陳克廠さんの工房(栄昌区安富鎮)で撮影した夏布と麻糸。(重慶=新華社配信)

 【新華社重慶7月12日】中国重慶市栄昌区の山里には暑さを和らげる知恵が息づいた「栄昌夏布」と呼ばれる手織りの麻布が伝わっている。その技法は漢代から約2千年の歴史を持ち、2008年に国家級無形文化遺産に登録された。中国で最も古くから栽培されている麻類の一つ、カラムシを原料とし、10工程以上の手作業を経て織り上げられる夏布は天然繊維がそのまま残り、セミの羽のように軽く、紙のように薄い。通気性と断熱性に優れ、抗菌作用や涼感もあることから、重慶では夏向けの生地として知られる。

 栄昌の無形文化遺産継承者らは近年、独自の革新的な道を切り開いてきた。

陳克廠さんの工房(栄昌区安富鎮)で撮影したブタをかたどった夏布製の枕。(重慶=新華社配信)

 夏布に付きまとう「ごわごわして肌触りが悪い」というイメージを払拭するため、「95後(1995〜99年生まれ)」世代の継承者、陳克廠(ちん・こくしょう)さんは、植物繊維から膠質を取り除いて柔らかくする技術を数年かけて研究。通気性を損なうことなく、麻の生地を柔らかな質感に変えた。陳さんは「伝統を受け継ぐ最良の方法は、無形文化遺産を日常生活に溶け込ませること」と語る。伝統技法も現代の暮らしに合わせて見直し、技術改良や製品開発を通じて夏布を家庭で使われるようにすべきだとの考えを示した。

 扇絵作家の劉海石(りゅう・かいせき)さんも、この布を使って夏の芸術を生み出している。かつて教師だった劉さんは、故郷の伝統的な織物が持つ独自の魅力に気付き、夏布を使った扇子に絵を描く方法を熱心に研究した。「夏布には素朴な力強さがあり、絵を描くと風景に深みや趣が増す」と語る。地元文化に根差した作品は国境を越え、米国、日本、韓国などへ輸出されている。

劉海石さんの工房に置かれた巨大な夏布の扇絵。(重慶=新華社記者/肖瑶)

 夏布を用いた衣類やランプシェード、絵画など、伝統技法継承者らの作品やブランドは天然素材の特性を巧みに取り入れている。研修旅行や無形文化遺産マーケット、文化観光の隆盛により、涼を呼ぶカラムシの注目度が高まっている。

 栄昌では夏布を使った製品が千種類以上開発され、300件を超える知的財産権を取得している。無形文化遺産を体験できる町として、昨年は前年比約2.1倍の695万7400人に上る観光客を受け入れた。伝統を受け継いできた人々の熱心な取り組みにより、歴史ある技は新たな時代を迎えている。(記者/肖瑶)