記事のポイント
AmazonはAlexa+を発表し、音声アシスタントの利便性とパーソナライズを強化。
収益化の戦略として、プライム特典拡充と広告展開の可能性を模索している。
広告展開は慎重に進める必要があり、ユーザー体験の悪化が懸念されている。

Amazonは現在、ウォールドガーデンの壁をさらに強化している。

2月26日、同社は待望のAlexa(アレクサ)の全面改良版を発表した。この音声アシスタントは、より会話が自然になり、パーソナライズが強化され、おそらく利便性も向上している。

Alexa+(アレクサプラス)と名づけられたこの新バージョンには生成AIが搭載されており、Echo(エコー)デバイスだけでなく、車載インフォテインメントシステムやコネクテッドTVなど、Alexaが動作するすべてのデバイスで利用できる。

これは、Amazonが10年前に掲げた「タッチ操作と同じくらい直感的に音声でデバイスをコントロールできるようにする」というビジョンの最新の試みである。

Alexaの収益化戦略



これまでのところ、画期的な技術というよりはギミックに近かったが、最新アップデートに対する初期の反応をみる限り状況が変わる可能性がある。そうなれば、「Alexaで何ができるか」ではなく、「Amazonがどのように収益化するか」がより重要な課題となる。

その戦略の一端はすでに明らかになっている。Alexa+は月額19.99ドル(約3000円)のサブスクリプションサービスだが、プライム(Prime)会員なら無料で利用できる。なお、米国でのプライムの料金は月額14.99ドル(約2200円)で、年額プランならさらに割安となる(年額139ドル[約2万円])。

この戦略の狙いは明確であり、プライムの特典を充実させることで買い物の利便性を高め、Alexaを通じたAmazonの製品販売を促進することにある。一方で、不透明なのは、この戦略が広告事業にどこまで及ぶかという点だ。

投資家の多くは、広告事業への拡大を予想している。AmazonのCEO、アンディ・ジャシー氏は、広告という高利益率のビジネスがいかに大きな利益を生み出しているかを強調しており、同社が広告収益への依存を強めていることを隠していない。

AlexaがAmazonのエコシステムにおいてより重要な位置を占めるようになれば、広告の展開スペースはさらに広がり、Amazonが「会話をコマースに変える」新たな手法を生み出す可能性がある。

「Amazonの商業パートナーの視点からみれば、それは必要な戦略だと考えられる」と、マーケティングエージェンシー、ザ・ビヘイビアーズエージェンシー(The Behaviours Agency)のCEOで創業者のスー・ベンソン氏は語る。「一方で、消費者の視点から見れば、Amazonが期待に応え続けることは、ブランドにとっても大きなメリットがある。Alexaは消費者との関係をより親密なものにしてくれる」。

Alexaを活用した広告ビジネスの展望



ベンソン氏の指摘は、近年高まってきた需要に対応するものだ。つまり、マーケターはAlexaの体験に広告を組み込みたいと考えている。

これまで、その試みは限定的な形でしか行われてこなかった。たとえば、Amazonはすでにスマートスピーカーを通じた音声ベースのサブスクリプションを推奨しているほか、Echo Show(エコーショー)などのスマートディスプレイデバイスでの広告展開にも踏み出している。

この取り組みにより、AmazonはAlexaを中心とする広告ビジネスの基盤を築くと同時に、どのような広告が効果的で、どのような広告が機能しないのかについての知見を蓄積している。独立系広告プラットフォームのエクアティブ(Equativ)の一部となったシェアスルー(Sharethrough)で製品マーケティングおよびサステナビリティ担当シニアバイスプレジデントを務めるフランク・マグワイア氏は、こうした点を指摘している。

もしAmazonがAlexa+での広告を本格的に展開すれば、マーケターがリーチ不足に悩むことはなくなるだろう。Amazonは直近のデータを公表していないが、2019年時点でAlexa搭載デバイスの販売数が1億台に達したことを明らかにしている。

また、同年、ベンチャー投資会社のループベンチャーズ(Loup Ventures)は、2025年までに米国の世帯の75%がスマートスピーカーを所有すると予測した。これを踏まえれば、Amazonはすでに相当数のユーザーを抱えており、広告の展開余地も大きいと考えられる。

ただし、Amazonは慎重に進める必要がある。あまりにも広告が多くなりすぎれば、Alexaユーザーの離反を招く可能性がある。

マグワイア氏は、こうした過剰な広告展開がAmazonのブランドや同社の主要な物理製品が提供するユーザー体験に悪影響を及ぼしかねないと指摘する。「単に技術的に可能だからといって、何でも導入すべきとは限らない」と同氏は述べる。

そのため、Amazonは明らかに長期的な視点で取り組んでいる。

「音声アシスタントの潜在能力は、まだ完全には引き出されていない。Amazonは、その可能性を十分に理解していないユーザーを遠ざけてしまうリスクを認識している」と、クリエイティブエージェンシーのアルテミスワード(Artemis Ward)の共同創業者であるジョエル・デイリー氏は語る。

「プライバシーに関する懸念はもちろんのこと、常に聞き耳を立てているデバイスがプライベート空間に入り込むこと自体に抵抗感を持つユーザーも多い。そこにカスタマイズされた広告が加われば、導入のハードルがさらに上がる可能性がある」。

なお、Amazonは本件についてのコメントを控えた。

[原文:Amazon launches Alexa+, and marketers want ads]

Krystal Scanlon(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:藏西隆介)