都道府県庁ある全47都市で路線価がプラスか横ばい…マンション需要や企業進出など「街の変化」押し上げ
国税庁が1日に発表した路線価は、都道府県庁がある全47都市でプラスか横ばいで、全国平均でも5年連続の上昇となった。
都市部のマンション需要による地価の高騰に加え、再開発や大規模集客施設、企業進出など「街の変化」が各地の路線価を押し上げた。(建石剛、福守鴻人、野田快)
若返り
「ここ10年、20年で街は大きく若返り、若者が好む飲食店も増えている」。東京都足立区の北千住駅西口近くで明治期創業の老舗着物店を営む関口和英さん(69)は、そう話す。
同駅西口駅前広場通りは、税務署別の最高路線価の上昇率で全国5位となるプラス24・2%。同地点は2012年以降、15年連続で上昇を続けている。
長期上昇の要因の一つが再開発だ。区によると、03年度に西口駅前の再開発が完了し、百貨店や地上26階建てマンション、駅前広場などが整備された。06年度以降、駅周辺に複数の大学を誘致し若者人口も増加。東口地区で新たな再開発計画も進められている。
同駅は地下鉄やJRなど5路線が乗り入れ、交通の利便性が高い。都心部のマンション価格が高騰し、アクセスが良い北千住にも波及している。千住地区を管轄する全日本不動産協会城東第一支部長の鮎川博司さん(66)は「コロナ禍以降、北千住駅周辺は戸建て住宅の値段が倍近くになっている」と話す。
万博効果
大阪市内も19税務署のうち10税務署で最高路線価が10%超のプラスとなるなど、上昇が目立つ。昨年、大阪・関西万博が開かれた大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)を含むベイエリアがけん引役だ。夢洲では、カジノを中核とした統合型リゾート(IR)を建設中で、30年秋頃に開業予定となる。
夢洲への乗換駅となる大阪メトロ・弁天町駅付近は、前年から13・6%上昇した。テーマパークやプロ野球の本拠地も近く、大型ホテルや一棟貸しの宿泊施設が次々とオープンしている。ホテル「ポルタイン弁天町」の新井英樹支配人(63)は「万博で弁天町の知名度が高まり、リピーターも多い。万博効果が継続している」と語った。
インバウンド
地方も一部で高い上昇率を示す。都道府県庁所在地の最高路線価では、佐賀市の佐賀駅前の中央通りが上昇率トップの17・0%、2位は盛岡市の盛岡駅前通(13・0%)となった。
佐賀市では、23年に約1万人収容の大型施設「SAGAアリーナ」が開業して以降、有名アーティストのコンサートなど大型イベントが開かれ、駅周辺のホテル需要が高まっている。住宅需要も堅調で、1億円超の高級戸建て分譲住宅が市内に建設される予定だ。
盛岡駅周辺では、インバウンド(訪日外国人客)需要が後押しし、昨年10月に新たなビジネスホテルが開業するなど投資が活発となっている。高層マンションの建設も進み、市は再開発による複合施設の整備を計画している。盛岡駅前通に支店を構えるわんこそばの老舗「東家」の高橋大専務(59)は「にぎわいがまち全体に波及してほしい」と期待した。
ラピダス
企業の進出で上昇し、周辺に波及するケースもある。先端半導体の量産を目指す「ラピダス」の工場が立地する北海道千歳市では、関連産業での出張者の増加を見込み、今年だけでも8棟のホテルがオープンする予定だ。オフィスビルも続々と開業している。
千歳市から約20キロ離れ、通勤圏内の苫小牧市でもプラス10・0%となった。北海道不動産鑑定士協会の横山幹人理事は「工場が量産体制に移ると、従業員数の増加などに応じて、周辺も影響を受けるだろう」との見方を示した。
輪島市の下落率、全国最大
地方では山形や山梨など8県で下落した。前年比マイナス0.3%だった山梨は34年連続で下落し、県不動産鑑定士協会によると、下落が顕著な農村地帯や山間部が多いことが要因とみられる。一方、富士山周辺の自治体ではインバウンド需要に伴い上昇傾向にあるといい、二極化が進む。
能登半島地震で被災した石川県輪島市では、朝市通りでマイナス8.6%だった。前年の同16.7%から縮小したが、2年連続で全国最大の下落率となった。県不動産鑑定士協会の諸江美和会長は「人口減少は地震で加速し、不動産を求める層も少ない」とし、今後も下落傾向が続くとみる。

