中村俊輔氏の恩師・新潟医療福祉大サッカー部の佐熊監督が語る 大学サッカーの価値や存在意義
8月から秋春制の新シーズンが開幕するJリーグ。シーズン移行は、毎年多くのプロ選手を輩出する大学サッカー界への影響も大きい。W杯北中米大会で日本代表コーチを務めた中村俊輔氏(48)の恩師で、毎年のようにプロを輩出している新潟医療福祉大の佐熊裕和監督(62)が、移行後の影響や大学サッカー界の展望などを語った。(取材・構成 西巻 賢介)
――Jリーグのシーズン移行で、受ける最も大きな影響は?
「昨年、細井響(新潟医療福祉大出、J2横浜FC主将)が強化指定となり、在学中にリーグ戦に出場したように、主力の4年が夏からJクラブに行く例は増えていく。レベルはJリーグの方が高いから、活躍できるなら早く行った方がいい」
――大学としては全国大会前やリーグ戦の期間中に主力を引き抜かれることになる。
「正直、きつい。でも、チームがだめになるわけではない。4年の主力がいないことを前提でチームをつくり、選手層を厚くするしかない。他の選手にチャンスが広がると前向きに考えればいい」
――在学中の選手がJクラブに行く流れになっていくか?
「選手にとって何が一番いいかを考えると、Jリーグに寄り添っていくのがいい。反対する大学もあるかもしれないが、特にいい選手はそういう大学を選ばなくなる」
――U―21Jリーグも始まる。
「大学2、3年生で部を辞める選手が増えるだろう。もちろん、手放しで行かせる大学はあまりないと思う。29年1月からJ1京都加入が内定した立川遼翔(2年)は、京都から“人間をつくっていくには大学も必要”と言われ、本契約まで(どこでプレーするかを)話し合っていく。選手が一番いい状況をつくるのは大学の責務」
――4年生の夏で退部する場合、大学側に求められる対応は?
「卒業はさせてあげたい。学生がしっかり授業に出ていることが大事になるが、大学側も残りの単位はオンライン授業などで対応はできると思う。ただ、実技は難しく、例えば教職免許の取得を考えている選手は教育実習に行けなくなるので考えないといけない」
――日本サッカー界において、大学の存在価値は?
「大学での選手育成は、欧州などにはない日本独自の文化。高卒でプロでやっていけると思った教え子は、本当に(中村)俊輔だけ。藤本淳吾(現横浜Mユースコーチ)も高卒でオファーはあったが筑波大に行って、大卒時にはJ1から6チームくらい話がきた。強みとしてやっていけば、もっといい選手は出てくる」
――大学で一気に芽が出る選手も多い。
「横浜FCに来季加入内定の向井俊貴(4年)は特待生ではない。松本天夢(新潟医療福祉大出、J1長崎)もそう。でも、4年間で努力をしたから変わった。無名の選手が育つのは地方大学だからできることでもある」
――今後、大学のシーズン移行の可能性は?
「サッカー部を9月入学にすればできなくはない。ただ、推薦入学以外の一般受験の選手を切り捨てることになる。そこまでして変える必要はない。ただ、インカレを夏に開催するなど大会のやり方は変わっていく可能性はある」
◇佐熊 裕和(さくま・ひろかず)1963年(昭38)12月1日生まれ、東京都出身の62歳。桐光学園高(神奈川)の監督として指導者を始め、梅県客家足球倶楽部(中国)の監督を経て14年から現職。22年度、24年度に全日本大学選手権準優勝。元日本代表の中村俊輔、小森飛絢(浦和)、シマブク・カズヨシ(新潟)ら90人以上のプロ選手を育てた。

