ケアマネジャーの森岡真也さん(左)と、劇団民藝の俳優だった青木道子さん(右)(撮影:宮崎貢司)

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劇団民藝の俳優だった青木道子さんは、93歳で要介護2の現在もひとり暮らしをしています。なぜそれが可能になるのか。サポート体制を作り上げたケアマネジャーの森岡真也さんと、その舞台裏を語り合います。(構成:菊池亜希子 撮影:宮崎貢司)

青木さんの1週間のサポート体制

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何でも自分でできると思っていた

青木 私がこうしてひとり暮らしできているのは、皆さんのおかげです。なかでもあなたには本当にお世話になっていて、ずいぶん年下だけど兄貴みたいよ。いつもありがとう。

森岡 こちらこそ、ありがとうございます。2016年に青木さんがくも膜下出血で入院された(※1)ときに、担当のケアマネジャーとして初めてお会いしたので、10年あまりのお付き合いになりますね。

青木さんは初対面から気さくに話してくれたけど、最初は「誰にも頼らない」という感じで、ヘルパーさんの介入を拒んでいらした。

青木 そうだったっけ(笑)? 覚えてないのよねぇ……。それまで自分で決めて何でもするのが当たり前だったから、最初は誰かにお世話してもらうなんて考えられなかったのかもね。

<ケアマネ・森岡さんが解説 支える側の舞台裏>

(※1)2016年7月、青木さんは、劇団の稽古中にくも膜下出血で倒れて救急搬送されました。83歳のときです。

意識不明から一命を取り留め、リハビリ病院に転院。病院のソーシャルワーカーから新宿区の地域包括支援センター経由で私の事業所に依頼があり、ケアマネジャーとして病院を訪ねたのが青木さんと私の出会いです。

5ヵ月後に退院しましたが、後遺症としてぼんやりする時間や作業ミス、繰り返し発言が多いなどの高次脳機能障害があります。昔のことはよく覚えているけれど、新しいことほど忘れがちなのも特徴です。

森岡 退院後は私がときどき家まで様子を見に行っていましたが、翌年、マンションの下で倒れているのを住人の方が見つけて。薬の飲み忘れが原因だったとわかり、ようやく介護保険を利用したサポートを受け入れてくれました。(※2)

以来週に1回、訪問看護師さんに来てもらうようになり、少しずつデイサービスにも通われるようになったんですよね。

それでも、掃除や買い物に関しては「ヘルパーさんはいらない」とずっと言い続けて。

青木 そんなに拒んでいたなんて信じられないわね……。私、忘れるのが得意みたい(笑)。たぶん、自分で何でもできるって思っていたんだと思う。

<ケアマネ・森岡さんが解説 支える側の舞台裏>

(※2)青木さんは長い間、トイレと浴室に手すりをつける以外は、介護保険サービスの利用に消極的でした。薬の飲み忘れや転倒などを経験して、少しずつ受け入れてくれるように。

居宅で受けられる介護保険サービスには、ヘルパー訪問による日常生活(掃除、買い物)の手助けや、訪問看護師による入浴介助や看護などがあります。

現在、青木さんは要介護2。介護保険を活用しつつ、ちょっとした困りごとなどは、民間のサービスや地域の方の協力も得ながらひとり暮らしを続けています。

森岡 そうでしたね。当時は、料理はもちろん、洗濯もご自身で近くのコインランドリーでしていたし、銭湯にも通っていた。

ただ、このころから部屋に新聞紙や書類が散乱するようになり、支払い関係の郵便物が溜まることも増えたので、社協(社会福祉協議会)のボランティアさんに書類整理と金銭管理をお願いしました。(※3)

月に1度、社協のMさんに訪問してもらうようにしたんです。

青木 Mさんにはいつもお世話になっているわね。いろいろおしゃべりして楽しいのよ。

<ケアマネ・森岡さんが解説 支える側の舞台裏>

(※3)社会福祉協議会は市町村や都道府県に設置された非営利の民間組織で、介護保険の対象外になってしまう見守り、話し相手、書類整理、金銭管理、後見人の手続きなど、幅広い支援を担います。

青木さんの場合、まず最初にボランティアによる見守りと書類整理、地域福祉権利擁護事業による金銭管理支援を活用しました。

金銭管理については、通帳と印鑑を預かり、月1回自宅を訪問して生活費を届けるというもの。

すべてを渡すのではなく、公共料金などの必要経費は別で渡したり、不意の出費に備えてお金を少しずつ貯めてくれたりします。


「この転倒をきっかけに、青木さんに納得してもらったうえでサポート体制を整えました」(森岡さん)

洗濯物を取り込んでいたときに転倒!?

森岡 なるべく自立した生活を送りたいとがんばってきた青木さんでしたが、24年、初夏の月曜日のこと。Mさんが「約束の時間にインターホンを鳴らしても青木さんが出てこない」と心配して、その足で私を訪ねてくれたんです。

すぐに青木さんの足取りをたどったら、3日前の金曜の夕方、友達と銭湯に行って、近所のコンビニで夕食を買っていたことがわかりました。コンビニからマンションまでの道で友人にも会っている。

でもそれを最後に、誰も青木さんを見ていなかった。その後に何かあったと思い、すぐにご自宅へ行って大家さんに鍵を開けてもらったら、意識が朦朧としている青木さんを発見したんです。

青木 そのときのことも、私、全然、覚えてないの。

森岡 金曜に銭湯から帰った後、ベランダで洗濯物を取り込んだときに転倒して、その場にあった洗濯籠にはまってしまったようです。つらかったと思います。

3日間同じ姿勢だったので、褥瘡(じょくそう)のようなものが7ヵ所もできていて……。すぐに救急車を呼び、結局3ヵ月間、入院なさったんですよね。

青木 こうして聞くと、助かったのは本当に皆さんのおかげ。

森岡 この転倒をきっかけに、青木さんに納得してもらったうえでサポート体制を整えました。

今は、ヘルパーさんが週に5回、訪問看護師さんが週に2回、理学療法士さんが週に1回、社協のボランティアさんが月に数回と、毎日誰かが青木さん宅を訪ねる体制をとっています。

<後編につづく>