コシヒカリ3000円以下に コメの価格急落、鈴木農相の“古い”農政が招いたツケ
コメの販売価格が急落している。埼玉県のあるスーパーでは、茨城県産コシヒカリ5キログラムが2699円(税込み2914円)で売られている。1月には約4300円だった商品だ。市場で何が起きているのか。
まず、昨年の異常なコメ高値で、消費者の買い控えが続いた。それにより卸問屋では今春になって深刻な在庫過多となった。2か月後には新米の収穫が始まるので、在庫を減らすために損を覚悟で販売しているという。
「節約をしたい訳ではない」鈴木農相の「節約志向」発言に非難の声
コメ離れを具体的に表現すると、25年度のコメ消費量は前年比6.1%減で、これは1人あたり1か月に茶碗4.4杯分食べなくなったということらしい。
新米は現状の価格を見て設定されるので、このまま行けば今年の新米は安くなる可能性が高い。農林水産省の今年の新米見通しは732万トンで、需要の696~711万トンを上回っている。
安いコメは消費者にとってはありがたいが、生産者農家には厳しい。業界関係者は、新米が売り出されると現在のコメは2000~2500円にまで落ちてくると見ている。
昨年6月に食料システム法が成立し、今年4月全面施行となった。これは、生産コストや物流費の上昇が適正に価格へ転嫁されるよう、サプライチェーン全体での取引環境を改善する目的がある。つまり、コストの可視化だ。これによれば、精米5キログラムのコスト指標は2816円で、専門家によれば、採算をとるには新米価格は3500円が目安になるという。
小泉前農相の改革を白紙に
時系列で情報を整理すると、昨年春、小泉進次郎農相(当時)は、コメの価格高騰に対応するため、政府備蓄米の大規模放出を実施した。コメ卸問屋の売り控えをやめさせる狙いがあった。また、備蓄米を大手・中小の小売業者へ直接売り渡す手法をとった。これが功を奏して、一時的にでもコメ価格は下落傾向になった。
しかし、10月に高市早苗内閣が発足し、現在の鈴木憲和農相が就任すると前大臣の政策をすべて転換し、JAや農水族を重視する自民党の従来型の農政に戻った。
東大大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授は「農業過保護論は完全に間違い」と痛烈に指摘する。すなわち、政府の減反政策の実質継続とフードテック(代替的食料生産)推進を批判し、農家の高齢化、低所得、後継者不足を挙げて構造改革を求めている。
小泉前大臣は、長年のタブーとされてきた生産調整(事実上の減反)の廃止を掲げ、コメ増産と輸出、流通改革の推進を掲げた。こうした姿勢は若手農家から前向きに評価されていたが、内閣が変わって元の木阿弥(もくあみ)となってしまった。
昨年のコメ不足のとき、コメ卸問屋に在庫を吐き出させておけば、現在のような状況にはならなかったのではないか。
文/横山渉 内外タイムス
