高速道路の劣化“9割”が「過積載車両」原因…国民の税金で“尻ぬぐい”の不条理 NEXCOら“常習犯”取り締まり強化
NEXCO西日本と独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(高速道路機構)が、再三の是正指導を受けてもなお違反をやめない道路法(車両制限令)違反「常習犯」への取り締まりを強化している。
同機構によれば、違反車両に対し、積荷の減載などの措置命令(行政処分)や違反内容に応じた「警告書」を発出するなどしているが、一部にそれでも繰り返す車両があるため、「事業者名公表」という手段で対抗しているという。
同機構公表の最新リスト(7月1日時点)には、2023年10月から今年4月にかけて11回の是正指導を受け、それまでの車限令違反の累積回数は「268回」に達した事業者もある。
いうまでもなく、劣化した高速道路の修繕は私たち国民の税金で尻ぬぐいされる。そして、劣化原因の多くが、ごく一部の違反者によって引き起こされているという現実がある。
高速道路機構が明かす取り締まりの実情車両制限令は道路を通行できる車両の長さ・高さ・幅・重量等の制限を定めた政令で、高速道路機構らはとくに重量超過車両に対し、そのリスクや被害の大きさなどを問題視し、取り締まりを強化している。
高速道路機構に取り締まりの実情を聞くと次のような回答があった。
「車両制限令で定められた重量等を超える車両の通行には、特殊車両通行許可等が必要になります。許可の申請はオンラインで可能です。
加えて、2022年4月からは、国による特殊車両通行確認制度がスタートし、あらかじめ登録を受けた車両であればオンライン上の確認によって即時に通行が可能になりました。しかし、未だに多くの無許可の通行や許可違反の通行が後を絶ちません。
このため、高速道路会社と協力して料金所などの現地で行う取締りや自動軸重計による計測に基づく取締りを実施しています。
過去10年(2016年4月~2026年3月)で現地の取締りにおいて重量基準値を2倍以上超過して高速道路を走行したことを確認した場合の悪質違反者に対する告発については53件、2倍には満たないものの繰り返し違反を行ったことを確認した場合の常習違反者に対する告発については1件ございます。いずれも機構・高速道路会社のHPで公表しております。
また、告発に至らなかった違反者についても悪質な違反者については機構HPで公表しております」
社名公表までのプロセス一足飛びに告発や氏名(社名)公表を行っているわけではない。
同機構は高速道路会社と連携し、現地取締りにより重大な違反行為に対する措置命令を行った場合や、 自動軸重計により「軸重超過」を繰り返し確認した場合は運行会社等に対して「警告」を発する。
これらの違反回数・違反内容は各高速道路会社全体で共有。繰り返し違反行為を確認した場合は、運行会社等に対して是正指導を行う。
なお、是正指導にもかかわらず再び違反行為が確認され改善が見られない場合は、同機構ホームページで運行会社等の名称、是正指導の内容等を公表する。
また、特殊車両通行許可の取消し、刑事告発等を行うことがある。
特に、現地取り締まりによって重量が基準の2倍以上となる悪質な違反が確認された場合、即時に告発を行う。
起訴され有罪となれば、運転手個人だけでなく会社ももろとも処罰される(両罰規定)。
刑事罰としては、最高100万円以下の罰金が科されるが、悪質な場合、ペナルティはそれだけにとどまらない。
刑事罰とは別に、国土交通省(運輸局)からトラックの「車両停止(確認登録等停止)」や、「事業停止」「事業許可の取消」といった強力な行政処分が下されることもあり、実質的に営業がストップするリスクもある。
加えて、高速道路会社による大口・多頻度割引といったETC割引制度の利用資格が停止、または取り消しという措置もある。
「悪質な違反者に対しては告発等も視野に入れた関係機関への情報提供をおこなってまいります」
NEXCO西日本は6月5日付の公表文の中で、今後も引き続き、厳格な対応で違反車両を取り締まる姿勢を示しているが、その背景には日本のインフラ維持にかかわる深刻な事情が潜む。
重量超過車両が道路に与えるダメージが、一般的にイメージされるレベルをはるかに超えるという事実だ。
道路の劣化の「9割」は、わずか0.3%の車両が引き起こす国の試算によれば、道路の劣化の9割は、全体のわずか0.3%にすぎない重量超過車両によって引き起こされているとされる。構造基準を大幅に上回る重量をかけ続けることで、舗装は急激に劣化し、床版が損傷するなど、道路構造物への影響は甚大だ。
こうした事実を受け、国交省は取り締まりをさらに強化する姿勢で、トレーラーなどの特殊車両に対する違反への対応強化の方針を固めた。
具体的には通行時の無許可や重量超過などの違反があった場合の業者および運転手それぞれに罰金のほか、刑事告発の基準も厳格化する。
高度成長期に急速に整備された道路インフラは、今まさに老朽化の局面を迎えている。そこへさらなる過負荷をかけ続けているのが、こうした「常習」違反者たちによる“破壊行為”ともいえる。いうまでもなく、道路維持の原資は私たち一般国民が支払う「税金」である。
重量増加は走行安定性を著しく低下させ、横転・転覆といった重大事故につながる危険性も高まる。高速道路で大規模事故が発生すれば、通行止めによる道路ネットワークの寸断と、周辺車両への多大な時間的損失は避けられない。
「ルールの外」で利益を得ることは、社会全体へのコストを押しつけることに等しい本来、一般的制限値を超える大型資材の輸送が必要な場合には、「特殊車両通行許可(特車通行許可)」という制度がある。オンライン申請も可能となっており、手続きの簡易化も図られている。にもかかわらず、無許可や不正走行がなくならない現状は、制度の問題というよりもコンプライアンス意識の欠如とみるべきだろう。
是正指導を20回以上受けてもなお行動を変えない事業者が存在するという事実は、行政指導の「限界」を如実に示しているともいえる。
問われるのは、今後の執行の「継続性と厳格さ」だ。公表やペナルティが一過性の取り組みにとどまるのであれば、「また頃合いを見て走ればよい」と高をくくる事業者を減らすことはできない。道路という公共財を守るための仕組みが実効性を持つには、違反によるデメリットが利益を上回ると事業者に確信させるだけの、より厳格な対応が求められる。

