灘の酒もサポーティングインダストリーが大切
新工場は既存工場の浜蔵(神戸市東灘区)に隣接する。延べ床面積約1320平方メートルの2階建てで、1階は旋盤、集塵機を導入して甑(こしき)やたるを製造する。
10年前、暖気(だき)だる造りの職人が日本で1人しかいないことに危機感を覚え、自社でその職人を雇用。社員2人を職人の部下にし木工部を置いた。同社は500年続く酒蔵だが「酒の味や作り方は一度変えると二度と戻らない。レシピや設計図では引き継げない味わいや深みなどは、やり続けないと続かない」(白樫社長)との考えに従い、木製道具の工場新設に踏み切った。
酒造り工程で酵母を培養させるために使う「暖気だる」など木製道具の製造業者が減り、ステンレス製のもので代用する企業が多い。木製道具での酒造りにこだわる同社は、約400個の暖気だるを所有し、毎年メンテナンスが必要という。新工場ではこれに加え、年間で大おけ3個、暖気だる70個の生産を想定している。
日刊工業新聞2017年12月26日
白樫政孝社長「流行追わず、味守る」
創業500年以上を誇る歴史ある酒蔵を継いだ。「歴史・味・造り方・考え方・顧客の声など、私たちにしか伝えられないものを、後世に伝えるため力を尽くす」と決意を語る。
主力商品の『剣菱』は「しっかり寝かせた落ちついた味わい」が特徴。甘み・辛み・酸味などが複雑に絡み合いどんな料理もおいしくさせる。宣伝・営業はしない。
「流行は追わず、顧客からいただいたお代で変わらぬ味を守り、少しぜいたくなお酒を造る」家訓を最重視。そのため機械化に頼りきらず、道具を自社で手作りしているほどのこだわりだ。
休日は子どもを連れ遊園地や旅行に出かける。多忙で時間がとれないが、海岸で好きな音楽を聴きつつ、お酒と共に沈む夕日をゆっくり眺めたいと願う。
(神戸・大原佑美子)
【略歴】しらかし・まさたか 99年(平11)甲南大経営卒、同年剣菱酒造入社。10年専務。兵庫県出身、40歳。7月12日就任。(神戸市東灘区御影本町3の12の5)
日刊工業新聞2017年7月12日
