【藤 和彦】35歳を過ぎたらデリバリーの配達員しか仕事がない…3億人を突破した中国「フレキシブルワーカー」の悲哀
史上初の3ヵ国共催となった北中米のサッカーワールドカップ。これまでの大会では、資金力を武器にスポンサーとして影響力をふるっている中国だが、記事『不況でW杯を応援できない…協賛額はカタールW杯から7割減に世界最大級のスポンサー国・中国、後退のワケ』で見てきたように、今大会では事情が異なった。
当初予定していた企業が撤退するなどして、協賛額は尻すぼみになっている。背景にはやはり、長く続く経済不況があるようだ。
デフレ解消の糸口は…
経済不況の元凶である不動産不況も相変わらずだ。
北京や上海などで中古住宅の価格が上がり始めたが、中国全体の住宅在庫はほとんど減っていない。問題なのは、習近平指導部が不動産対策を地方政府に丸投げしていることだ。来年秋に共産党大会を控える習氏が、痛みを伴う改革を断行する可能性は低く、中国経済の資産デフレ解消の出口が見えないのが実情だ。
中国経済の悪化が続く中、筆者が注目しているのは、デリバリー配達員や配車サービスの運転手、家事代行など、雇用契約を結ばない「フレキシブルワーカー」が急増していることだ。
1年で4000万人増えた
中国新就業形態研究センター(首都経済貿易大学と中国就業促進会が共同で設立)は最近の報告書で、「中国のフレキシブルワーカーの総数は昨年の2億8000万人から増加し、今年中に3億2000万人に達する」との予測を示した。
3.2億人という数字は昨年末時点の就業者総数(約7億2000万人)の約44%に相当する高さだ。昨年からの増加数(約4000万人)の大きさにも驚きだ。
ネット上では「フレキシブルワーカーという名称を用いて、失業者数の急増という実態を糊塗しているに過ぎない」との批判が数多く寄せられている。実際に同報告では配車サービス運転手に関する調査で、回答者の77%が失業後にフレキシブルワーカーに転職していたと指摘している。
中でも深刻なのは中年失業者だ。
仏国営メディア「社会が信用できない」
中国では「35歳を超えるとリストラに遭う」との慣行が浸透しており、「35歳の呪い」とも呼ばれている。失業の憂き目にあった彼らはフレキシブルワークに活路を見出したが、この受け皿も飽和状態になりつつあるからだ。
フランス国営メディアRFIは6月に入り、「中国で消費が伸び悩んでいる問題の根底には、様々な理由により『社会が信用できない』ことがある」との論説記事を伝えた。RFIが注目したのは中国の社会保障制度の脆弱性だ。
中国は世界をリードする高速鉄道網を整備したにもかかわらず、失業保険や年金などの点では途上国の域を脱していない。中国政府は最近になってフレキシブルワーカーの労働環境の改善に着手したが、彼らの将来不安を払しょくできたとは到底言えない状況だ。
バブル崩壊後の日本でも非正規雇用者が増加し、消費の低迷が長らく続いたが、中国の深刻さは当時の日本の比ではない。
国民の生活向上に関心が薄い習氏が実権を握っている限り、中国経済が再浮上することは困難なのではないだろうか。
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