フェラーリ 849テスタロッサ・スパイダー(2) まさに疾走する壮大なシアター クーペの才腕を継承 トンネルで悦に入るサウンド
3基のモーターを実装しEVモードで最長24km
フェラーリ 849テスタロッサ・スパイダーは、計3基のモーターが実装されるプラグイン・ハイブリッド。前側には両輪にラジアルフラックス・ユニットが、リア側には8速デュアルクラッチATの手前に、アキシャルフラックス・ユニットが組まれている。
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フロントタイヤは、左右それぞれ独立して駆動され、自在なトルクベクタリングに対応。リア側のモーターは、4.0L V8ツインターボエンジンをアシストするだけでなく、発電機として駆動用バッテリーを充電することもできる。

フェラーリ 849テスタロッサ・スパイダー(欧州仕様)
バッテリーの容量は7.45kWh。フル充電なら、EVモードで最長24kmをまかなえ、瀟洒な住宅地を静かに出発できる。空になっても、V8エンジンだけで進むクオリファイ・モードなら、数kmで回復できるという。
直接耳へ届く響きにクーペと遜色ない動的能力
リトラクタブル・ハードトップを得ても、849テスタロッサの魅力は損なわれていない。むしろ、人里離れたところでV8ツインターボを開放すれば、官能的なサウンドが直接キャビンへ届く。ターボは管楽器のような高音を奏で、劇場感は強い。
ただし、心を震わせる咆哮を放ったかつてのスパイダーほど、強烈な刺激まではないかもしれない。始動時のひと吠えは勇ましいが、多用する中域の響きは少し無機質。贅沢なことかもしれないが、調律されすぎた響きに聞こえる。

フェラーリ 849テスタロッサ・スパイダー(欧州仕様)
これは、フラットプレーン・クランクによるトレードオフ。その対価として、印象的なスタイリングへ相応しい、驚異的な動力性能を得ているのだ。296 GTSが搭載するV6エンジンは、高負荷時にV12を彷彿とさせる音色を放つけれど。
クーペと遜色ないとフェラーリが主張する動的能力は、実際にステアリングホイールを握れば納得できる。巧妙なハイブリッド技術で、1000馬力という大パワーを容易に引き出せ、加速力は電動のハイパーカーへ劣らず。反面、興奮度はEVの比ではない。
言葉を失うステアリングの精緻さと即時さ
右足を傾ければ、8300rpmのレッドゾーンまで瞬間的。ヘアピンが連続する峠道の短い直線でも、その気になればシフトアップ・インジケータを灯すことは難しくない。その領域では、レーシングカーさながらの咆哮が周囲を震わせる。
シフトダウン時には、特有の唸り。クーペよりシャープな音響体験が、運転への陶酔を誘う。トンネルでは、すっかり悦に入った。ここに破裂音が加われば、夢心地だろう。

フェラーリ 849テスタロッサ・スパイダー(欧州仕様)
車重は1.7tを超えるのに、ステアリングの精緻さと即時さにも言葉を失う。ステアリングレシオはクイックながら、神経質さは巧妙に抑えられている。速度を問わず、手のひらには心地良いフィードバックが伝わり、落ち着いた印象すら伴う。
フロントの2基のモーターが叶える、トルクベクタリングも効果的。コーナーを鋭く旋回するさなか、不自然な挙動は一切表れない。敏捷性を高めているだけといえる。
まさにエンジンで疾走する壮大なシアター
試乗したカナリア諸島テネリフェ島の道は見事な舗装で、サスペンションには楽な環境だったが、乗り心地も素晴らしい。速度抑止用のスピードバンプや稀な荒れたアスファルトでも、不快な揺れは一切なし。アルピーヌA110のような、しなやかさにある。
バンピーロード・モードも選べる。可変式のマグネライドダンパーは完全に緩くなり、凹凸や縁石を越えた際の不快感は排除される。サーキット前提のアセット・フィオラノ・パッケージへ組まれる、マルチマチックダンパーでは不可能な技だ。

フェラーリ 849テスタロッサ・スパイダー(欧州仕様)
849テスタロッサ・スパイダーは、クーペの才腕を継承した、圧巻のオープン・フェラーリにある。性能を追求しすぎて、運転体験が犠牲になったスーパーカーでもない。
運転支援システムの介入は、少しお節介かもしれない。サウンドは、歴代最高には届いていないだろう。それでも、まさにエンジンで疾走する壮大なシアター。マラネロの技術の粋が、この1台へ集結している。
◯:オープンでも驚愕の速さ 走りのバランスや敏捷性を失っていない 驚くほど快適で運転しやすい
△:フラッグシップへ期待される音響には届いていない かつてのシンプルなデザインを継承しても良い 超が付くほど高額

