2025年のマーケティングおよびメディア業界は、急速な技術進化と市場構造の変化が重なり、これまで当たり前とされてきた前提が揺らぎ始めた1年だった。とりわけAIの進化は、ツールの域を越え、マーケティングにおける生産性と創造性の前提を書き換えつつある。加えて、検索、ソーシャル、コマース、生成AIといった接点が絡み合い、顧客体験の「入り口」そのものも分散・再編されはじめた。Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2026」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブたちにアンケートを実施。2025年をどのように総括し、そして2026年に向けてどのような挑戦とビジョンを描いているのか。その声を紹介する。株式会社光文社で、メディア・ライツビジネス局 常務取締役を務める大給近憲氏の回答は以下のとおりだ。

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――2025年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。

10月に「ドクチョー総研」という組織を立ち上げました。ここの主たる事業は、企業の方に「読者データ」を課題解決で活用してもらうというものです。弊社では、主に雑誌企画のために「読者調査」(略称:ドクチョー)を編集者が行なってきました。この「読者調査」こそが、マーケットインの発想で雑誌を編集する出発点となっています。ある意味、読者へのインタビューを通して行うデプス調査とも言えます。編集者は、何度も読者に接しているため、そこから気づきも導きやすいですし、個々の例を一般化する術も持っています。ただ、企業の方には、「編集者の感」のようなものをいきなり共有してもらうのにはハードルが高いわけです。そこで、「気づき」の背景にある読者データをセットにすれば理解してもらいやすいでしょうし、課題解決にも使ってもらいやすいと考えました。これが「ドクチョー総研」の主旨です。データはたくさん蓄積しているものの、そこから仮説を導き出すのが大変という声を企業の方から聞きます。「ドクチョー総研」がそうした「仮説の構築」の一助になれば幸いと思っています。

――2026年に向けて見えてきた課題は何ですか。

企業の広告に求めているものが、多くの人への「幅広いリーチ」から「コミュニケーションの質」へと変わってきていると実感しています。「コミュニケーションの質」ということで言えば、いろいろなメディアがあるなか、雑誌と読者との関係性は、非常に緊密で深いものが存在しています。タダの情報がネットに溢れるなか、月に1000円払っても雑誌の情報に触れたいという読者がいるのは、コミュニケーションを通した関係性が築かれているからでしょう。これを企業と消費者のコミュニケーション構築にも活かしてもらうにはどうすべきかを考えています。市場で「マーケットイン」の商品構成が主体となるなか、その関係性づくりに雑誌のノウハウをどう活用してもらうかが課題です。

――2026年にチャレンジしたいことを教えてください。

自社媒体だけを使ってのコンテンツ発信にとどまらないビジネスモデルが求められると思います。オウンドメディアへのコンテンツ提供、企業の課題に向き合うソリューション事業など、いくつか始まっているものも出てきています。特にソリューションビジネスは提案だけでなく、出版社自体がその事業を担うこともありうるでしょう。すでに物販や事業運営を行なっているところもありますが、出版社としてのビジネスモデルの再構築が求められています。少し前に「Like a Publisher」というマーケティング手法がありましたが、これを出版社自体が使いこなして、既存のかたちにこだわらない事業を広げていく時代が来ているように思います。なかでもいま注目されている「ファンビジネス」、それを基盤にしたLTVの構築などは、本来、雑誌社が得意とするところなのではないでしょうか。