コーヒーを飲むと“あの臓器”の血流が減る? 気になる健康効果と適正量【医師解説】
朝の目覚めや仕事の合間など、毎日の習慣としてコーヒーを楽しんでいる人も多いのではないでしょうか。近年では、コーヒーに含まれる成分(カフェインなど)が健康に与える影響について、さまざまな研究が進められています。今回、杏林大学は、コーヒーを飲んだ後に腸や肝臓周辺の血流が一時的に減少することを明らかにしました。この研究結果が示す意味や、コーヒーとの上手な付き合い方について、中路先生に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
杏林大学の研究グループらが発表した内容を教えてください。
中路先生
コーヒーには2型糖尿病や心血管疾患、脂肪肝の予防・改善に役立つ可能性が報告されています。この要因には、カフェイン摂取により上腸間膜動脈などを通した肝臓への血流が減少する可能性が推察されていますが、成人におけるその仕組みは十分には分かっていません。そこで杏林大学の研究グループらは、成人がコーヒーを飲むことで腹部の血流がどのように変化するのかを調べました。本研究では、健康な若い男性(平均年齢約21歳)32人を対象に、空腹時にコーヒーまたは水を飲んでもらい、その後の血流の変化を超音波検査で測定しました。その結果、コーヒーを飲んでから30分後には、腸へ血液を送る上腸間膜動脈の血流量と、腸から肝臓へ血液を運ぶ門脈の血流量がいずれも有意に減少していました。
この変化は90分後も続いており、特に普段あまりカフェインを摂取しない人で顕著にみられました。一方、水を飲んだ場合には、血流の変化はほとんど確認されませんでした。
研究グループは、コーヒーを飲むことで成人でも腸や肝臓へ向かう血流が一時的に減少することが示されたとしています。この血流の変化がコーヒーの健康効果にどのように関わるのかについては、今後さらに詳しい研究が期待されます。
コーヒーの健康効果とは?
編集部
コーヒーの健康効果について教えてください。
中路先生
コーヒーには、カフェインやポリフェノールなど、健康維持に役立つ成分が含まれています。カフェインには、脳を刺激して眠気を覚まし、集中力を高める覚醒作用があります。また、利尿作用によって体内の老廃物の排出を促したり、自律神経の働きを高めたりする効果も期待されています。さらに、コーヒーには赤ワインに匹敵する量のポリフェノールが含まれており、ポリフェノールの代表的な成分であるクロロゲン酸類には、老化や生活習慣病の要因となる「活性酸素」から体を守る抗酸化作用があります。この作用により、動脈硬化などの生活習慣病予防や、紫外線による肌へのダメージを抑える効果も注目されています。
ただし、カフェインの摂取量には注意が必要です。自分の体調に合わせて適量を楽しみ、健康的な習慣としてコーヒーを取り入れましょう。
内容への受け止めは?
編集部
杏林大学の研究グループらが発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
コーヒーと生活習慣病の関わりについては、これまで大規模な疫学調査を通じて多くの知見が得られてきました。しかし、「実際に体の中で何が起きているのか」という部分については、まだ十分に解明されていないのが現状と考えます。その意味で今回の研究は、「腹部の血流」という具体的な生理反応に注目し、コーヒーが体に及ぼす影響を目に見えるかたちで示した点に価値があると感じています。とりわけ、被験者に負担をかけない超音波検査を用いてリアルタイムに血流の動きを追跡したという手法は、身近な飲み物が循環器系に与える影響を探るうえで、今後の研究の土台となりうるものと考えます。
「腸や肝臓への血流が一時的に減った」ということのみに注目すると、体に悪い変化が起きているのではないかと心配する人もいるかもしれません。ただ、この現象はあくまで飲用直後にみられる短時間の生理的な反応であり、体を傷めるような変化とは考えにくいものです。むしろ、コーヒーに含まれるカフェインやクロロゲン酸といった成分が、血管や自律神経に働きかけたことで生じた、体としてごく自然な応答ととらえるのが妥当だと思われます。加えて、日ごろカフェインをあまり口にしない人ほど反応が強く現れたという点も見逃せません。これは、普段の摂取習慣によって体の反応の出方が変わることを物語っており、コーヒーとの付き合い方に個人差があることを改めて実感させてくれる結果です。
もっとも、今回の被験者は健康な若い男性32人に限られていたので、この結果を女性や高齢の人、あるいは糖尿病や脂肪肝といった生活習慣病を抱えている人にそのまま当てはめることはできません。
また、飲用直後に生じる血流の一時的な変化が、長い目で見たときの健康効果とどう結びついていくのかという道筋についても、これから丁寧に解き明かしていく必要があります。こうした研究をきっかけに「コーヒーは体によいか悪いか」という単純な二択で語るのではなく、「誰が」「どのようなタイミングで」「どのくらいの量を飲んだときに」「どんな反応が起きるのか」という、より立体的な視点でコーヒーを見つめ直していくことが求められる時代に入ったと感じています。今回の結果に一喜一憂されるのではなく、ご自身の体調や日々のリズムに耳を傾けながらコーヒータイムを楽しんでください。
編集部まとめ
コーヒーには、カフェインやポリフェノールなど、健康維持に役立つ成分が含まれています。今回の研究では、コーヒーを飲むことで腸や肝臓につながる血流が変化することが分かりました。健康効果を期待して飲み過ぎるのではなく、自分の体調に合った量を取り入れることが大切です。毎日の習慣として楽しみながら健康管理に役立てましょう。

