寝付きが悪いのは年齢のせいではない…脳内科医が勧める「お金をかけずに睡眠の質を高める」日中の習慣
※本稿は、加藤俊徳『すぐに実践したくなる すごく使える脳科学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■スマホ依存が睡眠の質を下げる
今やスマホは、仕事でもプライベートでも、私たちの生活全般にわたってなくてはならないものになりました。スマホは暮らしを便利にしてくれる一方で、使い方次第では私たちの脳の力を低下させることにもなるので注意が必要です。
脳の力を低下させる大きな要因のひとつが「スマホのダラダラ見」。
特にこれといって目的もないのに、ネットサーフィンをしたりSNSや動画サイトを見続けてしまう。それで気がつけば1〜2時間があっという間に過ぎてしまうことはありませんか?
スマホを見るのがクセになっている人は、「新しい情報に触れると脳が楽しいと感じる」という状態になってしまっています。次第にその刺激に依存するようになり、「もっともっと」が止まらなくなっているのです。アルコールやギャンブルの依存とメカニズムは同じです。
寝る間際までスマホを手放せない人は、それによって確実に睡眠時間が削られているといえるでしょう。
2020年、トルコのカフカス大学のファディメ・カヤ氏らは、スマホを所有する804名(平均年齢20.93歳)の大学生を調査したところ、全員が平均で1日7.85時間使用していることがわかりました。そして、大学生におけるスマホ使用と、睡眠の質の低下、抑うつ症状との間には関連が認められたと報告しています。
■寝る2時間前からスマホには触れない
また、2023年に発表された、複数の研究を整理した分析によると、思春期や若い成人において、ソーシャルメディアの使いすぎは不安や抑うつ、自己肯定感の低下などの心の不調と関連することが多いと報告されています。
一方で、使い方次第では人とのつながりを支える側面もあり、使用する時間帯を適切に選び、使用の量と内容のバランスが重要であることが示唆されています。
ここ数年、特にヨーロッパを中心に未成年者(15〜16歳未満)のSNS利用の規制が強化されているのは、その表れです。

手の中にスマホがあれば当然見てしまいますね。だから睡眠時間を確保したければ、寝る2時間前くらいからはスマホの電源をオフにしてしまうのがベスト。それが難しければ、せめてスマホをベッドに持ち込まないことを徹底しましょう。充電はリビング等の別の部屋でするようにして、スマホと物理的な距離をとることから始めてみてほしいと思います。
「何か情報を入れながら寝たい」というのであれば、私がおすすめするのはラジオです。
人の話などを聞き取るのは聴覚系脳番地の仕事ですが、意識を耳に集中させてラジオの音声に聞き入ることは、聴覚系トレーニングになります。
ベッドに入ったらまず部屋を真っ暗にして視覚情報を遮断し、視覚系脳番地を休ませましょう。そのうえで横になり、耳から入ってくる情報に集中するのです。2時間後くらいにオフになるタイマーをセットしておけば、夜中にラジオの音で目が覚めることもありません。
仕事ができる人というのは聞き上手な人が多いもの。聞き上手になるためのトレーニングとして、寝る前のラジオ習慣、ぜひ取り入れてみませんか。
■寝付きが悪くなるのは年齢のせいではない
疲れているのによく眠れない、若いころよりもぐっすり眠った感覚が得られない……中高年になるほど、眠りの悩みは増えてきます。
寝る前のアルコールや喫煙などの生活習慣が原因のこともあれば、鼻詰まりや肥満、睡眠時無呼吸症候群などの健康上の理由も考えられます。
でも、それらのどれでもなく、なぜぐっすり眠れないのか心当たりがない人は、脳の使い方を疑ってみてもいいかもしれません。
特に、ベッドに入るといろいろなことが頭に浮かんでしまう、頭が冴えて眠れなくなることが週2回以上ある、といった人は、脳番地の使い方が眠りの質を下げている原因である可能性が高いです。
■脳全体を疲れさせると眠りが深くなる
昼間に体をたくさん動かした日は、夜早い時間に眠くなったり、ふとんに入るとあっという間に眠りに落ちますね。これは体が疲れているからです。

実は脳でも同じことが起こっています。
昼間たくさん使った脳番地は、夜には疲れているので眠りたい。でも反対に、使われなかった脳番地は疲れないので眠くなりません。
アメリカのウィスコンシン大学のフーバー氏らが2006年に発表した実験を紹介しましょう。
日中に、ある被験者の片方の手をまったく動かない状態にし、夜間に脳の働きを観察すると、動かせなかった手を支配している脳の部位では、徐波睡眠(ノンレム睡眠の中で最も深い睡眠)の出現が低下しました。つまり、使われなかった脳の部位では深い眠りがとれていないことを示しています。
一部でもきちんと眠れていない脳の部分があると、脳全体の眠りの質は下がってしまいます。だから起きているうちに、使う頻度が少ない脳番地もしっかり使うことが、質のいい睡眠のためには必要なのです。
■普段とは違うことをしてみるだけでいい
とはいえ、起きている時間が長いビジネスパーソンは、職種や役割によって使う脳番地がどうしても限られてしまうもの。また、個々の性格や持って生まれた脳の特性によっても、よく使う脳番地とあまり使われない脳番地という偏りは出てきます。
ですから、「慣れていないこと」「いつもと違うこと」をするというのが、ほかの脳番地を刺激するいちばんの近道です。
たとえばこんなことです。
・仕事で同じ人とばかり接している人→立ち寄ったお店の店員さんに話しかけてみる
・クラシックばかり聴いている人→Jポップのヒットチャートをチェックしてみる
・接客で不特定多数の人と話している人→1人静かに過ごす時間を持つ
・オンライン打ち合わせが多い人→可能な限り対面で打ち合わせをする
どうでしょうか?
「こんな簡単なことで不眠が改善されるわけない」と思うかもしれません。
私の患者さんの中で不眠に悩んでいる人にも、変化やイレギュラーを嫌って行動や生活習慣を変えようとしない人が多くいます。その結果、不眠が改善されず、仕事や私生活に影響が出ている人が少なくありません。
どれもお金をかけずに、あなたの意識ひとつで変えられることばかり。まずはやってみて、それから判断しても遅くないと思いますよ。
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加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医、加藤プラチナクリニック院長
新潟県生まれ。医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、助詞強調おんどく法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、強み弱みを診断し、これまでに1万人以上を治療。著書には、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)などがある。※「脳番地」(登録第5056139 /第5264859)は脳の学校(登録4979714)の登録商標です。
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(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)
