川端康成は見抜いていた? この世から「ロマンス詐欺」はなくならない(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】
レディコミの女王・井出智香恵さんは被害7500万円…「国際ロマンス詐欺は被害者側にも被害を拡大させる理由がある」
私が週刊現代編集長だった1990年代初めに「ヘアヌード」という言葉を生み出し、週刊誌バカ売れ時代に寄与した。
私は「人間の最後に残る欲望は食欲と性欲」だと思っている。時代が変わっても、この2つのテーマは永遠に不滅である。
「女は灰になるまで女」という言葉があるが、男も同じである。激しい目合(まぐわい)ができなくなっても、いくつになっても性欲が全くなくなるということはない。
昨今、女性のための風俗店が活況を呈しているとFRIDAY(8月7・14日号)が報じている。女性にサービスする男をセラピストというらしい。性的なサービスだけではなく、「銀座の店にセラピストを呼び出し、高級料理を一緒に食べてもらう」という使い方をする女性客も多いという。
私の欲望は、川端康成の「眠れる美女」のように、全裸の若い女性と閨(ねや)を共にし、一夜を過ごす“醜い老人”になってみたいというものだ。女性は眠っていないほうがいい。
「眠れる──」が書かれたのは1960年代初め、主人公の江口老人は67歳。半世紀以上前だから、今でいえば私のような後期高齢者だろう。
この“願望”を実現したいが、どうしたらいいのだろう? マッチングアプリで「私と添い寝をしてくれる若い女性求む」と投稿すればいいのか? だが、そういう“奇特な女性”が現れてホテルへ入った途端、相棒の男に恐喝される「美人局」が怖いな〜。
私は、こんな「白日夢」を妄想しながら、日がな惰眠を貪っている。
最近、ロマンス詐欺という言葉をよく聞く。2000年代初めから、外国ではネットを使った恋愛詐欺が頻発し、「Romance Scam」といった。その直訳。
香川大学名誉教授で法学者の高倉良一(71)が、フェイスブックで知り合った「愛子」なる女性にだまされ、925万円も失った経緯を書いた本が売れている。出版元は元講談社で私と同期・古屋信吾の「さくら舎」。ご同慶の至りである。
高倉名誉教授は50代後半で離婚し、子供らとも面会できないまま過ごしてきたという。その間、風俗や恋愛にも興味を持たず教壇に立つことだけが生き甲斐だった。
「愛子」は中国在住の女性(37)。「あなたは偉大だ」という言葉で近づき、高倉の趣味や将来の夢を聞き出し、LINEでのやりとりに移り、自分が婚約破棄された身の上話を語り、「高倉さん」から「兄さん」へと呼び名を変えた。その間わずか10日ほど。
愛子は「優れた叔父から投資を勉強中で500ドルの利益を得た」と話してきた。
彼女の勧めで、高倉は“叔父”と名乗る人物とLINEのやりとりを始め、投資用アプリ(実際は偽の収益を示す偽装アプリ)をインストール。5月20日にまずは5万円振り込んだ。
6日後には1万2050ドル(約188万円)の収益が出たと“愛子から知らされ”、さらにカード会社から80万円借りて入金。親友に「給湯器が壊れて」などと嘘をついて借りた金を含め925万円を「ドブ」に捨てたのだ。
週刊ポスト(7月24・31日号)で高倉はこう語っている。
「私は自分が賢い人間だと思っていました。その自信を疑ったこともない。だから銀行の窓口で350万円もの大金を入金する際、窓口の女性から『詐欺ではないか』と念押しされた際も『そんなことがあるわけない』とさえ思った」
高倉はまだ70代はじめ。多くの年寄りの心の底にある、まだ俺は何かできるはずだ、生ける屍にはならない、女だって抱けるという“欲望”に、詐欺女は手を突っ込み、甘言を弄し、いとも簡単に虜にしていった。
7月22日、テニスの全仏オープンで優勝経験のある平木理化(54)が、ロマンス詐欺に関与した疑いで逮捕された。
大正、昭和初期の活弁士・生駒雷遊は「春や春、春南方のロ〜マンス」といって一世を風靡した。令和のロマンスは薄汚い。 (文中敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
