、黒色変化、悪臭がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。糖尿病の足病変は、早く見つけ、早く対応すれば重症化予防につながります。
参考文献
『神経障害』(糖尿病情報センター)
『大血管症』(糖尿病情報センター)
『Symptoms of Diabetes』(CDC)
『フットケア』(糖尿病情報センター)
『Diabetic foot problems: prevention and management』(NICE)

