山形そばのファンは多い。特に「冷し肉(鳥)そば」は人気の的である。少しごわっとした冷たいそば、あっさりした冷たいつゆ、味がしっかりのった親鳥の冷たいスライス。山形の暑い夏にはぴったりである。都内近郊でも山形そばの店が散見される。銀座三丁目の銀座三原通りにある「銀座そばきりや山形田」は大衆的で人気である。

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「肉そば 藤七(とうしち)半蔵門店」が2026年4月15日オープン

 そんな山形そばの新店が半蔵門に2026年4月15日オープンした。「肉そば 藤七(とうしち)半蔵門店」である。


オシャレなデザインののれん

 山形県寒河江出身の芳賀史春さんが仙台で2015年8月に創業した、大人気の山形そばの店の東京初出店である。半蔵門店の経営母体は東京都渋谷区初台に本社を構えるアドセック株式会社。セキュリティー機器の販売設置・メンテナンス・販売卸業及び各種コンサルティング業務等を行う会社で、外食は新規事業だという。

 オープン初日の11時過ぎ訪問してみたのだが、すでに行列ができていた。注文は券売機で行い、自動で厨房に伝わっているので完成時に番号が呼ばれたら取りに行くシステムである。

 店は左側にカウンター5席、中央に大きい立ち食いテーブルが2つ、右側に4卓8席ほどある。かなりゆったりとした広いレイアウトで、ウッディーな雰囲気である。

「つめたい肉そば」は「ちっちゃい(180g)」800円、「並盛り(450g)」950円、「大盛り(600g)」1050円、「でっかい(800g)」1300円の4種類。トッピングは「肉まし」300円、「ゲソ天」250円、「ねぎまし」50円。

 オープン時は「つめたい肉そば」だけの潔いメニュー構成で、6月には「つめたい鳥中華」を発売する予定とのことだった(食レポは後述)。

「つめたい肉そば並盛り」と「ゲソ天」を注文すると…

 さっそく行列に並び券売機で「つめたい肉そば(並盛り)」950円と「ゲソ天」250円を購入。

 大半が「並盛り」を注文しているし、「大盛り(600g)」を頼んでいる人も少なくない。厨房内にはたくさんのスタッフがいて活気がある。どこか緊張感まで感じられるほどである。大きなはっきりとした声で対応している。挨拶が心地よい。

 しばし待って完成品を取りに行く。カウンター席に置いてじっくりみると、その量の多さに圧倒された。「並盛り450g」は通常の大盛り以上の量だ。じっくり煮込んだ親鳥のスライスが大量にのる。そして「ゲソ天」も相当な量。中央にはねぎがたくさんのっている。

 まず、つゆをひとくち。HPには「甘じょっぱいつゆ」と記載されていたが、どちらかというとあっさりした上品な清々しいつゆである。やや薄口系の醤油を使い、出汁は親鳥から十分にとったものを合わせている。そばは太めでごわっとしていてワシワシと食べる雰囲気だ。親鳥のスライスはちょうどよい塩味でさっぱりコリコリとした食感で味わえる。

 山形県天童市の老舗「手打 水車生そば」で食べた「つめたい鳥そば」より、返しの主張はおだやかである。

 そして何より驚いたのは、この「つめたい肉そば」と「ゲソ天」の相性が抜群にいいことだった。「ゲソ天」はしっかり塩味が利いていてしかも柔らかい。これを食べながらつゆを飲み、そばをワシワシと啜ると、もう雰囲気は山形県寒河江にいるような雰囲気になる。

 山形県では古くから「ゲソ天」が食卓に上がり、スーパーにも多種類の「ゲソ天」が並ぶ。「つめたい肉そば」を盛り上げる名脇役というわけである。

半蔵門店開業の経緯を小泉社長に聞くと…

 なんという食後の爽快感だろうか。あっという間に完食してしまい、店外に出て休憩することにした。すると大勢のお客さんを率先して案内している店の関係者の方がいた。なんと経営会社アドセック株式会社代表取締役の小泉久也さんだった。そこで「肉そば 藤七 半蔵門店」の開業にあたっての経緯などを聞いてみたのだが、これがまたすごい興味深い内容だった。

 開業のきっかけについてまず聞いてみた。

 アドセック株式会社の執行役員の方が、「肉そば 藤七」のオーナー芳賀史春さんと同郷で同級生だったというのだ。それがきっかけで、仙台への仕事の際には社員を連れて足繁く「つめたい肉そば」を食べに行っていたそうである。そしていつも「なんてうまいんだろう。そしていつも大行列だ」と感心していたのだという。

 そして一緒に食べに行っていた社員の中に「肉そば 藤七」の味に衝撃を受け惚れ込んでしまった人がいたという。半蔵門店の店長をしている赤松良法さん(61歳)だ。赤松さんは年齢的にもセカンドキャリアを模索する時期にいた。そして大胆にも、本業と全く関連のない飲食事業の事業計画を提出し、社内ビジネスコンテストで優勝。

 しかし、まだまだ難関は続いたという。 

 当初、「肉そば 藤七」のオーナー芳賀史春さんは半蔵門店の出店に難色を示していたというのだ。

 しかし、熱意をもって交渉する過程で、次のような条件がみえてきたという。

山形県のつめたい肉そばの味(仙台店の味)が完全に再現できること 
・本家のオペレーションが再現できること
・そのために店長などが本家仙台店で修業して味を習得すること
・事業収益がしっかり計算できること

 赤松さんは1年前から仙台店に住み込みで修業し、味の習得に奔走した。そして、ようやくオーナーに認められ、4月15日にオープンすることができたという。

外から厨房を観察していた眼光するどい男性の正体は

 そして、このオープンに際して、「肉そば 藤七」のオーナー芳賀史春さんは仙台店の2店舗を臨時休業して、スタッフ全員を半蔵門店に動員して、万全を期す体制を取ったというのだ。この話を聞いているだけでその迫力が伝わってくる。

 そんなすごい話を小泉久也社長としていると、眼光するどい男性が外から厨房を観察していた。なんと「肉そば 藤七」のオーナー芳賀史春さんであった。

「肉そば 藤七半蔵門店」がオープンできた感想を聞いてみたところ、「自分の故郷寒河江の味をしっかり再現して、ホンモノの山形の味を楽しんでもらいたい。やるからには気合を入れて臨んでいる」とのことだった。芳賀さんは無事にオープンし船出ができるまで半蔵門で指導するという。すごい迫力の漢だった。

 なお、「つめたい鳥中華はしっかりオペレーションを習得してから、6月にはスタートさせたい」とのことだった。

ついに「つめたい鳥中華」を実食

 そして6月15日、お店から「つめたい鳥中華」新発売のアナウンスがSNS上に流れてきた。さっそく私も食べに行くことにした。

「つめたい鳥中華」のメニューをみると「つめたい肉そば」とほぼ同じだった。「ちっちゃい(180g)」800円、「並盛り(450g)」950円、「大盛り(600g)」1050円、「でっかい(800g)」1300円の4種類。

 店のスタッフにきいてみると、返しは「つめたい肉そば」と同じ、出汁は親鳥の出汁に加えてあご出汁などを追加し、油分を加えているとのこと。

 まず、つゆをひとくち。なるほど、出汁に変化が感じられるし、中華なので油分がうまみを増している。こちらは胡椒をかけていただくのもよいし、七味をかけても合う。麺はコシの強い冷たい中華麺である。食べ応えがあるのだが、とにかくすっきりとした沁みわたる味である。こちらも「ゲソ天」をのせたらうまいだろう。

 後日、「つめたい鳥中華(ちっちゃい)+ゲソ天」を食べたのだが絶妙なうまさだった。

3ヵ月で来店者数が1万人を突破

 7月上旬、すごいニュースが流れてきた。「肉そば 藤七 半蔵門店」の来店者数が3ヵ月で1万人を突破したという。店前を通れば、近隣のOLさんや外国人の方も行列に並んでいるのを目撃する。

「つめたい肉そば」と「つめたい鳥中華」の2つのメニューがそろったことで、さらに人気は高まるはずだ。経営のプロ、料理の達人、そしてセカンドキャリアを賭けた店長やスタッフたち。そうした達人たちが集まって見事に「藤七」の味を開花させたわけである。「藤七」の味はシンプルで気取りがない。清々しい味である。山形の肉そばの本質はそこにあると感じられるほどだ。

INFORMATIONアイコン

「肉そば 藤七 半蔵門店」

住所 東京都千代田区平河町2-12 藤森ビル 1階
営業時間 月〜金 11:00〜14:00
定休日 土・日・祝
https://www.toshichi-tokyo.com/

(坂崎 仁紀)