記事のポイント ターゲットとアルタ・ビューティーが2026年8月にショップインショップ提携を終了すると発表した。 来店客層の重複によるカニバリゼーションやターゲットの業績不振、アルタの再建計画が解消の背景にある。 セフォラとコールズの成功事例と異なり、アルタは専任スタッフ不在やカテゴリー制約でブランド価値を十分に高められなかった。


アルタビューティー(Ulta Beauty)とターゲット(Target)は、2026年8月までに「ショップインショップ」提携を終了する計画を発表した。

この提携は、ターゲットの独立店舗内に1000平方フィート規模のアルタビューティーの売り場を設置し、ターゲットのスタッフが運営するというものだ。2021年に約100店舗からスタートし、700店舗を追加する目標を掲げた。これまでに600店舗以上がオープンしている。

「この提携は、美容カテゴリーが急成長を始めた時期にスタートし、両小売業者にとって大きな利益をもたらした」と語るのは、位置情報分析会社プレイサー・エーアイ(Placer.ai)の調査ディレクターであるエリザベス・ラフォンテーヌ氏だ。

「1+1=1.5」だった提携



しかし同社のデータによると、店舗内での展開は潜在的な成長を食い合った可能性があるという。「両チェーンは類似した来店者層を共有している」とラフォンテーヌ氏は指摘する。たとえば2022年第3四半期のカリフォルニア州では、アルタ売り場を備えたターゲットを利用した顧客の14.5%が独立型アルタ店舗も訪問していた。一方、州全体のターゲット来店客ではその割合は10.8%にとどまった。ニューヨークやアリゾナでも同様の傾向が見られた。

「戦略的パートナーシップは成功すれば1+1=3になるが、このケースは1+1=1.5だったのかもしれない」と語るのは、セフォラ(Sephora)の元CEOで現在はコンサルティング会社カールマークスアドバイザーズ(Carl Marks Advisors)のマネージングディレクターを務めるハワード・マイティナー氏だ。「ターゲットの問題、アルタが2024年に経験したシェア低下、そしてアルタが進める方向転換を考えると、独自の道を進む方がよいと結論づけたのだろう」。

両社の業績不振と方向転換



ターゲットの売上はこの数年で低迷している。2023年度の売上高は前年比1.7%減、2024年度は0.8%減だった。アルタビューティーは2024年度に0.8%の成長を報告したが、第4四半期は1.9%減少した。アルタは2025年1月に経営陣を刷新し、ケシア・スティールマン氏をCEOに任命。復活戦略「アルタ・アンリーシュド(=解き放たれたアルタ)」を発表した。

今回の提携解消は、数カ月にわたる憶測の末に現実のものとなった。4月にはスティールマン氏がターゲット店舗での展開拡大を停止すると発表し、当初の目標800店舗に対して約200店舗不足することが明らかになっていた。

グローバル投資会社ウィリアム・ブレア(William Blaire)のレポートによれば、この提携ではターゲットが売り場を運営し、販売されたすべての商品に対してアルタにロイヤリティを支払う仕組みだった。これはアルタの収益の約4%にあたり、2024年度の年間売上112億ドル(約1兆6800億円)のうち、ターゲット経由の売上は約4億5100万ドル(約680億円)だった。

競合セフォラはコールズとの事業拡大



これは競合セフォラの成功事例と大きく対照的である。セフォラは2006年にJCペニー(JCPenney)、2021年にコールズ(Kohl’s)と提携。前者は2022年に終了し成果は限定的だったが、後者は2023年に1000店舗以上に拡大し、14億ドル(約2100億円)を売り上げた。2025年には年商20億ドル(約3000億円)を超える見込みだ。

最大の問題はスタッフ体制と消費者の期待だったとマイティナー氏は語る。コールズ内のセフォラはセフォラのトレーニングを受けた販売員が担当するのに対し、アルタの売り場には専属スタッフが配置されなかった。

さらに、アルタが重視するカテゴリー拡張にも制約があった。2024年12月、アルタのマーチャンダイジング担当シニアバイスプレジデント(SVP)のペニー・コイ氏は、「ウェルネスはアルタにとって2025年の大きな焦点だが、ターゲット店舗でどう扱うかは将来の議題だ」と語っていた。

「アルタは、この提携がブランド価値を十分に支えていないと判断したはずだ。そして、その関係から得られる売上や利益も十分ではなかったのだろう。ターゲットとしてはアルタに残ってほしかったはずだ。アルタが去れば、美容分野で自前でできることは限られる」とマイティナー氏は語った。

次のステップはスペースNKへ



とはいえ、この提携はアルタが新たに買収した英国の小売チェーン、スペースNK(Space NK)にとってひとつの青写真となる。8月初旬、アルタ傘下となった韓国コスメEC「ソコグラム(Soko Glam)」が、英国のスペースNK30店舗にショップインショップを出店することが発表された。

[原文:Where did Target and Ulta Beauty’s shop-in-shop partnership go wrong?]

Lexy Lebsack(翻訳・編集:戸田美子)