M!LKの佐野勇斗

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ヒット曲を連発

「好きすぎて滅!」「爆裂愛してる」などのヒット曲を連発している男性アイドルグループのM!LK(ミルク)が、急速に存在感を高めている。キャッチーでコミカルな要素もある楽曲が、SNSやストリーミングを通じて広がり、ファンの間だけの内輪の盛り上がりを超えた社会現象になりつつある。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 2014年に結成されたM!LKは、スターダストプロモーション所属の佐野勇斗、塩崎太智、曽野舜太、山中柔太朗、吉田仁人の5人から成るダンスボーカルグループである。2015年にCDデビューし、2021年にビクターエンタテインメントからメジャーデビューした。

M!LK佐野勇斗

 グループ名には「何色にも染まることができる」という意味が込められている。彼らは最近になって突然現れた新人ではない。長い下積みを経て、今まさにスポットが当たっている苦労人なのだ。

 M!LKが注目されているのは、単に楽曲がヒットしているからだけではない。重要なのは、彼らが昔ながらの「王道アイドル」のあり方を体現している点にある。

 SMAP以降の男性アイドルの王道は、ドラマ、バラエティ、雑誌、ライブなど複数のジャンルを股にかけた活動を展開していくことにあった。歌って踊れること、ルックスが良いこと、キャラクターが立っていること、グループ内の関係性が見えること、ファンに夢を見せること。それをベースにして国民的アイドルというイメージが作られていた。

 しかし、旧ジャニーズを中心に回っていた男性アイドル業界の構造は、この数年で大きく変わった。視聴者の側にも、テレビ局や広告業界の側にも「次に誰を中心に置けばいいのか」という意識が生まれた。日本のテレビ文化と親和性が高く、バラエティに出ても違和感がなく、楽曲では少しバカバカしいほど明るいエネルギーを出せるM!LKは、その空白を埋めるのにふさわしい存在だった。

「好きすぎて滅!」「爆裂愛してる」などの楽曲の強さも印象的である。ここには、洗練されたクールさよりも、照れを突破する過剰さがある。普通なら恥ずかしくなるほど真っすぐな愛情表現を、全力でポップに処理する。この本気なのか冗談なのかわからない絶妙な温度感こそ、彼らの強みである。

笑えるけど魅力的

 過度に作り込まれた格好良さは嘘っぽく感じられるが、完全にネタに振り切ってしまうと感情移入しづらい。M!LKの楽曲は見事にその中間を突いている。ふざけているようでキラキラしている。笑えるけど魅力的でもある。これが現代のアイドルポップソングとして理想的な形なのだ。

 かつてのジャニーズ的な王道のアイドルらしさとは、単にイケメンが歌って踊ることではなかった。重要なのは「手の届かなさ」と「親しみやすさ」の両立である。ステージ上ではまぶしい存在でありながら、バラエティでは少し抜けたところを見せる。ドラマでは二枚目を演じながら、トークではいじられる。ファンにとっては憧れの対象でありながら、同時に近所の明るい兄ちゃんのような距離感もある。

 M!LKが「ポスト」と言われることがあるのも、この点と無関係ではない。の強みも、圧倒的なカリスマ性というより、5人の関係性、親しみやすさ、バラエティ適性、清潔感、そして幅広い世代に受け入れられる柔らかさにあった。

 M!LKの強みは、時代遅れになったはずの「王道」を恥ずかしがらずに引き受けているところにある。クールに構えすぎず、斜に構えすぎず、過剰なアイドルらしさを過剰なまま差し出す。そこには、アイドルという存在が本来持っていた明るさ、祝祭性、少しバカバカしいほどの肯定感がある。だからこそ彼らは、限られた層の女性ファンに支持されているだけではなく、男性アイドル文化の次の中心候補として語られ始めているのだ。

 もちろん、現在のM!LKはまだ完成形ではない。本当の勝負はここからだ。だが、ビジュアル、楽曲、キャラクター、メディア適性、グループの関係性という複数の条件が、これほどバランス良く揃っている男性アイドルグループは多くはない。

 旧来の王道アイドルの記憶を持つ視聴者にも、新しい「推し」を求めている若い世代にも刺さる。M!LKの躍進は、男性アイドルの王道が終わったのではなく、時代に合わせて更新されながら、いま再び求められていることを示している。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部