空気が読めない人には、どんな特徴があるのか。BBT大学副学長の宇田左近氏は「空気が読めない人には、共通して3つの『ない』がある」という――。

※本稿は、宇田左近著『インディペンデント・シンキング』(KADOKAWA)を再編集したものです。

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■共通点その1「アイスブレイクのセンスがない」

オンラインでの会話、通話が一般化してきた一方で、リアルでの対話は今まで以上に重要な役割を果たすことになるだろう。特に初対面の相手に対しては、最初の数分でお互いの障壁を取り除くことが肝要となる。いわゆるice breakingという導入部分だ。

お互いのコミュニケーションをとるための環境を作れない、すなわちice breakingのセンスがない人は「空気が読めない人」の代表格だ。いきなり自分の話したいこと、聞きたいことに入っている人は、唐突感をおぼえた相手が内心うんざりしている可能性が高いと考えるべきだろう。一方で、周辺の話題に終始し一向に本題に入らないというのも、相手のイライラの原因になる。

お互い気持ちのいいアイスブレイクのためには教養、話題の引き出しの多さが必要だ。加えて相手へのリスペクトや理解しようとする気持ち、好奇心がないとできない。慣れ親しんだ組織の中なら、入社年次とか、何部の誰を知っているということだけで済むが、その意識のまま、訓練の機会もなく自己流で対外コミュニケーションをとっている人は意外なほど多い。

■自分の主義主張を話し始める人は信頼されない

ビジネスのシーンでいきなり相手のパーソナルな話題に踏み込むのも要注意だ。年齢や家族構成、住んでいる場所、あるいは出身大学などは、日本ではわりにフランクな話題として受け入れられているが、そういうパーソナルな話はある程度関係ができてからと考えるべきだ。

子供の話題、たとえば「今日はこの年で運動会に駆り出されて大変だった」とか「娘は海外留学を目指しているけどなかなか英語が上達しなくて」など、一見へりくだった会話をしているようだが、相手は独身、子供の話なんてどうでもよいと考えているかもしれない。

自分の主義主張から入るのも考えものだ。新聞で大企業の不祥事などが話題になっているときに「あれはひどいですね」などというと、実は相手はその道のインサイダーであって、ワイドショーや新聞には出てこない本当のストーリーを知っていたりする。決してそれをあなたに明かしてはくれないが、この時点であなたへの信頼はゼロとなる。

一方、オンラインでの初対面の場合、相手のいる場所などを理解していればお互いの離れた場所の情報交換などもスタートにはよいかもしれない。しかし画面以外の情報を把握できないので、ややまどろっこしいのも事実だろう。情報量が限られるだけに、よりice breakingの力が試されることになる。

■共通点その2「議論の目的が見えない」

今何の目的で話しているか、手短に相手に伝えられない、伝わらない。これも、空気が読めないと見られる人の共通点だ。相手は「いったいなぜこんなことを議論するのだろうか」「この話を聞いて何になるのだろうか」と訝しがる。そして「今こんなことを持ちだすなんて空気が読めないやつだ」となる。こういう人は、そもそも自分でも何を聞きたいのか、聞くことで一体どのようなネクストステップにつなげたいのかをわかっていない場合が多い。

上司からの指示なのか、あるいは報告書を丁寧に書きあげたいのか、「インプットが欲しい」というだけでコミュニケーションする人たちだ。このタイプは、何といっても「知っていること」が重視される組織に多く見られる。何か聞かれたときに「それは知っています」ということに価値があるのであって、万一「知りません」などといったら「勉強不足」の烙印を押される。なのでコミュニケーションは一方通行、相手から見れば「自分勝手だ。空気が読めないのか」となり、結果として、相手に時間を割いた意味を感じさせられないで終わる。

■「貴重なお話を賜ることができ……」はダメ

ヒアリングはイーブンに終われ――。議論の目的に向けて論理的な対話ができれば相手も「自分の頭も整理された」と感じるだろう。あなたとの対話によって、対話終了後、相手も一定の満足感を得られるというのは大事だ。こいつと話してよかったと思われるかどうかである。

また目的が共有されていない場合に議論の最中に相手の関心が急速に薄れることがある。「その話題は関心ないなぁ」「今話すべきことはこれなの?」といった何とも言えない雰囲気が漂う。

ひとたび時間の無駄だと思ったとたんに、首を回しながらこりを和らげる素振りなんかも見せたりする。要は早く帰ってくれというサインだ。このような場合はそれまでの対話のポイントを頭のなかでフレームワークに落とし、それをベースに自分の得られた意味あいを示しつつ次の質問を進めることとしたい。相手が「なんだ、意外によく整理されているな」と思えば、再び議論に戻ってくれる可能性がある。

いずれにせよ、相手の関心事も考えずに自分の聞きたいことだけ聞いて、あとは「本日は貴重なお話を賜ることができ……」といった通り一遍のメッセージを送るだけとなると、二度と相手にしてくれないだろう。これは悪気なくやっている人が多い。

■共通点その3「コンテンツが整理されていない」

3つめの共通点は、「コンテンツが整理されていない」という根本的問題だ。以下の3点は特に注意したい点だ。

まず、すでにピラミッドストラクチャーの重要性などは世の中に理解されていると思うが、自分の伝えるべきこと、そのメインメッセージが何かというだけでなく、「そのメッセージをどの程度コンパクトにできるのか」は、頭が整理されているかどうか相手が判断するための大事な情報になる。

たとえば、会議の初会合での自己紹介等の段階も要注意だ。10人以上も出席している会議で、1人5分もかけたら、すぐに「その説明だけで会議時間がなくなってしまうこともわからないのか、空気の読めないやつだ」というような目で見られるだろう。最初の発言の前に、まずは自分の持ち時間はどの程度にすべきかを瞬時に考える必要がある。

2点目として、最初に用意したコンテンツを伝えるだけでなく、相手の視点や異なった意見によって、そのコンテンツをさらにレベルアップしていくことを考える必要がある。

多様な人が集まることには意味がある。意見の違いによって生まれる集合知、あるいは集団的IQを導くためには、検討課題を明らかにしたうえで、対話を通じてお互いの意見を促し、議論の質を向上させていくことが必要だ。対話ではなくあらかじめ用意した資料を延々と読みあげるような人、相手の言うことにうなずきながらメモをとるだけの人、などは会議の目的を理解できない、いても役に立たない、空気の読めない奴ということになる。

3点目は、「コンテンツが整理されていない時には、通り一遍のプレゼンテーション技術もたいして助けにはならない」ということだ。プレゼンでごまかそうとしてもすぐ見抜かれる。内容が伴わない、あるいは筋が通らないことを、派手なプレゼンテーションで煙に巻くということがよく見られるようになった。気を引くワードや派手な仕掛けなど本質とはかけ離れたアレンジをもってして「プレゼンテーション技術」などともてはやされる。

コンテンツが整理されていない段階でプレゼン技術にはしっても、そこそこの相手は煙に巻けても集合知を求める人には通用しないだろう。それこそ「中身がないのに仰々しくプレゼンして、空気の読めない奴だ」ということになるリスクは大きい。

■あえて空気を読まない人に伝えたいこと

では、自身のコンテンツが整理されているかどうかの確認はどうすればよいのだろうか? 既出の内容も踏まえてまとめてみよう。

・目的を確認し、相手とも共有することで確認する

なぜこの議論をするのか? いつまでに何を終わらせるべきか? それはどうしてか? 誰が参加しているか? リーダーは誰か? この件全体を執行するとそれはどのぐらいインパクトがあることなのか? これらは一旦事が進み始めてからだと「今頃なんだ」「空気の読めないやつだ」となりかねないので、あくまでも機先を制すタイミングを逃したくない。

・常に「だから何なのか? So what?」と自問しながら確認する

宇田左近著『インディペンデント・シンキング』(KADOKAWA)

要は何を言いたいのか? から始めて、その理由を構成するといわゆるピラミッドストラクチャーになるはずだ。議論の進展に応じて常に、自分はいったい何を伝えようとしているのか、それはなぜか? を自身で確認できていれば、相手からも理解されることになる。

こう書くと、「私はあえて空気は読まない」、という人もでてくるだろう。別に人から何と思われようが関係ないとなれば、むしろ唐突感で勝負しようということにもなる。それも否定しないがそのような人が、本当に反論しなければならない時に、あるいは苦言を呈すべき時にしっかりと意見が言えるのか、他の人の意見に対してそれが事実と反していると考えたら反論する義務がある(Obligation to dissent)ということを思い出してほしい。

それを相手が信用し、納得してくれるのかという点はよく考えてみるべきだろう。

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宇田 左近(うだ・さこん)
ビジネス・ブレークスルー大学 副学長 経営学部長 教授
株式会社荏原製作所独立社外取締役、取締役会議長、公益財団法人日米医学医療交流財団専務理事。東京大学工学部、同修士課程修了。シカゴ大学経営大学院修了。日本鋼管(現JFE)、マッキンゼー・アンド・カンパニー、日本郵政株式会社専務執行役、東京スター銀行COO、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)調査統括・原子力損害賠償・廃炉等支援機構参与、東京電力調達委員会委員長等を経て現職。著書に、『なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか』(PHP研究所)、『プロフェッショナル シンキング』(共著、東洋経済新報社)がある。
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(ビジネス・ブレークスルー大学 副学長 経営学部長 教授 宇田 左近)