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深刻な供給不足が続くADHD治療薬「コンサータ」について、厚生労働省が薬局間で在庫を融通できるようにする特例措置を講じることが、3日の閣議後会見で発表されました。これまで認められていなかった薬局間での在庫の譲渡・譲受が今月7月中旬ごろに可能になる見通しで、供給不足の改善が期待されます。

■去年9月ごろから深刻な供給不足が続く「コンサータ」とは

ADHDの治療薬「コンサータ」は、脳内の神経伝達物質の働きを強める作用により、中枢神経系が刺激され、注意欠陥や多動性障害の症状を改善する薬です。コンサータをめぐっては、患者数の増加などを背景に、去年9月ごろから深刻な供給不足が続いています。

コンサータは、主成分の「メチルフェニデート塩酸塩」は、依存性や乱用のリスクが高く、麻薬及び向精神薬取締法や医薬品医療機器等法により、薬局間で薬を融通することを禁止するなど、厳格な流通管理が行われています。そのため、薬局同士で在庫を融通することは認められていませんでした。

■7月半ばにも薬局間譲渡を可能にする特例措置の実施へ

きょうの閣議後会見で上野厚労相は、供給不足が解消するまでの当面の間、流通管理システムに登録された薬局間での譲渡・譲受を可能にする特例措置を講じることを発表しました。流通管理システムの改修が進められていて、7月半ばにも完了する見込みだということです。

■薬局間で譲り合えれば…地域全体で支え合う仕組みに

発達障害当事者協会の事務局長の嘉津山具子さんは、今から15年ほど前、39歳の時にADHDと診断されました。ADHDと診断される前は、日中突然眠気に襲われることがあり、濃いブラックコーヒーを飲んで眠気を覚ましていたという嘉津山さん。服用初日から「頭がスカッと覚醒して動けるようになりました」と効果を実感したといいます。

また、東京ドームで野球観戦をした際には、コンサータを服用する前は聞き分けられなかった友人の声が聞こえるようになり、「普通の人はこうやって聞きたい音を聞き分けられていたんだと初めて実感しました」と当時を振り返ります。

発達障害当事者協会には、コンサータの供給不足により必要な規格の薬が手に入らず、薬の量を調整せざるを得ないケースや、転居や進学で新しい地域へ移った当事者が薬を確保できないケースなど、多くの相談が寄せられているといいます。

嘉津山さんは、薬を求めて複数の薬局を回ることを「コンサータを探す旅」と例えています。今回の特例措置によって、こうした負担が少しでも軽減されることに期待を寄せ、「足りていない薬局が在庫のある薬局から薬を譲り受けられるようになれば地域の薬局同士で融通し合える理想的な形になります」と話しました。

また、「うちの店舗には在庫があるのに、隣の薬局へ回せないのがもどかしい」と話していた薬剤師もいたと明かし、「足りている薬局から足りない薬局へ薬を回し、登録されている患者さんへ渡せる仕組みになれば、患者も薬剤師も助かると思います」と、地域全体で支え合える仕組みの実現を望んでいるといいます。

■「3店舗目でようやく見つかった」当事者は薬探しに奔走する日々

供給不足は、ADHD当事者の生活にも今も大きな影響を及ぼしています。「きょうも1店舗目では見つからず、3店舗目で見つかりました」と話す会社員の男性(40代)は、薬を受け取るために複数の薬局を回ることがこれまでにも何度もあるといいます。

さらに、「たくさんの薬局に電話をして、在庫があることを確認してから処方箋を持って行くようにしています。処方箋を一度出してしまうと、その薬局で入荷を待たなければならないので、それも大変です」と話し、薬を探すことが大きな負担になっているといいます。今回の特例措置によって、地域の薬局同士で在庫を融通できるようになれば、こうした患者の負担が軽減されることが期待されています。

■薬剤師から「今月は我慢してください」といわれる経験も

発達障害当事者協会副代表で、ADHD当事者の金子磨矢子さんは、およそ10年前からコンサータを服用しています。「自分には非常によく合う薬だ」と話す金子さんですが、約3か月前には、在庫不足のため医師と薬剤師から「今月は我慢してください」と言われ、処方の半分の量しか受け取ることができなかったといいます。

薬を飲めなかった日は、「一日休みだったので、やろうと思っていたことがたくさんあったのですが、何もできませんでした」と振り返ります。今回の特例措置について、「今よりはどこかの薬局に偏ることなく、手に入りやすくなると思います」と期待を寄せる一方で、「全体の供給量が足りていないので、これだけですべてが解決するわけではありません」と、供給不足そのものの解消も必要だと指摘しています。

■声を上げられない当事者も… 社会の理解も必要

さらに金子さんは、ADHDであることを職場などで公表していない人も少なくないとして、「困っていても声を上げられない人がたくさんいます」と話します。そのうえで、「眼鏡がないと見えない人が困るのと同じように私たちにとって薬は生活や仕事を送るために欠かせないものです」と、薬が必要な人に届く環境になってほしいと改めて訴えました。