ボローニャへ加入した冨安。セリエAで戦う日本人選手は11人目だ。 (C) Alberto LIGRIA

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 歴史は繰り返される。中田英寿がボローニャにやってきてから15年、日本人が伝統あるロッソブルーのユニホームを再び纏うことになった。冨安健洋。ボローニャは、ベルギーのシント・トロイデンに900万ユーロ(約11億2500万円)を払ってこの日本代表CBを獲得した。この金額はシント・トロイデン創立以来の最高額だという。まだ20歳という若さから、未来を見据えての獲得でもある。
 
 しかしなぜ冨安だったのか? 実はボローニャはかなり以前から目をつけていた。このクラブはスカウト網がしっかりしていて、ヨーロッパ中のリーグに常に目を光らせている。ベルギー・リーグもしかりで、ほぼ丸一年をかけ、代表戦も含めてずっとそのプレーを注視してきた。
 
 その結果は満足のいくものだった。彼らが気に入ったのは冨安のDFの基礎となる資質の高さだ。フィジカルの強さ、先を読む力、複数のポジションをカバーできる柔軟性、また攻撃の起点ともなり、守備だけでなく空中戦にも長けている。
 
 7月半ばにチームに合流した冨安は、すぐに“正しいやり方”で溶け込んだ。新入りはまずチーム皆の前に引き出され、仲間からいじられるという、入団儀式のようなものがボローニャにはある。彼はそれを陽気に受け入れた。キッチンの泡だて器をマイクがわりに、あらん限りの声でシャウト、かなり謎なダンスも披露し、チームメイトたちの笑いを誘った。
 
 また入団の記者会見では、イタリア語でいくつかのフレーズをしゃべり、記者たちを驚かせた。態度も落ち着いていて、礼儀正しい。
 
 ただ、だからといってトミ(自分のことをそう呼んでくれと彼が言った)がすぐにレギュラーとなれるかといえば、その答えは多分ノーだ。それは決して彼に才能がないからではない。彼がこれまでプレーしていたベルギーにはクリスチアーノ・ロナウドも、ゴンサロ・イグアインも、ロレンツィオ・インシーニェも、エディン・ゼコもいなかった。
 
 こうした名だたるストライカーたちと対峙するには、どうしても時間が必要だ。まずイタリアのサッカーに慣れなければならない。ベンチでセリエAのサッカー間近で見て、途中交代で徐々に慣れていくことで、すぐに潰されるのを防ぐのだ。
 ボローニャの守備陣は層が厚いとは言えないが、ベテランCBダニーロをはじめ経験豊かな選手がそれなりに揃っている。これから自分がプレーする世界が、どんなものであるのかを冨安が理解するまで、待つことは十分できる。シニシャ・ミハイロビッチ監督は、まず冨安をCBか右SBの控えとして使っていくつもりだ。両方でプレーできるので、出場するチャンスは倍になる。
 
 まだレギュラーの座を掴んだわけではないが、持ち前の明るさと熱心に練習に取り組む姿で、すぐにチームメイトやスタッフからのリスペクトを得た。CEOのクラウディオ・フェヌッチとテクニカル・コーディネーターのワルテル・サバティーニは、冨安をイタリアに連れてきた張本人たちだが、獲得は正しかったと自信たっぷりだ。

「彼はボローニャにぴったりの選手だった」とフェヌッチが語れば、サバティーニは「見ていてくれ、彼はきっと我々を驚かせるよ」と豪語する。
 
 チームメイトもすぐに彼を受け入れた。オランダ代表の左SBミッチェル・ダイクスは言う。

「トミは練習熱心だし、何より学んでやろうという気持ちが強い。本物の日本の戦士だ」

 また、マーケティング部門の責任者ジャンルカ・パバネッロも、「トミヤスのユニホームは、グッズショップで奪い合いになるほど売れているよ」と、満足気だ。

 ここまではすべてはうまくいっている。あとはボローニャが昨シーズンよりも落ち着いた状況でシーズンを過ごせるのを願うばかりだ。昨年はあと少しで降格圏内と低迷した時期もあったが、それを救ったのがシーズン半ばから指揮を執ったミハイロビッチだった。彼はサマーキャンプが始まると同時に白血病であることを公表し、現在は療養中だが、チームは続投させる方針だ。

 今シーズンのボローニャの目標は、常に残留の安全圏にいること、そしてあわよくばヨーロッパリーグの出場権(5〜6位)獲得だ。そのためにはミハイロビッチが一日も早く復帰し、ベンチに座ることが重要だ。

文:パウロ・フォルコリン
翻訳:利根川晶子