東日本大震災から15年 和歌山の「高台移転」から津波対策を学ぶ【徳島】
いつ起きるか分からない巨大地震。
なかでも県内で大きな被害が想定される南海トラフ地震は、今後30年以内に発生する確率が60%~90%以上とされています。
2月に発表された新たな被害想定をもとに、県内のリスクを見つめ、他県の事例から備えを考えます。
2月、有識者らでつくる検討委員会で、県独自の詳細データをもとにまとめられた新たな被害想定。
南海トラフ巨大地震による死者は最大2万1700人と、更新前の想定より1万人近く減少。
このうち、原因別では津波が8割を超える1万8000人、揺れによるものが3500人などと想定されています。
死者数の減少について、検討委員会の委員長を務めた徳島大学の中野晋名誉教授は。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「一番大きかったのは津波の浸水域が21パーセント減少している」
「もう1点は、建物の耐震化率が72パーセント程度だったのが、今回86パーセントぐらい」
「14ポイントぐらい上がっている。それによって亡くなる方が減少した」
(記者)
「減った数字を見て、単純に安心してもいいのか」
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「いやもう全然、本当にかなり厳しい数字」
「死者数が(約)2万2000人という数字が出ている。東日本大震災の岩手・宮城・福島、3県を合わせても、直接死としては、ほぼ同数になっている」
今回、市町村別の死者数で最多となったのは、小松島市の6100人。
前回の想定より1100人の増加となりました。
このほか、死者数が2600人から1900人に減少した海陽町も、大きな被害が考えられるといいます。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「海陽町などでみますと、死者の割合(町内の)全人口に対する割合は25パーセントぐらい」
「つまり4人に1人ぐらいが亡くなるという数字になっている」
県南部の津波対策の現状は…。
向かったのは海陽町の海南庁舎周辺です。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「沿岸の市町村の中では唯一、海陽町だけが津波の浸水エリアが広がった地区」
「この役場も前の想定では浸水エリア外だった」
「ところが今回は1メートル前後ですけども、浸水すること想定されている」
また、海陽町宍喰庁舎の周辺では…。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「この辺りでだいたい10メートルぐらいの津波の浸水深が予測されている」
「近くに愛宕山ある。そこに避難するのがこの辺りの方の一般的な避難場所」
「住宅がたくさん密集している地域なので、どうしても(山だけでは)避難場所が足りない」
「避難スペースが足らないということが、1つの課題ですね」
県南部ではこのほか、死者数450人想定の牟岐町で、町役場の浸水域外への移転整備が、死者数1000人想定の美波町で、子ども園の高台移転整備が進められているものの、いずれも完成には至っていません。
死因の8割を超える津波への適切な対策に注目が集まる中、先進的な事例を持つ地域が和歌山県にあると中野名誉教授は言います。
徳島港からフェリーと車で約4時間半。
やってきたのは、本州最南端に位置する和歌山県串本町(くしもとちょう)。
人口1万3000人ほどが暮らすこの町は、南海トラフ地震の際は3分で1メートル、最大17メートルの津波が想定されています。
(記者)
「市街地、閑散とした雰囲気ですけど」
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「だいぶ閉店しているのもあるし『移転』したのもある」
「そちらにあるのが地元の銀行の支店だが、5年前に高台にある『サンゴ台』っていう所、串本町役場の中に移転しています」
高さは最大で40メートル越えと、高台に位置する串本町のサンゴ台。
津波対策のため町役場や銀行のほか、消防や子ども園など多くの施設が移転しています。
(串本町総務課 防災・防犯グループ・岡田真一 班長)
「高台移転は東日本大震災以前から進めてはいたが、その後に移転した施設が多いのが現状です」
(記者)
「現状(サンゴ台に人は)増えているか?」
(串本町総務課 防災・防犯グループ・岡田真一 班長)
「町全体としては高齢化率も高く、減少の一途を辿っているが」
「高台に関して、人口は多少増減はあるが減少はあまりみられない」
サンゴ台ではここ15年、人口の増減はあるものの、世帯数は一度も減少することなく増加を続けています。
また、サンゴ台のふもとにある小学校の近くには陸橋が整備され、低地からの避難経路も確保されています。
しかし一方で、町役場や消防などは国からの交付金を得て移転したものの、住宅移転には補助金がないという住民にとっての費用面の課題もみられます。
(記者)
「町民から(高台移転に)反対は?」
(串本町総務課 防災・防犯グループ・岡田真一 班長)
「高台移転することによって、病院や役場へのアクセスがかなり悪くなったという声も住民からあった」
「なので現在、串本町役場と病院でコミュニティバスを必ず通過するよう設定して、不便がないような形で進んでいる」
(記者)
「サンゴ台が串本町にとってどんな存在になれば?」
(串本町総務課 防災・防犯グループ・岡田真一 班長)
「役場が防災拠点施設になりますし、総合運動公園などの施設が警察関係とその他の応援拠点で使用できるので、サンゴ台が(町の防災の)大きな役割を担ってくるのかなと期待している」
いつ起こるか分からない南海トラフ地震。
その備えは1人1人のものだけではなく、地域全体で考える課題でもあります。
徳島の沿岸部はどう備えるのか。
まちの将来を見据えた取り組みが求められています。
サンゴ台では、小学校や防災公園、道の駅などの建設も予定されているということです。
串本町のモデルから県内にも取り入れられることがあるかもしれません。
