去年の『エアリズム』は効かない? 機能低下を招く“致命的洗濯NG”と正しい買い替え時

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「数年で劣化」は嘘? 本当の寿命

今年(’26年)の6月は数十年ぶりの涼しさとなり、アパレル各社は夏物衣料の不振にあえいでいた。しかし7月の梅雨明けと同時に猛暑が到来すると、状況は一変。夏物衣料が飛ぶように売れ始めている。

汗が止まらない猛暑日が到来すると重宝するのが、「吸水速乾衣料」である。世間一般では『エアリズム』に代表される夏物肌着のイメージが強いが、ユニクロやジーユーを筆頭として、各社では吸水速乾素材のアウター用Tシャツ・ポロシャツ類が定番化している。

夏物衣料の実需期が到来したことで、最近ウェブ上には〈エアリズムの耐用年数は?〉という内容の記事やSNSでのコメントが散見されるようになった。この手の記事は揃って〈何年間か着用したエアリズムなどの吸水速乾素材服の機能性が落ちたと感じる〉と主張しているのである。果たして、その原因はなんだろうか。

エアリズムを含むほとんどの吸水速乾素材服の機能を支えているのは、ポリエステル素材である。ほぼすべての吸水速乾素材服はポリエステルがかなり高い比率で配合されているし、ポリエステル100%のものも決して珍しくない。

ポリエステルという化学合成繊維は、綿や麻などの天然繊維に比べると相当に耐久性が高く劣化しにくい特性を持つ。そのため、洗濯を繰り返しても吸水速乾機能が目に見えて低下することは考えにくいのである。

ちなみに、今夏販売されているエアリズムのメンズクルーネック半袖Tシャツはポリエステル88%・ポリウレタン12%という生地組成となっている(ライトグレーだけはポリエステル89%・ポリウレタン11%)。この90%近くを占めるポリエステルは、素材の特性上、数年の家庭洗濯で吸水速乾性が大きく低下するとは考えにくい。

個人的な話になって恐縮だが、筆者は汗っかきなので5年くらい前から真夏にはポリエステル主成分の吸水速乾素材服しか着用していない。5年間、自宅の洗濯機で洗濯を繰り返しているが、吸水速乾機能が低下したと感じられる服は1枚もないのである。

では、原因はポリウレタンなのだろうか。ポリウレタンの機能はストレッチ性なので、吸水速乾機能にはあまり関係がない。ただ、ポリウレタンは大雑把に3〜15年くらいの期間で断裂してしまうため、ストレッチ性がなくなることはありえる。だが、ストレッチ性があることと吸水速乾機能があることは、全く何の関係もないのだ。

そこで、素材関係に強い複数の繊維業界人に取材を敢行。その結果、返ってきた答えは「柔軟剤を大量に使用して洗濯することで吸水性が失われることが珍しくない」というものだった。

多くの人は、柔軟剤が繊維の内側を柔らかくして生地をソフトにすると考えていると思われるが、実際は、繊維の表面に膜のようなものを作ることで摩擦を減らすという働きをする。いわば、繊維の表面をコーティングするという作用に近い。

そのため、柔軟剤を使うと綿100%のタオルの吸水力が低下することが往々にしてある。柔軟剤によってタオルの手触りは柔らかくなる一方で、吸水力が落ちているということはあまり知られていないのだ。綿・麻などの植物性天然繊維に柔軟剤を使うことは、吸水性を損なう確率が高いということを認識する必要がある。

ポリエステルの吸水速乾素材は、綿や麻などの植物性天然繊維とは原理が異なる。綿や麻は糸そのものに吸水力がある。一方、ポリエステル糸には吸水性が元来ない。吸水性のないポリエステル糸を生地にすることで、毛細管現象で生地全体が吸水するようになる。生地全体で吸水はするが、ポリエステル糸自体に吸水性はないから糸の水が浸み込むことがない。そのため、綿や麻に比べると速く乾燥することになるのだ。

吸水の原理自体は異なるが、綿や麻と同様に柔軟剤を使用することで吸水性が低下する確率は決して低くない。近年、香りの良さやふんわり感を求めて柔軟剤を多用する人が増えているが、実はこれが機能低下の最大の要因である。水と洗濯洗剤だけで洗濯すれば、ポリエステル吸水速乾素材の吸水速乾機能は滅多に低下しない。

近年、柔軟剤をことさら多く使用しすぎたため、においがきつすぎて『香害』を巻き起こしている事例が見かけられるが、この場合、衣服の吸水力も著しく低下しているのではないかと思われる。適量以上の柔軟剤を使用するのは、デメリットしかないことに留意が必要だろう。

もし「最近、エアリズムの汗の吸いが悪くなった」と感じているなら、一度柔軟剤の使用をやめ、数回通常の水と洗剤だけで洗濯を繰り返してみてほしい。繊維を覆っていた柔軟剤のコーティングが落ちることで、ある程度吸水速乾機能が復活するはずだ。

2年前後で防臭機能は失われる

柔軟剤のほかに、気になるのが「後加工(あとかこう)」による機能性の付与である。

糸を作る際にその内部に機能を練り込む場合と、生地が出来上がってからその上から機能性加工を施す場合の2種類がある。生地が出来上がってから加工するので「後加工」と呼ぶ。

この後加工は、薬剤などを表面に付着させているだけなので、洗濯を繰り返すと必ずそれが落ちる。洗濯で落ちるといっても数回洗った程度では国内で流通している商品は落ちないが、だいたい30〜50回の洗濯で落ちる物が多い。100回耐久する後加工商品はかなり少ないのが現実だ。

今夏のメンズのエアリズムの各種品番には、吸水速乾のほか「接触冷感」「抗菌・防臭」機能が付与されている。これに対してユニクロからはどのような詳細な加工法を採用しているか発表されていないので推測するしかないが、「抗菌・防臭」機能は、業界的に後加工で付与されるケースが非常に多い。

そのため、洗濯を繰り返すとその機能が剥がれ落ちてしまうと考えられる。では、洗濯は何回まで耐久性があるのか。これも発表されていないので不明だが、業界の平均的な水準として30〜50回と考えておくのが適正ではないかと思われる。恐らく100回洗濯の耐久性はないだろう。

仮に50回だと仮定し、エアリズムを5枚持っていて毎日着替えるとすると、1ヵ月で1枚当たり4〜5回洗濯することになる。そうすると10ヵ月前後、抗菌・防臭機能が耐久することに。エアリズムを5月から10月末まで着用すると仮定すると、2年前後で抗菌・防臭機能は失われる計算になる。

接触冷感についても同様で、後加工で50回洗濯耐久だと仮定する(後加工ではない接触冷感素材も業界には存在するが)と、2年前後で効果が感じられなくなる。

先述したように、水と洗濯洗剤だけでの洗濯なら吸水速乾機能はほぼ低下しないので5年くらいは余裕で使い続けられるだろう。しかし、抗菌・防臭や接触冷感機能を重視するなら、2〜3年で効果が消えると考えられるので、その辺りが買い替え時といえる。吸水速乾機能さえ残っていればいいという人なら、5年以上は使い続けられるが、いずれにせよ柔軟剤の使用は極力避けたほうがいいだろう。

取材・文:南 充浩

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。