フェラーリ用アイデアを小さく展開 メカニカ・マニエロ GT4700(2) 拒絶された量産化 具現化された1人の強い想い
フェラーリ用のアイデアをGT4700へ展開
フェラーリの輸入代理店を北米で営んだルイージ・キネッティ氏は、フェラーリ330 GTをベースにした独自ボディを、ジョヴァンニ・ミケロッティ氏へ依頼していた。だが、1967年のスイス・ジュネーブ・モーターショーに、計画は間に合いそうになかった。
【画像】具現化された強い想い メカニカ・マニエロ GT4700 同時期のグランドツアラーたち 全143枚
そこでミケロッティは、自身のアイデアをメカニカ・マニエロの新しいグランドツアラーへ展開することを決める。果たして、同年のショーに出展されたのがGT4700だ。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
反響は大きく、お披露目された初日に、24名の購入希望者が予約金の支払いを申し出たとか。レーシングチームを営んだジョルジュ・フィリピネッティ氏は、その可能性に魅了され、50台もの追加生産を要望したらしい。
ちなみに、330 GTがベースのキネッティ・スペシャル・フェラーリは、後に完成している。ペブルビーチ・コンクールデレガンスにも姿を表しているが、確かにフロントマスクやボンネット、バンパーのラインなどは、GT4700と似ているように思える。
1人の男の強い想いが見事に具現化
量産化が期待されたメカニカ・マニエロ GT4700だったが、同社を率いたアンジェロ・マニエロ氏は、すべての購入申込みを拒絶した。モーターショー終了後、プロトタイプをブランド唯一のクルマとして、手元に残すことを決めていたようだ。
多少の調整を受け、彼へGT4700が納車されたのは1967年11月。だが、カーブでタイヤがフェンダーに擦れることがわかり、前後のフェンダーラインが改良されている。その作業時、部分的に異なるブルーで塗装されたが、なぜか修正されることはなかった。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
それから60年余り。GT4700は、完璧なオリジナル状態にある。美しく速いだけでなく、人間工学に優れ普段使いへの妥協もいらない、魅力的なグランドツアラーを欲した、1人の男の強い想いが見事に具現化されている。
現在のオーナーは、2009年に初めて目にしたそうだが、当時はまだアンジェロご本人が維持していた。彼が100歳を超えた2015年に、売却へ同意したという。
キーを回した瞬間に明らかになる事実
その時点での走行距離は6000km以下で、2026年でも7000kmに届いていない。パッチワーク状に色が異なる塗装は、1967年のまま。大きなセンタースピナーで固定される、14インチのラッジ社製アルミホイールもオリジナルにある。
歩み寄ると、驚くほどコンパクト。全長は4200mm、全幅は1680mmしかない。サイドプロポーションは均整が取れ、高めのルーフラインが調和している。後方には充分に広い荷室が備わり、荷物を固定できるストラップが用意されている。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
詳細を知らなければ、イタリア製のツインカムエンジンが載っていそうに思える。しかし、キーを回した瞬間に事実は明らかになる。フォード由来のV8スモールブロックが始動すると、威圧的なビートが打ち鳴らされる。
インテリアの製造水準は高く、ワンオフモデルとは思えないほど。赤褐色のレザーで仕立てられたシートやドアパネルも、完全に当時の姿を保っている。ベンチレーション機能は備わらず、試作止まりであることを物語る。
大人がゆったり過ごせる2シーターのキャビン
2シーターのキャビンは広く、身長170cmの筆者ならゆったり過ごせる。ダッシュボードには、フェラーリも採用していたメーターが並ぶ。スピードは320km/hまで刻まれ、タコは8000rpmまで。3スポークの、ウッドリム・ステアリングホイールが可憐だ。
トランスミッション・トンネルが広く、ペダルは若干オフセットしているが、運転姿勢は自然。4.7LのV8エンジンは、フロントアクスルの後方へ積まれている。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
重いクラッチペダルを踏み、ソリッドな感触のシフトレバーを傾け1速を選ぶ。ギア比がロングで、変速なしに110km/hまで加速できるが、中間のギア比が巧妙にクロスし、すぐのシフトアップでも問題ない。
後方からデフの唸りが響くが、程なくしてV8エンジンらしいトドロキにかき消される。アンジェロは、もっと洗練された音響を期待していたかもしれない。強い違和感を生むほどでもないだろう。
悦に入った理想的なグランドツアラー
出品予定のオークションに向けて整備済みだというが、連続するカーブではフェラーリ330 GTの敏捷性へ及ばない。ステアリングは反応が正確ながら、アシストがなく重い。乗り心地は良いものの、ボディロールは大きい。
少し気張ると、ホイールアーチへタイヤが擦れる。60年近く前に、ミケロッティのチームが修正を施しているはずだが、完全には治っていないようだ。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
とはいえ、アンジェロにとっては些細な問題だったはず。高速道路を快適にクルージングでき、通勤用のフェリーにもスムーズに乗船できる。長時間運転しても、背中が痛くなることはない。理想的なグランドツアラーだと、悦に入っていたはずだ。
協力:ポール・ガーリック氏、ブロード・アロー・オークションズ
メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)
英国価格:−ポンド(新車時)/約40万ポンド(約8400万円/現在)
生産数:1台
全長:4200mm
全幅:1680mm
全高:1230mm
最高速度:257km/h
0-97km/h加速:6.5秒(予想)
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1165kg
パワートレイン:V型8気筒4727cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:274ps/6000rpm
最大トルク:43.0kg-m/3400rpm
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)

