少子高齢化時代における「野球チームに必要なこと」|少年野球指導者コラム

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中学硬式野球チームでコーチを務める傍ら、全国約8,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」の管理人でもある廣川寿さんの少年野球コラムです。

少子高齢化時代における「野球チームに必要なこと」

今は言わずと知れた「少子高齢化時代」です。

選手が減っているだけでなく、少年野球の業界では「指導者の高齢化」も大きな問題となっています。昔は「若くて"熱血"の高い指導者」のもと、多数の選手が「競争」の中で切磋琢磨することで選手が成長する構造にありました。実はこの「競争構造」は指導者にとっても楽で、あれこれ言わなくても「競争」の中で勝手に選手が成長する側面がありました。競争が激しければ、選手は「言わなくても一生懸命やる」のです。

今はどうでしょう?

少年野球チームはどんどん合併や廃部などによって減少し、「多数の部員による競争」のあるチームはほんのひと握りです。多くのチームは「人数がギリギリ」「人数が足りず、他チームとの合同で試合」といった状況にあります。こうなるとチーム内にはほとんど競争はなく、ほとんどの選手が試合には出ることができます。

最近は最初から「競争が少ない(=試合に出られそう)チーム」を選んで入団する子もいます。こういうチームでは練習中の態度やチーム内の規律にも「甘さ」が出ます。その「甘さ」を戒めようと、指導者ばかりがガミガミと叱責の言葉を繰り返す悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。

そもそもの話ですが、子どもたちは何のために野球をやっているのでしょうか?

保護者の皆さんは何を望んで子どもたちを野球に通わせているのでしょうか?

選手やご家庭ごとに「野球をやる理由」は様々です。目的が違えば行動も違います。「将来はプロ野球選手に!」と本気で思っている選手と、「今が楽しければいい!」という選手の間で練習態度が異なるのは当然のことです。

大所帯で競争の激しいチームでは「競争」の中で選手の「野球に取り組む姿勢」は時間の経過とともに多数決的に揃ってきます。一方で「少数精鋭で質の高い野球を!」は理屈上あり得るのですが、競争が少ない中で選手の意識を高く保ち、高度な技術をキメ細かく指導するチーム運営を実現させるのはとても難しいです。

意識を高く保つために選手に対して厳しくすれば「今が楽しければいい」という選手の離脱を招き、そういう選手が不真面目に練習することを許容すれば「本気で野球やりたい」と思っている選手に対してもその選手だけを厳しく指導するわけにはいかなくなり、チーム全体に甘さが出てしまいます。そうすると「ここではやりたい野球ができない」と主力選手の流出に至るケースもあります。

少人数のチームにおいて、大所帯のチームと同じチーム運営は不可能なのです。

私は「少人数のチーム運営のために指導者に求められること」は3つあると思います。

?選手を詳細に『観察』すること

まずこれが大前提だと思います。少人数の利点は「ちゃんと見てくれること」です。選手の行動を事細かに観察することで「こんなところまで見ているんだ」ということを選手に実感してもらうこと。

「見られている」ということで練習中にも緊張感が増して行動は改善されます。「良い行動」「良くない行動」含めて極力全てを細かく観察することが大事だと思います。常に指導しなくても「見ているだけ」でもいいと思います。

うちのチームでは選手の保護者が試合の動画を共有してくれることがありますが、私は必ずその動画は見返します。あとで動画を見るとリアルタイムで見ていた時と印象が違うプレーもあるからです。私は特に「ウォーミングアップ」を注意深く観察します。身体能力の向上やその日の選手の集中度などが良くわかるからです。

?選手に対して『評価』を詳細にフィードバックすること

選手を誉めることは簡単です。「短所の克服よりも長所を伸ばす」も悪くはないですが、野球という競技は相手の短所を攻める競技側面もあります。コントロールの悪い投手は待球作戦を取られますし、クイックが遅い投手は走られます。変化球が打てなければ変化球を多投されます。そういう競技です。

課題は課題として伝え、「このままだと課題の克服は難しいよ」というフィードバックを理由を含めて適切に行うこと。選手にとって都合の悪いフィードバックを行うことは気分が良いものではないですが、放置しても「不幸の先送り」でしかありません。

「良いものは良い」「悪いものは悪い」を明確にフィードバックすることは一定量必要だと思います。少人数のチームは選手の機嫌を損ねないよう、このフィードバックが甘くなってしまうことがあるので考慮が必要だと思います。

?選手個々の『目標』をカスタマイズすること

選手は個々に能力差があります。例えば足が速い子もいれば、遅い子もいます。足が遅い子は「どうせ勝てない」と思って、走るトレーニングで手を抜いてしまう傾向が強いように思います。そうすると足が速い子との差はどんどん広がってしまいます。

少人数のチームの場合、「競争が苦手」という理由で少人数チームを選んでいることも少なくないので、ここには配慮が必要です。この場合、競争相手を「他の選手→過去の自分の記録」に変えることで、選手に「自己ベスト」を求めるようにします。他人との競争なら勝てなくても「自己ベスト」なら努力次第で更新できる可能性が上がるからです。

記録だけでなく「今日はこれができるようになって欲しい」といった目標を個々に設定して伝え、目標達成に向けてプロセスを伴走することが選手のモチベーションを高めます。

冒頭申し上げた通り、最近の少年野球の業界では指導者が高齢化しています。

経験豊富である反面、選手との距離が遠くなってしまう懸念もあります。「観察」「フィードバック」「カスタマイズと伴走」によって選手に寄り添うことがこの距離を縮め、より選手を成長に導いて行けるのではないかと思います。

廣川寿(ひろかわ ひさし)

1969年生まれ。愛媛県出身。全国約8,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。

【球歴】

えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)

【受賞歴】

■リトルリーグ

-四国大会優勝

■高校野球

-愛媛県中予地区新人戦優勝

-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)

-第59回選抜高等学校野球大会出場

■大学野球

-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞

(→1部昇格)

-阪神大学野球連盟特別賞(3度)

・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)

・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)

・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)

-学生日本代表候補選手選出 など

【野球指導歴】

-学童野球コーチ

-中学硬式野球チームコーチ・監督

-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数