不動産投資の舞台が変わった 都心マンションから地方の築古戸建、空き家に熱い視線

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都心マンションから地方の築古戸建へ、

不動産投資の舞台が変わった
不動産投資の世界で、静かな変化が進んでいる。
かつて主流だった都心の新築・中古マンション投資から、地方や郊外にある築年数の古い戸建て住宅へと、投資の軸足が移りつつある。

この動きは、新たな投資ブームというより、市場環境の変化に対する個人投資家の合理的な選択の結果といえる。背景には、マンション価格の高騰、居住ニーズの変化、そして地方に眠る空き家の存在がある。

新築投資用マンションは「手が届きにくい存在」に

首都圏の新築分譲マンション価格は、ここ数年で大きく上昇した。
2025年時点の首都圏新築分譲マンションの平均価格は約9489万円とされ、東京23区では1戸当たり1億円を超える水準に達している。

平均専有面積は約65㎡で、ファミリー向けの2LDKから3LDKが中心だが、投資用として供給されるワンルーム系住戸に目を向けると、状況はさらに厳しい。
1ルームや1Kの専有面積は20~25㎡程度にとどまり、価格帯は3000万円から5000万円台が一般的である。都心部では㎡当たり150万円から200万円を超えるケースもあり、取得コストに対して家賃収入が見合いにくくなっている。

結果として、都心のマンション投資は、以前に比べて利回りを確保しにくい投資対象となった。

家賃上昇が変えた「住む場所」の選択

マンション価格の高騰は、投資家だけでなく居住者にも影響を与えている。
都心部では賃貸家賃の上昇が続き、特にファミリー層にとって住居費の負担は重くなった。

こうした状況を受け、生活拠点を都心から埼玉県や千葉県などの近郊エリアへ移す動きが目立つようになっている。
人口移動の統計を見ても、首都圏全体では転入超過が続く一方、埼玉県や千葉県が転入超過地域として上位に入っており、「都心に近い郊外」へのシフトが進んでいることがうかがえる。

ファミリー層が選ぶのは「広さと家賃のバランス」

郊外や地方で需要を集めているのが、戸建て住宅だ。
同じ家賃水準で比較した場合、都心のマンションよりも、郊外の戸建て住宅の方が専有面積を確保しやすい。70㎡前後の戸建てに、8万円前後の家賃で住める例もあり、子育て世帯を中心に支持を集めている。
この居住ニーズの変化は、賃貸市場を通じて不動産投資の方向性にも影響を及ぼした。
需要が見込めるのは、都心の小型マンションではなく、郊外や地方にある戸建て住宅であるという認識が、投資家の間で広がっている。

こうした流れの中で注目されているのが、築年数の古い戸建て住宅への投資だ。
築古戸建は、取得価格が低く、自己資金を抑えやすい。フリマアプリ「ポルティ空き家バンク」を運営するポルティ調査によれば、築古戸建投資家の約30%が自己資金300万円未満で投資を始めている。
想定利回りについても、利回り10%超を目指す投資家が多く、価格高騰が進んだマンション投資と比べて、収益性を確保しやすい点が評価されている。

「株式会社ポルティ『築古戸建投資家の実態調査』」(https://porty.co.jp/corp/news/kodatetoushi-side-job)

不動産投資は以前から本業を持つ個人が取り組むケースが多かったが、近年は「最初から無理のない規模で運用する」投資スタイルがより明確になってきた。その受け皿となっているのが、築古戸建投資である。

空き家は「社会課題」ではなく、投資の帰結として現れた

地方や郊外の築古戸建に投資対象を広げていくと、多くの投資家が行き着くのが空き家という存在だ。
全国では空き家の増加が続いており、特に地方部では管理されない住宅が目立つようになっている。
もっとも、築古戸建投資の文脈において、空き家は当初から目的として選ばれているわけではない。
取得価格を抑え、利回りを確保できる物件を探した結果、条件に合致したのが空き家だったというケースが多い。

地方では、相続後に活用されないまま放置された戸建て住宅が少なくない。
築年数は古いが、構造自体はしっかりしており、一定の修繕を施せば賃貸住宅として再生できる物件も多い。こうした住宅は市場に出にくく、価格が低く抑えられている点が特徴だ。
築古戸建投資家の多くは、こうした空き家を購入し、必要最小限のリフォームを行ったうえで賃貸に回している。
新築マンションのように設備や共用部にコストをかけるのではなく、「住める状態に戻す」ことに重点を置く。この考え方は、投資額を抑えつつ収益性を確保するうえで合理的だ。

「株式会社ポルティ『築古戸建投資家の実態調査』」(https://porty.co.jp/corp/news/kodatetoushi-side-job)

結果として、築古戸建投資の広がりは、空き家の再生や流通を促す役割も果たしている。
空き家対策として行政主導の取り組みが進められてきたが、実際には、個人投資家の投資行動が空き家活用を後押ししている側面もある。

重要なのは、空き家活用が社会貢献を目的として進んでいるわけではない点だ。
投資として成立するかどうかを冷静に判断した結果、空き家が選ばれている。その積み重ねが、結果として空き家問題の一部を吸収しているに過ぎない。

投資対象が変わっただけの話

不動産投資が特別な存在になったわけではない。変わったのは、「どこに」「何を」投資するかという選択だ。

都心のマンションから、地方や郊外の築古戸建へ――その延長線上に、空き家活用という形が自然に現れる可能性もありそうだ。
不動産投資の舞台は、静かに移り変わっている。