ナチュラルボーン食いしん坊・稲田俊輔が語るエリックサウス誕生秘話
クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」。食や料理に熱い思いを持ち活躍するゲストを迎え、さまざまな話を語ります。クックパッド初代編集長の小竹貴子がパーソナリティを務めます。第80回目・81回目のゲストは、エリックサウス総料理長/料理人/文筆家の稲田俊輔さんです。
南インド料理専門店「エリックサウス」の総料理長として知られる稲田俊輔さん。レシピ本からエッセイ、小説まで手がける料理人兼文筆家で、「自称ナチュラルボーン食いしん坊」という異名を持ちます。クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」で、稲田さんが自身の原点を語ってくれました。
京大卒・元サラリーマンが「流れに乗るように」辿り着いたエリックサウス

京都大学経済学部に現役合格。数学だけが好きで、「正解がはっきりある」からパズルのように没頭できたといいます。大学時代はバンドに打ち込み、イングリッシュパブをホームにしながら日本料理やイタリアンの店でも働きました。
卒業後は大手飲料メーカーに就職しましたが、目的は酒を売ることではありませんでした。飲食店を企画・立ち上げ・運営する部署への異動を最初からお願いしていたのです。しかし、いざその道が開けようとしたとき、自分の気持ちに気づいたと言います。
「自分は別に企画屋がやりたいわけでも、管理がしたいわけでもなくて。自分の手で料理を作って、それをお客さんのところに運んで、嬉しそうに食べてるところを見る、みたいな。自分がやりたいのはそれであって、なんかデスクの上でやる仕事じゃないなと思って、だったらもう、料理人になるのが一番手っ取り早いじゃん、ということで」
27歳で脱サラ。その後、1歳年上の友人の居酒屋を「ちょっと手伝うつもり」で入ったら居着いてしまい、気づいたら料理人になっていました。和食屋のはずがタイ料理もイタリアンも出すカオスな店でしたが、そこが稲田さんの出発点となります。
その後、川崎にあった「エリックカレー」を引き継いでほしいという話が舞い込みます。シェフが去り残されたのは看板だけ。「好き勝手やっていい」という条件で、実質ゼロからの立ち上げでした。
「看板を替えるのも面倒だし、お金もかかるし。なかなかいい名前じゃん、みたいな感じで、最初はそのままエリックカレーになりました」
「エリック」の由来については、前のシェフにカレーの作り方を教えた外国人の名前ではないかという噂があります。パキスタン人説とネパール人説の2つがあり、どちらかはっきりしません。
「じゃあ今度は南インドに特化したお店にしようぜっていうことで、強引にサウスってくっつけたっていう。だから、僕もエリックサウスのエリックの由来は知りません(笑)」
おそうざい十二カ月での「一汁三菜」という提案

4月に出版した最新刊『稲田俊輔のおそうざい十二カ月 旬を味わう一汁三菜』(暮しの手帖社)の帯には「今、なぜ一汁三菜なのか」という言葉があります。1品作るだけでも大変な時代に、なぜ3品なのでしょうか。
稲田さんが提唱するのは「ミニマル料理」という概念です。最小限の食材と最小限の手間で最高の美味しさを目指す料理を、一汁三菜の形に当てはめていく。それが稲田さんの答えです。
「1品というのは、あなたがイメージしているそのオールインワンのメインディッシュではなくて、あくまでミニマル料理。ミニマル料理を作るのは、立派なオールインワン料理を作るよりも、かえって実は楽なんですよ」
高度経済成長期以降の家庭料理は、栄養も見た目もひとつの皿で完結させる「オールインワン化」が進んできたといいます。それに疲れた今、昭和以前のシンプルな食卓に戻ることが、実は一番楽な道だというのです。素材がシンプルになると、誰でも食材にピントを合わせやすくなる。それが稲田さんの考える家庭料理の本来の姿なのです。
かつてクックパッドを批判していた男が、有料登録した理由

稲田さんは実は、かつてクックパッドに批判的だったといいます。だからこそ、この場でその話をするのは「職員室に呼び出されたぐらいの緊張感がある」と前置きしながら、こう打ち明けました。
「みんなクックパッドじゃないレシピサイトを見た方がいいんじゃないですか、みたいなことをずっと言ってたんです」
プロが作った精度の高いレシピサイトがいくらでもある中で、あえて玉石混交のクックパッドを見る必要があるのか、と感じていたそうです。しかし、家庭料理をテーマにした連載を書き始めたとき、転機が訪れます。家庭料理のリアルが一番よく見えるのはクックパッドだと気づいた稲田さんは、その日から有料登録しました。
そしてハンバーグや肉じゃがと検索しながら読み込むうちに、あることに気づきます。検索窓にうっすらと表示されているプレースホルダーが「作りたい料理」ではなく「使いたい食材」だったのです。
「家庭料理の真の主役は、名もなき料理だろうと。名もなき煮込みである、名もなきスープである、みたいな世界なんですよね」
素材で検索してヒットするレシピを見ていくと、そのほとんどが子どもが食べてくれそうな料理でした。プロのレシピサイトでは拾えない、家庭料理のリアルがそこにあったのです。
「家庭料理は孤独な戦いなんですよ。クックパッドって、その孤独な戦いをしてる人たちが繋がれるハブで、しかもそこを覗くと『この程度で十分』っていう許しがいっぱい出てくる。ようやく自分はクックパッドが何かを理解することができたと。今まで全くわかってなかったんです」
ご視聴はこちらから

🎵Spotify
https://hubs.li/Q02qmsmm0
🎵Amazon Music
https://hubs.li/Q02qmslg0
🎵Apple Podcast
http://hubs.li/Q02qmztw0
【ゲスト】
第80回・第81回(6月5日・12日配信) 稲田俊輔さん

料理人・文筆家/南インド料理専門店エリックサウスでは総料理長を務める他、様々なジャンルの飲食店をプロデュース。レシピ本を始め、エッセイ、小説など食にまつわる著作も多数。近著は『稲田俊輔のおそうざい十二ヶ月』(暮しの手帖社)、『東西の味』(集英社)
X: @inadashunsuke
Instagram: @inadashunsuke
【パーソナリティ】
クックパッド株式会社 小竹 貴子

料理愛好家・ 料理の楽しみ共創室 部長/創業期から参画し、初代編集長としてメディアづくりに携わる。現在は、料理家や生産者といった食のつくり手の声を届ける活動を行っている。「日経ウーマンオブザイヤー2010」受賞。プロの技術や食材の背景にある物語を、暮らしに馴染む言葉で伝えることをライフワークに、生活者の目線で食の楽しさを探求している。
X: @takakodeli
Instagram: @takakodeli

