カウンター内に掲げられたホワイトボード

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「被害額は250万円くらい。ほんと、悪質ですよ」──そう語るのは、東京・湯島でスナックを営むママだ。7月6日、日本中の「夜の街」に激震が走った。クレジットカードの決済代行を手がける「全東信」が、大阪地裁に破産を申請したことが明らかになったのだ。

【写真】破産の発覚後に変わってしまった「支払いシステム」

 負債総額は6日時点で1151億円。『東京商工リサーチ』の取材では、少なくとも20年前から粉飾決算を重ねてきた可能性も指摘されており、真相の究明が続いている。

 全東信は、カード会社と加盟店の間に立つ「決済代行業者」だ。加盟店に代わってクレジットカードの売上金を立て替え、通常より早いサイクルで入金する。その対価として手数料を受け取る、というのが基本的なビジネスモデルである。審査のハードルが低く、幅広いカードブランドに対応していたことから、大手カード会社と直接契約を結びにくいバーやスナックなど、「夜の街」の小規模店舗を中心に広く浸透していた。

 それだけに、破産の影響は深刻だ。多くの飲食店で売上金の振り込みが止まり、店頭では一時的にカード決済そのものが使えない状況に陥っている。多くの売上を全東信に預けていた店の傷は深い。

 現場ではいま、何が起きているのか。湯島のディープな繁華街で話を聞くことができた。

「確信犯だった」──ママが感じていた予兆

 異変の兆しは、破産の一報より前にあった。湯島でスナックを営むママは振り返る。

「いつもなら振り込みがあるはずの日に、振り込みがなかったんですよ。おかしいなと思って、長い付き合いの担当者さんに連絡したんです。そのときは『遅れててすみません!』みたいな感じではぐらかされて。そういうことは過去にもあったのであまり気にしてなかったんだけど……今思えば確信犯だったんだろうなと。ほんと悪質ですよ」

 いま振り返れば、振り込みの遅れは経営破綻の前兆だったのかもしれない。だが、それを見抜くことは難しかった。

最悪のタイミングで消えた250万円

 破産申請が報じられた6日の月曜日、同店は休みだった。ママは、同じく湯島で店を営む友人からの連絡で全東信の破産を知ったという。ショックは非常に大きかった。

「被害額は250万円くらいです。どうにか私個人の貯蓄から補填して、スタッフの子たちの給料も払ってますが、正直めちゃくちゃ苦しい。ボーナスが入った会社員の方たちが月末にハジけることが多いので、うちは月末が稼ぎどきなんです。その分がまるごと未回収になってしまったので、最悪のタイミングだったんですよ」

 個人経営の店にとって、250万円という金額はあまりに重い。ひと月の稼ぎの柱が、ある日突然、宙に浮いたことになる。スタッフのひとりは、ママが涙をこぼす姿を目にしたという。

稼ぎどきのイベントも延期に

 失われたのは、未回収の売上金だけではない。カード決済が使えなくなったこと自体が、さらなる打撃を生んでいる。

「本当は今月上旬に、スタッフのバースデーイベントを予定していたんです。でも、カードが使えないと売り上げが伸びないじゃないですか。だから泣く泣く延期することにしました。もう、常連さんしか頼る相手がいませんよ」

 スナックにとってイベントは、月の売上を大きく左右する貴重なかきいれどきだ。しかしカード決済が止まったままでは、それすら満足に開催できない。失った利益を取り戻す手段までもが封じられている格好である。

 7月中にはカード払い自体は復活する見込みだが、当初はVISAしか使えないなど、不便はしばらく続きそうだという。

 全東信の破産をきっかけに、「夜の街」はコロナ禍以来の危機に直面している。振り込まれない売上、使えない決済、遠のきかねない客足。全東信破産の影響は、大きな余波を生むことになりそうだ──。