南米ペルーの太平洋沿いにある約500年前のインカ帝国の遺跡から、「フリーズドライのジャガイモ」が発見されました。フリーズドライのジャガイモはアンデス山脈の先住民が作ったもので、交易によって長距離を運ばれてきたとみられています。

Inka Freeze-Dried Potatoes from Tambo Viejo, Acarí Valley, Perú: Journal of Field Archaeology: Vol 51 , No 5 - Get Access

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00934690.2026.2658319

500-year-old freeze-dried potato snacks discovered in Inca storage room in Peru | Live Science

https://www.livescience.com/archaeology/500-year-old-freeze-dried-potato-snacks-discovered-in-inca-storage-room-in-peru

アンデス山脈の先住民は、高地における夜間の寒暖差を利用して「チューニョ」と呼ばれる保存食を作っていました。チューニョを作るには、1日の寒暖差が激しい乾期(アンデス山脈の高地では4〜9月)にジャガイモを屋外に放置して、夜間は霜にさらして凍結させ、日中は太陽光で解凍することを繰り返します。

この現代のフリーズドライに似た製法によってジャガイモの水分が蒸発し、軽量で数年以上も日持ちするようになります。カナダのカルガリー大学で人類学・考古学の非常勤教授を務めるリディオ・バルデス氏は、チューニョは定期的に霜が降りる乾燥した高地でしか製造できないため、標高3600m以上の地域で作られていたのだろうと考えています。

凍結と乾燥を繰り返すことで野菜が長期保存可能になることは、15世紀にインカ帝国が台頭する以前から知られていた可能性が高いそうです。バルデス氏は高地で偶然霜にさらされたジャガイモが乾燥し、それでも食べられることに気付いたのがきっかけではないかと推測しています。なお、インカ帝国の人々は同じ製法で「charki(チャルキ)」という干し肉を作っており、これが「jerky(ジャーキー)」の語源になったとのこと。



バルデス氏らの考古学チームは2024年、ペルー南部の太平洋沿いにあるタンボ・ビエホ遺跡で発掘調査を行っていました。タンボ・ビエホは約500年前、インカ帝国によって作られた複数の地方行政中心地のひとつだとのこと。

ある日、発掘チームが小さな貯蔵庫の中で土の床に埋もれた土器を発見し、持ち上げてみたところ底の方に2つの塊が転がっていることがわかりました。発掘した人物はこれが何かわかっていなかったものの、塊を見せられたバルデス氏はすぐに「これはチューニョだ!」と気付いたそうです。

チューニョは標高が高い地域でしか製造できないため、バルデス氏はインカ帝国の道路網を利用したリャマのキャラバンによってタンボ・ビエホまで運ばれたのだろうと考えています。「チューニョは軽いので輸送も容易だったのでしょう」とバルデス氏は語りました。

チューニョはもろいため遺跡から発掘されることはめったになく、インカ帝国の遺跡から見つかったチューニョとしては今回が2例目だとのこと。タンボ・ビエホ遺跡が位置するアカリ渓谷は極めて乾燥した環境であるため、チューニョのような有機物の保存には適していたとみられます。なお、過去にバルデス氏が行った発掘調査では自然にミイラ化したモルモットも発掘されています。

以下が今回発見されたチューニョ。1個あたりの直径はわずか1.5〜2.5cmと非常に小さいことがわかります。



by L.M. Valdez

バルデス氏は、古代の食品保存方法は現代人にも教訓を与えると主張。「過去の人々から学ぶべきことはたくさんあります。食糧安全保障は現代においても主要な課題のひとつであるにもかかわらず、私たちは食糧を無駄にしており、その量は人類史上かつてないほど多いかもしれません」とコメントしました。