ミャンマー親軍政権、EV拡大に「強権」 親族や中国恩恵、電力と充電スタンドは不足

ミャンマー親軍政権が電気自動車(EV)の普及拡大へ新たな方針を打ち出した。古い車や修理が難しい車を廃車にする所有者にEV輸入を許可する。ミャンマーでは中国製EVが攻勢をかけ、国軍総司令官から大統領になったミンアウンフライン氏の長男や長女もEV輸入に携わる。「友好国中国と身内に利益誘導するための強権発動」との見方が支配的だ。(共同通信ヤンゴン支局=原龍太郎)
「老朽化し燃費も悪い車両をEVと交換するための輸入を許可」。親軍政権は5月29日付の国営紙で公表した。(1)製造から20年以上経過した車(2)修理不能で安全に運転できない車(3)20年未満でも乗り換えを希望し廃車処分―の3条件で、所有者にEVの輸入を許可するという内容だ。
親軍政権は「燃料の浪費を抑制し、古い車の事故を減らし、過剰な排ガスによる環境被害を最小限に抑える」と意義を強調する。
地元メディアによると、2023年に30社だったEV輸入業者が2024年には81社に増えた。ミンアウンフライン氏の長男アウンピエゾン氏は国内2位、長女キンティリテットモン氏は3位のEV輸入業者を経営。長男は中国の自動車大手「比亜迪(BYD)」の輸入を独占し、長女は上海汽車集団傘下「MG」や新興EVメーカー「零☆(足ヘンに包の己が巳)汽車(リープモーター)」の輸入に携わっている。
ミャンマーを走る自動車は大半が日本製中古車だが、2021年のクーデターで成立した軍事政権は輸入制限を強化。供給が不足し価格が高騰した。
運輸・通信省のまとめによると4輪EVの登録数は2026年4月時点で約1万4500台の一方、ガソリンやディーゼルを含むその他の車両は約120万台に上る。製造から20年以上たった自家用車は約20万台と推測される。
2022年に3万ドル(約490万円)で2003年モデルのトヨタ自動車製「アルファード」を購入した男性運転手(46)は今もローンが残る。親軍政権のEV普及拡大方針について「強制的に廃車にされたら仕事を続けられない。ミンアウンフライン氏は職権を乱用し親族に便宜を図りたいだけだ」と憤る。
親軍政権のEV促進の背景には、中東情勢を巡る世界的な燃料危機や外貨不足で燃料の輸入を抑制したい事情も透ける。ミャンマーは電力不足が深刻な上、充電スタンドも不足している。EV普及には高い障壁があるのが現状で、今回の方針が強制力を伴うのかどうかは不透明なままだ。






