Wヒロインの必要があったのか…視聴率が低迷するNHK朝ドラ『風、薫る』に感じる”違和感の正体”
視聴率は苦戦中
見上愛(25)と上坂樹里(21)がWヒロインを務める朝の連続テレビ小説『風、薫る』(NHK)が苦戦中だ。7月13日から始まった第16週『新風吹くころ』から新章に突入。低迷する視聴率回復の起爆剤となるか……。
今作は明治時代を舞台に、日本で初めてトレインドナース(正規に訓練を受けた看護師)になった見上演じる“りん”と上坂演じる“直美”のWヒロインが、患者や医師たちと向き合いながら成長。やがて“最強のバディ”に育っていく姿を描いた物語である。
Wヒロインに注目が集まる中、スタートから視聴率がつまずいた『風、薫る』。その原因は主に二つ考えられる。
ひとつは、「ふたりの出会いが遅過ぎること」だ。
「父親をコロリで亡くしたりんは、家族を支えるために18歳年上の夫と結婚して娘の環を出産。しかし、夫とうまくいかず、火事をきっかけに家を逃げ出して上京した。
一方、孤児の直美はマッチ工場で働いているが濡れ衣を着せられてクビになる。やがて英語を活かして鹿鳴館に潜り込みメイドになるが、まんまと詐欺師に騙されてしまう。
これらのエピソードが伏線となり、後に生きてくるのは分かります。しかしWヒロインの出会いまでに2週間はかかりすぎ。朝ドラファンが楽しみにしている結婚・出産シーンを駆け足で描いたことも失速の理由のひとつではないでしょうか」(制作会社プロデューサー)
人気だった’24年放送の朝ドラ『虎に翼』(NHK)と比較してみよう。
日本人初の女性弁護士、裁判官となったヒロイン寅子(伊藤沙莉)を描いた『虎に翼』では、さまざまな葛藤がありながらも、第2週には明律大学女子部法科に合格。弁護士を目指す女性たちとの出会いが物語を前に進める大きな推進力となった。
一方、『風、薫る』では梅岡女学校付属看護婦養成所に入学するのがなんと第5週。“遅きに失した”と言われても仕方がない。
そしてもうひとつ。視聴率低迷の原因として考えられるのが“バディ感”の欠如である。
高い評価を得た『銀河の一票』は
7月10日に放送された第75話。直美はりんに「看護婦をやめろ」と引導を渡す。
ところが見つかった仕事は新潟の女学校の舎監。東京から通うことなどできず、娘・環(英茉)を連れていくこともできない。
落ち込むりんに前向きな提案をするが、聞く耳を持たない。それなら再婚するしかないと直美が迫ると、
「環と私の人生、他の誰かに委ねたくない」
りんはそう突っぱね、ふたりは感情を露わにして思いの丈をぶつけ合う。
このシーンに違和感を覚えたのは私だけではあるまい。
「ここまで、ふたりがこれほど激しく感情をぶつけ合うシーンはありませんでした。唐突な感じが否めませんでした。直美が『私、この家の本当の家族になります』『環ちゃんのふたり目のお母さんになる』と宣言するドラスティックな展開にも違和感を覚えました。その理由は、こんな大きな決断なのに、背景にある“バディ感”がこれまであまりにも希薄だったから。それこそが、今作に感じる違和感の正体ではないでしょうか」(制作会社ディレクター)
『銀河の一票』(フジテレビ系)、『月夜行路-答えは名作の中に-』(日本テレビ系)、『エラー』(テレビ朝日系)と、この春にスタートした4月クールのドラマで“女性バディ”ものはいくつもあり、トレンドといっていい。
「中でも高い評価を得ている『銀河の一票』を改めて見直しました。第1話、与党幹事長の父から縁を切られ、秘書の仕事も失いトボトボとさまよい歩く茉莉(黒木華)は、亡き母の思い出の品をきっかけに、スナックのママ・あかり(野呂佳代)と運命的な出会いを果たす。
孤独を打ち明ける黒木の圧巻演技に涙する視聴者も続出しました。『バディものとは、孤独と孤独が出会う話である』。そう公言してはばからない本作の佐野亜裕美Pの思惑は、ズバリ当たりました」(前出・プロデューサー)
新章が始まり、再び別れ別れになったWヒロイン。これからふたりに、どんなドラマが待っているのか。
視聴率V字回復の秘策に期待したいが、「時すでに遅し」との声が多いのが気になるところだ――。
取材・文:島 右近(放送作家・映像プロデューサー)
