孫正義ソフトバンク会長 再エネ撤退からの捲土重来…株主総会で初めて東京電力への出資意欲を表明
ソフトバンク(SB)会長兼社長の孫正義氏は6月24日の株主総会で、東京電力の出資に意欲を示した。
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東電は今年1月に福島原発の賠償・廃炉も含めた「第5次再建計画」を示したが、その中で外部資本の受け入れを表明。3月から出資候補先を探しており、これにSBが応じた形だ。実際、7月の報道で出資候補は、米投資ファンド、日本産業パートナーズ(JIP)など5陣営に絞り込まれたとされ、SBも残っている。孫氏が東電出資の件について公の場で発言したのは、この時が初めてだった。
総会では「ロボット自動生産工場」などにも言及、現在のSBはAIやロボットに“全振り”の方針であり、それが改めて語られたわけだが、となると問題は「電力をどう確保するか」だ。
「アメリカのIT大手は、膨大なデータセンター運営で足りない電力を補おうと、こぞって原発企業との提携などを行っています。そのさまは、もはやインフラ企業と言ってよい」(経済部記者)
一方、孫氏は東日本大震災の福島原発事故以来、“反原発”の論客として知られてきた。経団連の原発再稼働方針にただ一人反対し、11年には私財10億円を投じて自然エネルギー財団を設立。アジアを送電網で結ぶ「アジアスマートグリッド構想」などを掲げていた。
だが、いずれも頓挫。そのために設立した再エネ事業のSBエナジーは、23年には豊田通商へと手放す憂き目にすら遭っている。時代も悪く、22年3月期にはSBは大赤字を計上。中国IT大手アリババ株で穴埋めせざるを得なかった。「儲け度外視」主義はもう通用せず、カネにならない事業からは撤退を余儀なくされたのだ。
だからこそ、今回の東電掌握の動きは、孫氏にしてみれば「捲土重来」。今度はデータセンター需要という、時代の風の後押しもある。SBエナジーでの試みのさなか、17年の決算会見で孫氏は、電力業界を「いじわる」と恨み節を述べていたが、今回の出資はその“意趣返し”の意図もあるだろう。資本さえ握れば、かつての「いじめられ役」が、今度は支配者になれる。
だが、根本的な疑問は残る。急増する電力需要を国内でどう賄うのか。
SBの海外での取り組みを見れば、米オハイオ州での巨大ガス火力発電の参画や、フランスの次世代原発ベンチャーを通じた欧州データセンター拠点への積極投資などがある。つまり、海外では次世代原発を許容しているが、日本では難しく、時間もかかり過ぎてビジネス的には難しいだろう。
国内に目を移すと、大阪・堺市のシャープ工場跡地でのデータセンター構築と同時に、次世代蓄電池の量産を行うとしている。これで電力を賄おうというのか。さらに一方で、次世代クリーンエネルギーとされる「核融合発電」ベンチャーにも出資を行っている。この辺りは、将来の技術革新に期待し、「走りながら考える」ということか。
いずれにせよ、日本の電力とAI技術の革新を巡り、同社の動きが要注目なのは確かだ。
(横関寿寛/ジャーナリスト)
