1対2のトレードだった

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青天の霹靂

 プロ野球は前半戦を終え、短い休養期間を経て後半戦に向かう。DeNAファンにとって前半戦と言うよりもここ数年で最もショッキングだった出来事の一つが、今年5月の山本祐大捕手(27)とソフトバンクの尾形崇斗(しゅうと)投手(26)、井上朋也内野手(23)の1対の2のトレードではなかったか。シーズン中の正捕手放出はいかにして行われたのか、お伝えする。

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 トレードは少なくとも当事者にとっては青天の霹靂(へきれき)だったようだ。DeNAの山本は次のように語っていた。

「トレードの話を急に聞いて驚きがあって、いろいろな感情が湧いてきているというのが正直な気持ちです。もっと横浜スタジアムで活躍する姿をファンの皆さんに見せたかった。今年こそリーグ優勝すると覚悟して始まったシーズン、力及ばず、自分の力でそれが実現できないことは悔しいです」
「ここまで自分を成長させてくれた、球団、コーチ、スタッフの皆さんには本当に感謝しています。特に佐野さん、東さん、(牧)秀悟の存在は大きく共に切磋琢磨して戦ってこられたことには感謝しかありません」

1対2のトレードだった

先発と将来の主軸

 問題は正捕手とトレード相手の二人が釣り合うか、だろう。

 トレード相手の尾形は2017年の育成ドラフト1位で今年9年目。2020年に支配下選手登録された。「イニングを食える中継ぎ」として今季トレード時までに10試合に起用され、0勝2敗、防御率3.00の成績だった。井上は2020年のドラフト1位で指名された6年目。今季は1軍の出番ナシだった。 

 DeNAの社長兼チーム統括本部長の木村洋太氏は、「軸になる先発投手と将来の主軸候補としての右の大砲という補強ポイントに合致する2人の選手の強みを評価させていただきました。尾形選手は、150キロ台後半を連発する力強いストレートを持ち味に高い奪三振能力を有する投手です。井上選手は逆方向にも長打が打てる高い技術を持つ若い右の強打者として、近い将来ベイスターズの中軸を担える選手です。シーズン中のタイミングでの決断となりましたが今シーズンの優勝に向けて大きな戦力補強になったと確信しております」などと獲得の理由について触れた。

ソフトバンクからのアプローチ説

 トレードの背景をめぐってはソフトバンクからのアプローチ説が取りざたされていた。

「ソフトバンクは2024年オフに正捕手の甲斐拓也がFAで巨人に移籍しました。昨シーズンは海野隆司がメインで起用されましたが物足りない成績で、補強の優先順位が高かったのは間違いありません」

 と、スポーツ紙デスク。

「昨シーズンオフにソフトバンク側から打診があったとも言われており、事実かは判然としません。が、その可能性は高そうです。打診を真剣にDeNAが受け取った背景には、山本が2027年オフにFA権を取得する可能性が高いという点があったと思います」(同)

 NPB各球団がFA権取得の時期を計算したうえで、各選手に水面下でアプローチしているのは公然の秘密だ。

「所属球団側も当該選手がFA権を取得する前にトレードできるならFAでの放出と比べて有利な条件で代替選手を獲得できますから、渡りに船ということになりますね」(同)

急転直下

 仮に昨シーズンオフにトレード話があったとして、まとまらなかったのはどういった理由なのか。

「DeNAは相川亮二監督に代わったばかりで、正捕手放出に躊躇した可能性はあります。それが急転したのだとしたらチームの戦力事情が影響しているのでしょう」(同)

 ローテーションの一員として頼みとしたコックスとデュプランティエの両外国人投手にメドが立たないとの判断せざるを得なかったのは事実だろう。その後に両投手は退団することになるわけだが、ともあれ異例の事態に見舞われて今度はDeNA側がトレードに積極的になったと見ることもできる。

「ローテで回れそうな投手をなるべく早くほしいというのがDeNAの希望だったはずです。“なるべく早く”という条件がなければDeNAにもう少し有利な選択肢があったかもしれませんが。その時点ではもう球団フロントは4年目のドラフト1位・松尾汐恩捕手を育てるとの方向に振り切っていて、相川監督もその方針に異論はなかった」(同)

山本はFAで出るだろう

「ソフトバンクにとってトレードに関する懸念として、山本と条件面でどう折り合えるかということもあったでしょう。トレードを成立させても2027年オフのFA権取得後に出ていかれてはマズい。それも視野に入れた契約を行ったと見ています」(同)

 過去にはこんなことがあった。1992年オフ、オリックス・松永浩美内野手と阪神・野田浩司投手の交換トレードが行われた。移籍1年目の松永はケガの影響もあって不本意なシーズンを送ったのだが、93年に初めて導入されたFAで第1号としてダイエー(現ソフトバンク)に移る選択をした。阪神はたった1年で逃げられた格好である。一方の野田は同年、17勝(うち完封4)を挙げて最多勝に輝き、明暗を分けた。
こうした前例は当然、当事者であったソフトバンクは百も承知。ソフトバンクは山本をFA権獲得後も引き留められる契約を結んだ可能性が極めて高いというわけだ。

「DeNAとしては山本がFAで恐らく出ていくだろうとの算段をしていたとされています。だから山本を交換要員にできたのでしょう」(同)

 尾形は8試合に先発して2勝2敗、防御率3.32。井上はヒットなし。一方の山本はトレード直後に疲労骨折して18試合の出場にとどまるが、打率.316、長打率.456、出塁率.381を記録(7月30日時点)。損得を判断するのはまだ早い段階だが、両チーム関係者から世紀の電撃トレードは現時点でウィン・ウィンとされているという。

デイリー新潮編集部