子供がすいすい東大に合格する母親はどんな教育をしているのか。「プレジデントFamily」編集部は、シングルマザーで息子2人を東大に入れたたかせみほさん、長男が東大、次男が京大に進んだ母学アカデミー学長の河村京子さん、4人の子供全員が東大医学部の佐藤ママこと佐藤亮子さんに、家庭でのとっておきの学習法や育て方を聞いた――。(前編/全2回)

※本稿は、『プレジデントFamily2022年秋号』の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/ranmaru_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ranmaru_

■Q子供が進んで勉強した「仕掛け」を教えて下さい

●佐藤家

わが家では、リビングを学習部屋にしていました。子供たち4人の学習机を並べて、テレビは2階の部屋にお引っ越し。リビングの真ん中には大きな長方形のコタツがあって、そこで食事をした後はさっさとお皿を片付けてプリントと鉛筆を並べ、「せーの」で勉強していました。

食後、すぐに学習机に向かうのは、子供にとってはハードルが高いのです。小学校の低学年くらいまでは、椅子に座ってしまうと視界が高くなり、足もぶらぶらして落ち着かない。床にペタンと座れるコタツのほうがスッと勉強に入り込めたようです。

学習スタイルは好きにさせていました。コタツでゴロゴロしながらでもいいし、ソファに寝転んでもいいし、床に腹ばいになっていてもいい。大きなクッションを膝の上に置いて、そこにノートを広げていたことも。リビングのあちこちに移動しながら、ウオーミングアップの漢字の書き取り、計算問題、文章問題と、徐々に集中力を高め、気がついたら全

員が自分の机に向かっていて、そこから2時間は勉強していました。私も、コタツやソファで本や新聞を読んだり、書き物をしていました(※佐藤ママ宅の「リビングルーム学習に関しては、後編でも紹介しています)。

お行儀が悪いとか、姿勢を正しくしなさいとか、私はうるさく言いませんでした。そのことでガミガミ叱っていると、その分勉強時間が短くなるし、親も疲れるでしょ。

ゲームや漫画はいっさい買いませんでした。リビング=勉強部屋ですので、勉強に関係のないものは目に入らないようにしていました。まずは環境を整え、そして「食べたら勉強」のように習慣化してしまいました。6年生は夜の11時30分までには寝る、5年生は11時、というように学年によって寝る時間も決めていました。寝る前にはお風呂に入る必要もあるので、それを逆算して、勉強を終えていましたね。

●河村家

私自身、学生の頃は勉強が嫌いでした。「勉強=辛い」というマイナスイメージがあったんですよね。だから、自分の子供はそうならないよう、毎日の会話から「勉強=楽しい」をすり込みました。

「今日の宿題は何? うわ、こんな難しいことやってるの。すごいな」
「よし、今日はお母さんと計算問題の競争しよっか」
「学校行けていいなあ。給食もおいしそうだし、友達もいっぱいいるし。お母さんも行きたいなあ」

なんて声掛けをしょっちゅうしていました。

次男は、勉強そのものは進んでやる子なんですが、字を書くことが嫌いで、漢字ドリルの宿題には苦戦していました。もう書けるのに、なんで何回も練習しなきゃいけないのかって。でも、宿題は学校の先生との約束事なので提出しないわけにはいかない。そこで、私も一緒になって、書くことが楽しくなるような、そして少しでも早く終えられるような作戦を立てました。「よし、まずヘンだけ書いちゃおう」とかね。

丁寧さには重きを置きませんでした。字が下手なのと、勉強ができることはまったく別のこと。「目」という字を何回か書いていると、いつの間にか「日」になり「口」になり、最後は「〇」になっていた。でも「目」を書けないわけじゃないですから。

とにかく宿題は終わらせる。それで先生にやり直しをさせられたらそこから何かを学ぶでしょうし。世の中に出ても、面倒くさいことはあるわけでしょ……確定申告とか(笑)。だからノルマは最低限やる、ということだけは伝えました。

●たかせ家

就学前から、子供たちが好奇心を持ちそうな知育玩具をダイニングテーブルにたくさん並べて、「座って集中できる時間」をつくっていました。たくさんあると、何かしらに興味を持ちます。どれにも興味を示さないときは、私が楽しそうに遊んでみて、「あれ? これはどうするの?」といった具合に、子供に助けを求めると、喜んで教えてくれましたね。

小学校に上がってからは、宿題をルーティン化していました。朝起きたら15分間、漢字の宿題をしてから朝食、早く終わったらブロックで遊んでいいとか。学校から帰った後は、まずカバンの中身を全部出して、プリントや宿題の確認をさせました。それからおやつを食べて宿題、終わったら遊び、という流れです。

■Q「勉強しなさい」の代わりに何と言いましたか

●佐藤家

「8時から30分間、算数のプリント3枚」のように、時間と量を伝えました。

やることが具体的で、ゴールもわかるので、とっつきやすいんでしょうね。ゴールを見せることが大事だと思います。「勉強しなさい」って言われて気持ちのいい子はいないですよね。なんだかやることがいっぱいありそうで、面倒くさそうじゃないですか。

写真=iStock.com/YMZK-photo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/YMZK-photo

●河村家

「さ、一緒にやろうか」ですね。

特に低学年の頃は、勉強を親子のコミュニケーションタイムとして位置付けていました。お母さんと一緒で、楽しくて温かいイメージ。とはいえ、嫌がるときもありました。特に次男。そんなときは、「4時までに宿題が終わったらおやつ一品プラスしよっかな」など、エサ作戦もよく使っていました。

●たかせ家

小学校に上がるまでは、「勉強」を「お仕事」と言っていました。お母さんにお仕事があるように、子供にもお仕事があるのよ、とプリント学習をさせていました。「さあ、お仕事しますよ〜」とね。

『プレジデントFamily2022年秋号』(プレジデント社)

「勉強」は、堅苦しくて辛いというイメージがありますが、「仕事」は大人と同格扱いされた気分になるようです。また、「仕事」にはミッションというイメージもあるのか、自分は期待されているんだ、とも感じながら取り組んでいたようです。

小学校に上がってからは、学校が「宿題」「勉強」という言葉を使うので、家でも自然とそうなりました。

どうしても勉強する気になれない日には、「よし、ちょっと気分転換しようか」と、おやつを食べたりパズルをしたり。その後で、「何ならできそう?」と聞きました。「う〜ん、計算問題ならできるかも」。自分で言ったこと、自分で選んだことはやるしかないので、自然とお勉強タイムに切り替わっていました。

■Q 子供が失敗したときに何と伝えましたか

●佐藤家

人間は失敗するもの。責めたり叱ったりはしませんでした。だいたい笑って済ませましたね。テストの答えを間違えたときは、「あらまあ、こんなところを間違えちゃって。アハハ」と笑いに変えていました。

私が子供だった頃、お皿を割ってしまったときに母から「食器もたまには割れないと、陶器屋さんが儲からないからね。いいことしたね」と言われていたんです。わが家の子供たちもたくさんお皿を割ってくれましたが、叱りませんでした。それに、子供がお皿を持っている状態って、お手伝いでシンクに運ぶ途中だったりするわけでしょう。そんな子供の気持ちを考えたら、「ママのために持っていってくれたんだね。ありがとう」って気持ちになりました。

●河村家

私の口ぐせが「大丈夫、大丈夫」なんです。世の中に取り返しのつかない失敗なんて、そんなにないでしょ。テストで30点取ろうが、命がなくなるわけじゃないですし。道路に飛び出しちゃうとか、命に関わるもの以外は、たいていの失敗はやり直しができるものです。

●たかせ家

長男はちょっと不器用なところがあって、工作が苦手でした。授業時間内に終わらなくて、家に持ち帰ってきたことがありました。彼の中では小さな挫折だったようで、続きをするにもいやいや、といった感じでした。

そこで私は、「ここ、すっごく丁寧にできてるね。だから時間がかかっちゃったのかな?」と声をかけました。彼の中のマイナスを、プラスの方向に転じたのです。いやいややっていた彼の顔つきが変わっていきました。

ただ、次回も持ち帰るのはいやだろうと思い、「そうならないためにはどうすればいい?」と聞くと、「今回は、取り掛かるまでに時間がかかったから、次は早く始める」と。しっかり検証もさせて、次回へのモチベーションを高めました。

何かに失敗して気持ちが折れたままだと、次に挑戦したいという気持ちがなくなってしまいます。次も頑張れるような話し方を心がけました。(以下、後編へ続く)

写真=iStock.com/Veerachart
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▼シングルマザー子育て たかせみほさん

『シングルマザーで息子2人を東大理Iに 頭がよくなる「ルーティン」子育て』

『シングルマザーで息子2人を東大理Iに 頭がよくなる「ルーティン」子育て』の著者。

子供たちの今

長男(24歳):東大工学部合格、工学系研究科修士課程修了後、AI系企業に就職

次男(22歳):東大工学部4年生。数学を究めるために理学系研究科修士課程に進学予定

▼3男1女が東大理3合格 佐藤亮子さん

『4人の子どもを東大理三に合格させた佐藤ママが教えるわが子の知能と心を育てる「読み聞かせ」!』

『4人の子どもを東大理三に合格させた佐藤ママが教えるわが子の知能と心を育てる「読み聞かせ」!』ほか著書多数。

子供たちの今

長男、次男、三男:医師として活躍中

長女:医学部6年生

▼母学アカデミー学長 河村京子さん

『わが子が東大・京大に現役合格! 子どもの学力は12歳までの「母親の言葉」で決まる。』ほか著書多数。

『わが子が東大・京大に現役合格! 子どもの学力は12歳までの「母親の言葉」で決まる。』

子供たちの今

長男(27歳):東大工学部に現役合格。在学中に起業。現在大手IT企業に勤務

次男(25歳):京大理学部に現役合格。数学を究め、現在は次のステップに向けて準備中

長女(22歳):中学在学中にイギリス留学。ロンドン大学に進み、今秋卒業。日本で就職予定

(プレジデントFamily編集部)