美輪明宏さん

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 ヒット曲「ヨイトマケの唄」や舞台「黒蜥蜴(とかげ)」などで知られる歌手で俳優の美輪明宏(みわ・あきひろ、本名・丸山明宏=まるやま・あきひろ)さんが20日午前9時30分、老衰のため死去した。91歳だった。所属事務所が28日に公式サイトで発表した。葬儀、告別式は近親者のみで営んだ。多様性への理解が乏しかった1950年代から、性別を超越した芸術表現を模索し続けたジェンダーフリーの先駆者。人生経験に裏打ちされた温かいまなざしで「人間愛」を貫き、哲学的なメッセージでも多くの支持を集めた。

 公式サイトには美輪さんの直筆によるメッセージも掲載された。「こんな世の中を生き抜く武器は愛の言葉しかありません この世のすべての問題を解く鍵は愛です 愛があれば戦争なんか起こりません」。事務所関係者によると、この文章は3〜4年前に記したもので、常々口にしていた言葉だという。

 異国情緒漂う長崎で育った少年時代。カフェや料亭を営む実家の近くには遊郭や芝居小屋もあり、幼少期から国籍も性別も超えた多種多様な価値観に触れた。10歳の夏、原子爆弾により目の前の景色は一変。親族が住んでいた爆心地近くの浦上地区を歩き、この世の地獄を目の当たりにした。

 九死に一生を得た人生で、美輪さんが表現で追い求めた美しさこそが「愛」だった。1950年代、同性愛者の友人が偏見や批判を苦に自死を選んだことに心を痛め、確固たる信念を持って自らのセクシュアリティーを公表した。長崎の少年時代の光景と、上京後に見かけた戦災孤児のエピソードからインスピレーションを受けた「ヨイトマケの唄」では親子の無償の愛を表現した。

 「黒蜥蜴」などと並び、美輪さんの舞台の代表作とされるのが「愛の讃歌 エディット・ピアフ物語」。劇中で命を削るように歌う「愛の讃歌」の歌詞はフランス語だが、美輪さん自ら訳した日本語詞はこうだ。「いつか人生が貴方を奪っても この愛があればそれで幸福 死んでもあの空で苦しみも何もなく 永遠に歌おう 愛を讃える歌」。愛を求め、愛に生きた91年の人生だった。