《独自》「抱きしめたら骨ばっていて」16歳少女が違法勾留と自白強要で体重20キロとなって“餓死”…母が訴える取り調べでの「セクハラ発言」
母親が施設長を務める兵庫県内の障がい者施設で働いていた、るなさん(仮名・当時16歳)が昨年6月、利用者への暴行容疑で逮捕され、18日間にわたって勾留された後、同年12月に亡くなった。
遺族側は、るなさんが逮捕・勾留中の取り調べなどによって重度のストレス障害や摂食障害を発症し、低栄養状態のまま死亡したとして、逮捕されてから一年となる今年6月17日、国と兵庫県を相手取り約1億円の損害賠償を求める訴訟を起こした。記者会見で母親はこう訴えた。
「娘が何をして、なぜ逮捕され、そしてなぜ命を落とすことになったのか。それを明らかにしてほしいんです。間違っていたのなら、娘に謝ってほしい」
本誌は、るなさんの母親に改めて話を聞いた。
■別の利用者が「虐待かもしれない」と
事件の発端は昨年2月、施設で開かれたバレンタインイベントだった。母親によると、虐待被害を訴えた利用者のAさんは重度の知的障がいがあり、大人数でいることが苦手だった。そのため当日は興奮状態となり、ほかの利用者に噛みつこうとする場面があったという。
「娘は、Aさんがほかの利用者さんに噛みつこうとしたので、あごに手を添えて『あかんよ』と止めようとしただけでした。逆に娘のほうが噛まれたり、つねられたりしたようです」
母親は、当日の様子について20人以上から証言を集めているという。イベントから数日後、るなさんの体にはあざが残っていた。
「『どうしたの?』と聞くと、『イベントのときに噛まれたり、つねられたりしたからだと思う』と言っていました。その写真も残っています」
しかし、弁護団によると、約4カ月後の昨年6月17日、突如事業所にやってきた警察官6人が、るなさんと男性職員1人を逮捕ーー。当時不在だった母親が、「あと30分で到着するので待ってほしい」と言ったにもかかわらず、到着を待たず連行されたという。
弁護団によると、別の利用者で知的障がいのあるBさんが「虐待かもしれない」と市の障がい福祉課に相談したことが逮捕のきっかけだったという。
■「ママ大好き」 勾留中のノートに書かれた言葉
逮捕後、るなさんは勾留され、家族との面会や連絡も一切禁止された。
「弁護人も私たち家族も、面会を認めるよう何度も接見等禁止の一部解除の申請をしましたが、そのたびに却下されました。娘に何が起きているのか全く分からず、本当に大混乱でした」
娘の逮捕後、母親自身の生活も一変した。
「6月に逮捕されてからは、まともに眠れなくなりました。少しうとうとしても、息が詰まるような感覚で飛び起きてしまうんです。じっとしていられませんでした」
少しでも娘の近くにいたい一心で、母親は毎日、警察署に通ったという。
「毎朝4時ごろには家を出て、小野警察署の駐車場で待っていました。私にできることは差し入れくらいしかありませんでしたから、本屋さんが開くとすぐに行って、娘が差し入れてほしいという本を買って届けました」
料理本や旅行本、そして幼い頃によく読み聞かせた『世界一貧しい大統領』という本も――。本と一緒に差し入れたノートには、るなさんの思いがびっしりと書かれていたという。
「『これが食べたい』『あれが食べたい』と、私の手料理のことばかり書いていました。それから利用者さんたちのことも。『みんな大丈夫かな』『早く仕事に戻りたいな』と」
一方で、こんな記述も。
「『何もしていないのに、なんでこんなことをされるのか分からない』『早く出してほしい』とも何度も書いていました」
さらに母親の胸を締め付けたのは、「ママ大好き」「こんな娘でごめんね」という言葉だったという。
■「少年院に行きたいんか」と脅され…釈放時には10キロもやせて
弁護団によると、るなさんは取り調べで、「本当はやったんだろう」「今言ったら楽になるぞ」「みんな言っている」などのほか、いっしょに逮捕されたスタッフの名前を挙げ、「○○は言ったぞ」と虚偽を告げられたり、「少年院に行きたいんか」と脅しのような言葉が投げかけられたりもしたという。こうして繰り返し自白を迫られた。
さらに、「好きな人はおらんのか」といったセクハラ発言もあった。
「『本当はお前の母親が虐待しているんやろ』とも言われたと聞いています。16歳の娘にとって、どれだけつらかっただろうと思うと……」
るなさんは、そうした一連の取り調べに対し、差し入れたノートに「こわかった」と記していたという。
弁護団によれば、るなさんは勾留初日から、ほとんど食事をとれなくなっていた。7月3日には体調を崩して救急搬送されたが、点滴を受けたあと再び留置場へ戻されたという。このときも、母親ですら面会させてもらえなかった。
そして翌7月4日、不起訴処分で突如釈放される。勾留前に37.5キロあった体重は、27.7キロまで減少していた。18日におよぶ勾留で、10キロも体重が落ちてしまったのだ。
「抱きしめたら骨ばっていて……。なぜこの子がこんな目に遭わなければならなかったのかと悔しくて……」
■「事件は終わったことだから」無視された謝罪要求
釈放後も、るなさんの体調は回復しなかった。人を恐れるようになり、母親が少し離れるだけでパニックになることもあったという。
「誰にも会いたがらないし、笑うこともなくなりました。夜は毎晩うなされていました」
それでもるなさんは、障がいのある利用者たちを気にかけていたという。
逮捕される前のるなさんについて、母親は「天真爛漫な子で、利用者さんと一緒によくショート動画を見ては、歌ったり踊ったりしていた」と振り返る。
「娘は小さいころから利用者さんたちと一緒に育ったようなものです。本当に大好きだったんです。『高校に進学したら』と勧めたけど、『私はこの仕事がしたい』と娘が言うので認めてしまったんですよね……」
るなさんは車いすに乗りながらも、母親とともに3度、明石署を訪れたという。
「悪いことをしていないのだから謝ってほしい」
その一心だった。しかし母親によれば、警察側からは「事件は終わったことだから話すことはない」という趣旨の説明を受けたという。
「間違いだったと認めてもらえていたら、娘の生きる力になったかもしれません」
その後も母親は懸命に看病を続けたが、るなさんは昨年12月14日、県内の総合病院で息を引き取った。直接の死因は低栄養状態だったという。体重は20キロほどまで減っていた。
さらに母親は、事件後、「虐待ではないか」と通報した元利用者のBさんから謝罪の手紙を受け取ったと明かす。
「Aさんのあごに手を添える程度の行為だったのに、役所や警察には大げさに伝えてしまった。オーバーに言ってしまってすみませんでした――そう書かれていました」
■「これは虐待であり、冤罪事件でもある」
今回のケースについて、検察組織や、不当に勾留を延長する“人質司法”の問題を取材してきたジャーナリストの赤澤竜也さんはこう指摘する。
「16歳の少女がまったく必要のない勾留をされ、心身を追い詰められた結果亡くなったのですから、司法による虐待であり、重大な人権侵害事案ではないでしょうか。
法律上、身体拘束を続けるのは、『逃亡のおそれ』と『罪証隠滅のおそれ』があるときのみです。しかし、るなさんの場合、そのどちらがあったのかは極めて疑問です。しかも未成年であり、本来であれば少年法の趣旨に沿った慎重な対応が求められていたはずです」
なぜ16歳の少女は逮捕され、18日間も勾留されなければならなかったのか。そして、その結果として、なぜ命を落とすことになったのか――。
今後進められる裁判では、警察や検察、そして勾留を認めた司法判断の妥当性も含め、その経緯が厳しく問われることになる。

