「大学中退する」彼と別れた20歳娘がラブホテルのレシートとコンドームを…48歳シンママが最も恐れること
推し活市場は4兆円超
2026年6月東京ビッグサイトで、推し活関連商品やサービスを集めた専門展示会「推し活EXPO summer」が開催された。専門展示会が開催されるほどこれは拡大を続ける「推し活」市場。調査会社・CDGの2026年調査によると、推し活市場規模は、約4.1兆円。これは国内の日帰り旅行市場とほぼ同じ規模に当たるという。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。「推し活は日々を楽しくしてくれますが、限度を超えると心の病に発展することも。推し活は、刺激と達成感がセットであることを意識したいものです。例えば、最初はライブチケットが当たれば十分だったのに、脳がそれに慣れ、さらにグッズ購入、全イベント制覇、推しとの接触などを求めてしまう。これにより、生活の土台が崩れてしまう人も少なくありません」
山村さんは学生時代は警察官を希望していたが、当時は身長制限があり、受験資格はなかった。一般企業に勤務するが、目の前の人を助けたいという思いは強く、探偵の修業に入る。探偵は調査に入る前に、依頼者が抱えている困難やその背景を詳しく聞く。山村さんは相談から調査後に至るまで、依頼人が安心して生活し、救われるようにサポートをしている。
これまで「探偵が見た家族の肖像」として山村さんが調査した家族のことをお伝えしてきたが、この連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにして行ったのかも含め、様々な事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮しながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。
今回山村さんのところに相談に来たのは、48歳の真緒さん(仮名)だ。「娘が大学を辞めると言ってきたのです」と連絡をしてきた。背景には推し活があったのだ。
山村佳子(やまむら・よしこ)私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWeb連載など様々なメディアで活躍している。
まじめな娘が…
朝、8時に真緒さんから「今から相談に行きたいのですが、大丈夫ですか?」と連絡がありました。1時間後、分厚い赤いファイルを持ち、真緒さんはカウンセリングルームに来たのです。
徹夜で悩んだ後に、私に連絡をくれた様子です。目は充血しており、髪も乱れています。真緒さんは顔立ちが整っていてスタイルもいい。ですがとても痩せており、疲労が目立つから迫力がある。私に相談することを迷っているようで、心が落ち着くカモミールティを淹れ、口を開くのを待つことにしました。
ふるえる手でティーカップを持ち、一息ついてから「娘がとんでもなくて…」と涙を流しています。話をまとめると、現在20歳の娘は、幼い頃からものすごくまじめで、周りに合わせることや団体行動が極端に苦手。真緒さんは影に日向にサポートしながら、中学、高校から大学に進学させたことを涙ながらに話していました。
「娘は、発達障害グレーゾーンです。とにかく育てにくい子でした。生まれた頃から癇癪持ちで、早く協調性を持たせたかったのと、私が限界を迎えてしまい、夫の反対を押し切って1歳半で保育園に入れ仕事復帰したのです。エリート志向の夫は、『妻は専業主婦であるべき』という考え方の持ち主。結局、このことが原因で、娘が2歳の時に離婚しました」
「大学は無理」と言われた中、見事合格したのに…
28歳で母になり、30歳でシングルマザーになった真緒さんは、新卒から勤務している中堅資材メーカーに勤務しながら、必死で娘を育てます。
「小学校の先生に『お嬢さんはちょっと変わっています』と、高校の先生には『大学は無理』と言われても励まし、信じ、応援して支えてきたんです。そんな娘の中堅大学の合格通知を見た瞬間が、私の人生で一番嬉しかった時間です」
真緒さんは離婚してから恋人も作らず、娘の成長を楽しみに生きてきたと語ります。すぐその後に「あ、でも私も仕事をしていますし、いわゆる支配する母ではありません。GPSや門限で娘を支配する親とは違います」と言いつつ、娘と娘の彼と、真緒さんの3人でカフェで食事をしている写真を見せてくれました。3人とも幸せそうな笑みを浮かべています。娘は真緒さんに似て、整った顔立ちをしています。
「娘が大学に入ったばかり、2年前の写真です。この頃は幸せでした。彼は娘と予備校で出会い、仲が良くて娘も幸せそうにしていました。それなのに、1年前から娘は変なYouTuberにハマって、彼に別れを告げてしまった。その上、大学まで辞めるという。もうどうしていいかわからないのです」
数年で推し活に100万円
そして、真緒さんは持参したファイルを開き、娘のこれまでの推し活の変遷について解説を始めました。
「娘は発達障害グレーゾーンの中でも、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向があります。単調な作業や勉強は苦手なのですが、『これだ!』と感じたものに対しては、寝食を忘れて没頭します。娘が大学に合格したのも、英語にハマって過集中できたからなんです。この性質が推し活と重なると厄介で、新しい情報を常に収集したり、グッズを集めたり、ライブに行きまくったり……。熱しやすく冷めやすいこともあり、これまでにハマったものとその記録をファイリングしているんです」
そこには、アイドルやアニメ、キャラクターの収集などにおける、娘の観察記録がありました。支払ったおおまかなお金も残してあり、どれも10〜20万円程度で、ここ数年でざっくり100万円程度でしょうか。
「いずれも運営体制がしっかりしており、そう簡単に本人とはコミュニケーションできません。また、これらはアルバイト禁止の高校時代までにハマったものなので、娘も我が家の経済力を考えて自制していたと思います。私自身もかなり我慢させていたことは認めます」
のめりこんで過集中するタイプ
私は探偵になってから心理学を学びました。その時、ADHD傾向の方のドーパミンが慢性的に不足しがちだと教わりました。ドーパミンは脳内でワクワク感や快感、意欲を司る神経伝達物質です。ADHD傾向の方は、この閾値が高いから、単調なルーティンワークが苦手傾向にあると学びました。この「閾値が高い」ということが要点で、「これだ!」と思ったものに出会うと、脳のスイッチが劇的に切り替わり、一気に集中するようになる傾向が考えられるのです。
「そうなのです。のめり込んだり過集中するので、没入してしまう。これまでは受験という制約や、家のお金で推し活をしているという自制が効いていましたが、大学に入ってからはバイトもできるようになりリミッターが外れた。行動範囲も広がるので、ネットで相手の家を特定したり、背景を調べたり、友達と繋がったりして、常にふわふわしている状態なのです」
そして、娘は最初、有名なコーヒーチェーンのアルバイトをしていたそうです。
「そのコーヒーショップのことがのめり込むように好きで、『私がバイトしたらこうしたい』とシミュレーションしていたこともあり、初心者なのに仕事内容は知っていた。だから、あっという間に時給も上がり楽しく働いていたのです。ただ、推しに出会ってからは、時給が足りないと居酒屋のバイトを掛け持ちするようになりました。今は夜中に帰ってくることも多く、何をしているか聞いても教えてくれません」
さらに真緒さんの元夫のところにも娘は連絡したとのこと。
「元夫は、収入が高いくせにケチだから、最低限の養育費しか支払いませんでした。お金はあるから、娘は元夫のところに行き、『50万円欲しい』と請求したそうです。元夫は再婚にも失敗して、我が子は娘のみ。『お金を渡した』と連絡が来た時、キレそうになりました」
娘のワンピースのポケットから出てきたもの
それが2ヵ月前のことだったそうです。探偵の調査を考えるようになったのは、2日前、娘のワンピースをクリーニングに出そうとして、ポケットを見ると、謎のレシートが入っており、調べたら鶯谷でラブホテルを経営する会社のものだったそうです。
「前日、大学を辞めたいという娘と大バトルをした後だったので、聞けませんでした。推し活に夢中になり、資金稼ぎのバイトをしているうちに、留年が決まってしまったのです。それよりも、自宅の大田区と川崎の境にある多摩川駅から1時間も離れたラブホテル街で何をしているのか。推し仲間と女子会ということも考えたのですが、どうもそうではない。母として最も恐ろしいのは売春をしていることです」
さらに、娘のバッグをこっそり見たところ、コンドームが入っていたそうです。
「彼もいないのに、誰と何をやっているのか。やはり調べていただきたいです。その上で娘と向き合って将来を決めたい。探偵に頼むくらい本気だということを、娘にわからせる意味でも調べてください」
真緒さんの「娘は闇に落ちている。それを救いたい」という言葉に後押しされるように、私たちは調査に入りました。
◇調査の結果は後編「「娘は売春しているのではないか」48歳シングルマザーが調査依頼した20歳の娘の「やばすぎる推し活」」にて詳しくお伝えする。

