記事のポイントAIエージェントはユーザーに代わり作業を実行できる自律的ツールであり、企業が業務に導入する動きが進んでいる。企業はAIエージェントをマーケティングプロセスに組み込む方法を探し、データ戦略やリスク管理の重要性が増している。 現在、AIエージェントはまだ初期段階だが、実際に効果を示しはじめている企業もあり、顧客体験の向上に貢献している。
AIエージェントについての話がにわかに、シリコンバレーからダボスのスキー場まで、あらゆる場所で話されるようになった。しかし実際のところ、それらは米国の広告業界にどのような影響を及ぼすのだろうか?オープンエーアイ(OpenAI)が新しいAIエージェントツール「オペレーター(Operator)」のプレビューを公開したのは1月23日のことだ。このツールは旅行の予約、レストランの予約、食料品の購入など、ウェブベースのタスクに役立つものだ。eコマースおよび旅行業界で、eBay、Etsy、ウーバー(Uber)、インスタカート(Instacart)、ロイター(Reuters)、AP通信(AP)、プライスライン(Priceline)、ターゲット(Target)、スタブハブ(StubHub)が初期ブランドパートナーに名を連ねている。このAではじまる言葉は多用されているにもかかわらず、AIエージェントの採用はまだ初期段階であるため、マーケターはエージェントとは何をするものか、どのように作成されるのか、何をするのか、何をする可能性があるのか、何ができないのか、そして評判に傷がつくリスクの可能性までを問いただす必要がある。テック大手企業が日常的な作業に取り組むため自律的ボットを構築する一方で、マーケティングチームは、「見込み顧客」を購買顧客に転換するために、エージェントを既存のプロセスに組み入れる方法を検討する必要がある。

OpenAIの創業者サム・アルトマンらがオペレーター(Operator)の紹介とデモを行う動画を公開

AIエージェントとは何か

チャットボットが対話的なものなのとは異なり、AIエージェントはユーザーの代わりに作業を行うことができる。タスクを完了し、ほかのソフトウェアシステムと連係動作して、決定を行い、独立して動作可能だ。AIエージェントはアクセンチュア(Accenture)や、さまざまな広告エージェンシーが構築している。またトークデスク(Talkdesk)は最近のNRF(全米小売業協会)で、パーソナライゼーションに役立つ新しいAIエージェントを発表した。もうひとつの例はオラクル(Oracle)で、管理者が多いことによる販売プロセスの複雑さを取り除き、現場のチームメンバーが「顧客との有意義なコミュニケーション」に注力できるようにすることを目的とした、新しい販売エージェントを最近公表した。

AIエージェント、コパイロット、LLM(大規模言語モデル)の相違点を明確にする

エージェントとコパイロットはどちらも過剰に宣伝されているが、それぞれ異なるものだ。コパイロットはユーザーと共同作業できるが、自分で判断することはできない。これに対して、エージェントはユーザーに代わって自律的に行動できる。一方で、LLM(大規模言語モデル)はエージェントの基礎となるものだ。つまり、プロセスの一部にすぎない。LLMはテキストを生成し、言語を翻訳して、情報を提供し、トピックのブレインストーミングを行うことができる。また、AIエージェントを駆動し、追加のソフトウェアツールを補完するためにも使用され、これによってAIエージェントが実際に動作できるようになる。

エージェントにできることと、できないこと

コード&セオリー(Code & Theory)のCTOを務めるデイビッド・ディカミロ氏は、AIエージェントについて次に示す3つの異なる「バケット」を示している。
オバートエージェントは決定を支援し、チャットボット用のツールを駆動する。パッシブエージェントは、データセットを理解するため背景で動作する。そして、データアクティベーションエージェントは見識を取得して、それに基づいて行動を行えるよう支援する。
ディカミロ氏はさらに、どうすればこれらを安全で、正確で、有益な方法で実装できるのかが重要な考慮事項であると述べている。たとえば、データはどこから来て、誰がコントロールし、その正確性はどのようにして保証するのかといったことだ。「現在、エージェント側では、クライアントのために新たな厄介な問題を解決する必要が出てきた。これらを誰かが監視するのか、クライアントにコストが発生する場合はどう対応するのか、ビジネスへの影響はどのようなものかといったものだ。そして最終的には『これらのエージェントを誰が監視するのか』という問題に帰着する」と、ディカミロ氏は述べている。

AIエージェントにはそれ以外にどのようなタイプがあるのか

ゴールベースのエージェントは、さまざまな種類のデータを評価し、ゴールに照らして各種の方法を比較する。ユーティリティベースのエージェントは、可能なオプションや結果に基づいて行動を評価する。学習エージェントはさまざまな入力、フィードバック、過去の結果に基づいて学習する。検索エージェントはデータセットとデスティネーションを調査して情報を探す。Googleが最近プレビューを公開したプロジェクトマリナー(Project Mariner)のようなショッピングエージェントは、買い物の支援を行う。

AIプラットフォームでエージェントを実現する方法

最近になって、Amazon、Google、マイクロソフト(Microsoft)など主要なクラウドおよびAIプロバイダーは、企業がエージェントを作成するため、そして複数のエージェントが相互に連携するため役立つアップデートを発表した。AWSは12月に、複数のエージェントの連携を可能にするためと、精度向上、高速化、コスト削減のためAmazon Bedrockを更新した。Googleは今月初頭に小売業者向けの新しいエージェントの機能を公開し、マイクロソフトは新しい「自律的行動」機能を導入し、エージェントのコストを計算するための詳細事項を公開して、自然言語によりAIエージェントと「チャット」する方法を公開した。また、エージェントは検索拡張生成などの技法を使用し、LLMのトレーニング済みデータを超えてAIモデルの知識を拡張するため役立つ。さらに、異なるLLMによって駆動されるエージェントがさまざまなタスクにおいて協力することが可能かもしれないと、AWSの戦略アカウントの技術ディレクターを務めるポール・ロバーツ氏は語る。同氏は、消費者がAIエージェントを使用して商品を調査して、レビューを比較し、エネルギー効率などのさまざまな基準に基づいて別の選択肢を見つけるという例を挙げている。「エージェントのマーケットプレイスが存在し、これらのエージェントすべてが異なるタスクを行っていると想像してみてほしい。それらのエージェントを使って、さまざまなユースケースについて興味深いコンテンツを入手できるわけだ」と、ロバーツ氏は述べる。

課題やリスクの可能性

AIエージェントを構築するには、企業がデータ戦略を再考する必要がある。これには、データの収集、クリーニング、構造化の方法から、リアルタイムのデータフローやフィードバックループに役立つ新しいインフラストラクチャの構築まで、あらゆるものが含まれる可能性がある。また、企業はエージェントを既存のプロセスに組み入れる方法、現在のワークフローを変更すべきかどうか、そしてエージェントをほかのAIツールに統合する方法を明らかにする必要がある。ほかのタイプの生成AIと同様に、不正確さ、不一致、未証明のROIなどの懸念がある。また、エージェントによってユーザー、企業データ、バイアスなどに関する新しいリスクが生まれることや、顧客向けのエージェントがブランドの評判に損害を与えるような発言をする可能性についての心配もある。

これまでのところ実力を発揮しているエージェントはいるか

これらのエージェントはまだ、ごく初期のものだ。しかし、AIエージェントがすでに結果を示していると語る企業もある。一例はツイリオ(Twilio)で、自社のAIアシスタントのフレームワークをテストするため顧客サポートエージェントを構築した。このエージェントはアイザ(Isa)と呼ばれ、以前はマーケティングリードの2%だけを扱っていたが、現在では50%以上に拡張された。また、顧客がアイザと話したあとで購買顧客になる可能性について、マーケティング指標が3倍に向上した。「何かを自動化して、決算への影響を見るだけでは不十分だ」と、ツイリオで新技術やイノベーションの市場進出チームを率いるカット・マコーミック・スイーニ氏は語る。「最高のカスタマーエクスペリエンスとは何か? これまでは人材が限られていたため不可能だったカスタマージャーニーとはどのようなものか? といったものを考える必要がある。現在では、カスタマージャーニーにエージェントを組み入れることで、これまでは不可能だったような優れたエクスペリエンスが実現可能になった」。[原文:WTF are AI agents?]Marty Swant(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)