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今年のゴールデンウイーク(GW)、予定は決まっていますか? 連休を利用して、離れて暮らす家族に会おうと考えている人もいるのではないでしょうか。もっとも、なかにはその帰省に怯える親もいるようで……。本来であれば楽しみなはずの息子一家の帰省が、とある理由から憂鬱なものに変わってしまった60代夫婦の事例をみていきましょう。

息子家族のGW帰省に怯える60代夫婦

「『GWよ、来ないでくれ』というのがいまの正直な気持ちです」

とある地方で暮らすシゲルさん(仮名/68歳)とミツコさん(仮名/65歳)夫婦。シゲルさんは約3年前に定年退職し、現在は夫婦で月約27万円の年金と約3,000万円の貯金を切り崩す生活です。世間から見れば、悠々自適な老後を送っているようにみえるでしょう。

しかし現在、夫婦は目前に迫ったGWに、心から怯えていました。原因は、連休中に3泊4日で帰省を予定している長男(34歳)一家の存在です。

きっかけは数年前、長男夫婦に子どもが生まれたことでした。念願の初孫の誕生、加えて当時のシゲルさんは現役で収入に余裕があったこともあり、出産祝いやベビーカー代など、大喜びで惜しみなく援助していたそうです。

そんな背景もあってか、孫が誕生して以降、息子家族からの「おねだり」がエスカレートしたといいます。そして今や帰省のたび、食事代はもちろん、孫の服や高額な知育玩具の購入、さらには「帰りの新幹線代」までもが、当然のようにシゲルさんの財布から支払われるようになっているそうです。

さらに夫婦を追い詰めているのは、義理の娘(息子の妻)の言動でした。決して露骨ではありませんが、孫を盾に「習い事の月謝が大変で」「周りのお友達はもっと良いものを持っていて」と、巧みに援助を催促してくるといいます。

今年は孫が小学校に入学して初めてのGW。

「ランドセル代に続き、今度は連休の旅行費用までおねだりされるのではないか。それに孫から『おじいちゃん、これ買って』とせがまれたら、断る自信がない」と、シゲルさんはため息をつきます。

とはいえ、たった一人の息子家族と絶縁したいわけではありません。

「嫌われたくない、悪者になりたくない」という思いと、削られていく老後資金への不安。

出口のない葛藤に疲弊しているシゲルさん・ミツコさん夫婦、角を立てずに援助を打ち切り、平穏な老後を取り戻すことができるのでしょうか。

親の「嫌われたくない」という弱み

本件のような「身内間のお金の問題」は、一見すると法律相談になじまないように見えますが、こうした相談は知人から意外とよく受けます。その深刻さの度合いは大小あれ、このような「成人した子からの過度な援助要求」に悩んでいる親世代は少なくありません。

ここに共通しているのは、「関係を壊したくない」という感情と、「このままでは生活が持たない」という現実との板挟みです。

法律的に整理すると、親から子や孫への援助は原則として「贈与」であり、支払義務があるものではありません。したがって、援助を断ること自体に法的な問題は当然ありませんし、将来にわたって支払いを継続すべき義務もありません。

他方で、一度継続的に援助を行ってしまうと、「期待権」のような形で関係性が固定化し、心理的には断りづらくなるのが実情です。

重要なのは、「法的にどうか」ではなく、「どう伝えるか」の問題だと思います。たとえば、「今後の援助額は一定の範囲に限る」「大きな支出は事前に相談してほしい」といったルールを援助する側で明確にし、夫婦で方針を一致させたうえで伝えることが現実的でしょう。

人間関係とお金の問題、非常に悩ましい問題です。感情的には甘くなる場面でも、老後資金は取り戻せない資産である以上、線引きを先送りにしないことが、結果として健全な親子関係の維持にもつながるのではないでしょうか。

山村暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士