日本のお土産として大人気「香る」腕時計! 販売数100万個を目指す「香 KAORU」の挑戦

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「MADE IN JAPAN」ながら破格の低価格2,500円の「香 KAORU」という腕時計がある。
しかも、「香り」が漂う腕時計だ、

「香 KAORU」は今、海外からの観光客の日本の土産品として人気の製品なのだ。


「香り」と「和」のデザインで人気の腕時計「香 KAORU」


「香 KAORU」を販売するのは、株式会社マルゼキだ。
1999年、腕時計を販売する有限会社マルゼキとして創業。
秀逸なデザイン時計を幅広く開発し、独自のコンセプトで色彩や型、サイズ、重量、素材などを吟味した商品を展開している。

生産は主に中国だが、クオリティーの高さから、有名なファッションブランドにもOEM供給している。また最近では、多くのゲームキャラやアニメ関係の腕時計も手掛けている。

腕時計で希望のデザインができる企業は、マルゼキ以外には少ないことから、OEM供給の依頼が多く、OEM供給は腕時計全体の6〜7割にのぼるという。


株式会社マルゼキ マネージング・ディレクター河崎麻奈美氏


今回、取材させていただいたのは、株式会社マルゼキ マネージング・ディレクター河崎麻奈美氏、45歳。
洗足学園短期大学卒業後、米国のFIDM(Fashion Institute of Design & Merchandising)に留学し、ファッションビジネスを学ぶ。帰国後、広告代理店や企業のイベント事業に関わる製作会社に入社。イベントの企画やデザインを扱う仕事に携わった後、家族が経営するマルゼキに入社し、現在に至る。


■日本のお土産として考案された「香 KAORU」

和の香りが楽しめる腕時計「香 KAORU」


「香 KAORU」は、和の香りが楽しめる腕時計である。
マルゼキとゴムメーカー、香料メーカーの三社が協力して作り上げた。

最大の特徴は「香り」だ。
特殊加工を施したベルトから「香り」が放たれるのだ。
文字盤は、凹凸のある和柄が施されている。

河崎麻奈美氏
「もともと『ドーナツ時計』というドーナツの香りがする時計を作っていました。
ストロベリー、バニラ、ココナッツの香りがするんですけれども、これでちょっと失敗したのが、販売価格5,800円だったんです。
もう少し安ければ、数が出たなという反省点がありました。

『香 KAORU』ですが、こういうのが欲しいという営業からの声があったのと、これから観光客が伸びていく中で、マルゼキとしてもインバウンド向けの商品を作ったほうがよいとの話をもらって、じゃあ、和の香りのものを作ろうという企画が持ち上がりました。」

香る腕時計には、第1弾としてドーナツをモチーフにした腕時計「Dress 'N Dazzle(ドレスアンドダズル)」があった。
「香 KAORU」は、香る腕時計の第2弾の製品として登場した。


ドーナツをモチーフにした腕時計「Dress 'N Dazzle(ドレスアンドダズル)」


「香 KAORU」は販売価格2,500円。
デザインウォッチとしては破格の低価格だ。


河崎麻奈美氏
「価格は2,000円台にしたいというのがあって、どうにか2,500円に抑えました。

中国のスタッフにも聞いたんですが、
『もし、お土産にするなら、1個のお土産にいくら使う?』と聞いたら、
150元という解答でした。それがだいたい2,500円弱なんです。」


河崎麻奈美氏
「ラッキーだったのは、『このストラップは日本生産でも、ほぼほぼ変わらないよ』というお話がシリコン工場からあったことです。

変わらないんだったら、日本で作ったほうがいいということになりました。

ヘッドに関しては、ガワとかは中国で作っています。仕入れが昔に比べて1.5倍ぐらいになっていて、これを作ってくれるところを探して、どうにか折り合いがつく場所を見つけて、ここに至った感じです。なので、最初から進めるときに値段ありきで進めました。」

時計本体はセイコーエプソン製で、ストラップ、香料、パッケージも合わせて、「MADE IN JAPAN」にこだわったという。


パッケージもタグもすべてにおいてコストとの戦いだった



■販売数100万個を目指す「香 KAORU」、キャラクターとのコラボも
「香 KAORU」は、
・日本らしいデザイン
・手に取ると、香る腕時計
・2,500円という低価格
このシンプルでわかりやすい3つが、大きな特徴だという。

河崎麻奈美氏
「シンプルに人が購入するのって、『わかりやすい』というのは重要だと思います。

2月のギフトショーで、大阪のお客さんに『これ、ホンマに匂うん?』って言われました。
実際に匂いを嗅がれたら、『ホンマや!』って言われてました。

だから、わかりやすいですよね。」

その後、3月に開催された「第1回京都インターナショナル・ギフト・ショー2019」では、接客ができないほど、多くの来場者がマルゼキの出展ブースに訪れたという。


河崎麻奈美氏
「コスト削減には数も重要で、
最初は2,000本ずつ
去年は2万本、注文が来ました。
本番は、これからです。」

「香 KAORU」の「香り」は、
「桜」「抹茶」「檜」「椿」「柚子」「和墨」と、6種類の香りが用意されている。

河崎麻奈美氏
「もろに香りを入れてよいのは、檜とか抹茶とかです。
一方で、墨の匂いをそのまま入れて良いのかというのはありました。
そういう意味で、墨はイメージを大事にして香料も入っています。

最初の頃は、日本のイメージとしては、ふわっとした香りがいいのだけど、ふわっとした香りだと、あまり持続性がないので、しっかりと香りを付けた方がいいということになりました。」

どうやって「香り」をつけているのだろう。

河崎麻奈美氏
「香りはベルトの素材に練り込んで、最後に成形しています。
外に出したままのお客様だと、どうしても香りがなくなる恐れがあるんですが、香りのチップで持続時間をうまく延ばすことができました。

『チップの香りがなくなるまで』という考え方です。
なので、また新たなチップを入れると、復活します。」

香りが薄くなったら、チップの入った袋に戻せば、香りは復活するのだそう。
こうして、6カ月まで香りの持続時間を保証している。


香りが薄くなったら、チップ入りの袋の中に戻せば、香りが復活する


河崎麻奈美氏
「『100万個、達成しよう』というのが目標です。
毎年、何個ぐらいまで持っていけるんだろうというのがあります。
毎年2万個だと、スローだなというのが、私の感覚なんです。
なぜなら、私の目標は100万個だからです。」

キャラクターとのコラボレーションは、どうなのだろうか。

河崎麻奈美氏
「お客様のOEMも受けていて、ハローキティとか、スヌーピーとか、コラボレーションはこれから増えていきます。
中国でもLINEは人気があるので、LINEのキャラクターの時計も作りたいですね。」


■時間や場所を感じさせる香る時計、そして五感を刺激する時計へ

香る腕時計と今後の展開について語る、河崎麻奈美氏


河崎麻奈美氏
「香りっていうテーマで開発をしていくのは面白いなと。
いろんな方に、そういうお話をしていたら、
『マックのハンバーガーで、マックバリューになったらいいのにね』とか。
『ハンバーガーのかたちで、ハンバーガーの匂いがする』とか。

どんどんどんどん話をしていたら、
『いい香りだけでなくても、いいんじゃない』とか。
『時間と場所で香りって、ありますよね』とか。
そういうのをもっと広げて行けたらというのが、次のイメージです。」


現在、持ち上がっている企画としては、
・9月に京都限定の香る時計
・来年は虫除けリングの代わりになる、香る腕時計
などを考えているそう。

海外では、デング熱やジカウイルス感染症熱、マラリアなど、蚊による感染症が大きな問題となっており、とくに熱帯地域では、冬がないために、1年中、蚊がいる。
ナチュラルな成分の香りを使って、虫を寄せ付けないようにするのだそう。

マルゼキは今後、いろいろな香り企画によって、香る腕時計を広めていくそう。
またどういう製品になるかは明かしてくれなかったが、五感を刺激する腕時計も模索しているという。

香 -KAORU- ウォッチ


執筆:ITライフハック 関口哲司
撮影:2106bpm、関口哲司