会見に臨んだ「ケア社会をつくる会」小島美里氏(中央)、「日本障害者協議会」斎藤なを子氏(右)(6月24日 都内/弁護士JPニュース編集部)

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人口減少地域での介護サービス維持を目的として、人員配置基準の緩和などを盛り込んだ改正介護保険法を含む「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が6月19日に成立したことを受け、介護・福祉の関係者らから抗議の声が上がっている。

介護・福祉・医療関係者などで構成される「ケア社会をつくる会」と、国内の主要な障害者団体などのネットワーク組織であるNPO法人「日本障害者協議会」は、法案成立に抗議する記者会見を24日、都内で開いた。

両団体は、今回の改正が介護保険制度の根幹を揺るがし、社会保険の原則を破るものだとして、複数の問題点を指摘した。

人口減少地域で人員配置基準を緩和

6月19日に参議院本会議で可決・成立した改正法は、介護保険法や社会福祉法など9つの法律を一括したもので、2027年度の導入を目指している。

大きな柱の一つが、人口減少が著しい中山間地域などでの介護サービスを維持するための「特定地域サービス」の新設だ。

人員配置基準を緩和し、より少ない人数でサービスを提供できるようにするもの。こうした基準緩和を行ってもサービスの提供が難しい場合には、市町村が地域支援事業として直接サービスを実施できる「特定地域居宅サービス等事業」も創設される。

また、中重度の要介護者が多く入居する住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などを都道府県への登録制とし、その入居者に対するケアプラン作成などの相談支援(登録施設介護支援)に、原則1割の利用者負担を導入することも盛り込まれた。

「保険のお約束が守られない」と批判

記者会見で「ケア社会をつくる会」の小島美里氏は、今回の改正を「改悪」と断じ、特に特定地域サービスの創設を最大の問題点として挙げた。

小島氏によれば、この仕組みは介護保険の「サービス給付」から「市町村事業」へと移行するものだという。

保険料を払い続けた加入者が権利として等しく受けられる「サービス給付」に対し、「市町村事業」では自治体の財政や裁量に介護の質が左右されかねない。

市町村事業化は、これまでも「要支援者」に限定して進められていたが、今回の改正では「要介護5」までの全ての人が対象になり得る。これにより、重度の介護が必要な人であっても、居住地が人口減少地域であるという理由だけで、十分な質や量のサービスを受けられなくなる恐れがあるという。

小島氏は、「高齢期に突入して、これから介護を受ける方たちは介護保険が始まったときから保険料を支払い続けてきている世代だ。それにもかかわらず、実際に介護サービスが必要なときに、満足なサービスを受けられないのであれば保険の“お約束”が守られない」と強く批判した。

さらに、人口減少は特定の地域だけの問題ではなく、将来的には全国の多くの自治体が対象になりかねないと指摘。「いずれ介護保険は『保険』ではなく『事業』に格下げされるのではないか」との危惧を表明した。

会見では、当事者地域からの声として、岩手県八幡平市で介護事業所を運営する高橋和彦氏のメッセージが紹介された。

高橋氏は「特定地域の人員配置要件の緩和は地域の死を意味する」と述べ、自身の住む市では在宅医も訪問看護事業所もなく、訪問介護も需要に対応できていない窮状を説明。「絶対的な人が足りない現状では、市町村事業化や基準緩和が効果を示すとは到底思えない」と訴えた。

ケアプラン有料化で「相談控え」懸念

改正法に盛り込まれた住宅型有料老人ホームなどでのケアプラン有料化についても、批判の声が上がった。

現在、ケアマネジャーによるケアプラン作成費用は全額が介護保険で賄われ、利用者負担は原則無料(0割)である。しかし、今回の改正により住宅型有料老人ホーム等の入居者は、新たに原則1割の自費負担を求められることになる。

日本ケアマネジメント学会の服部万里子氏はコメントを寄せ、「相談支援に自費を導入すれば、相談を控える人が出る危険があり、心身の悪化が進む危険がある」と指摘。

さらに「お金を払っているのだから自分の言う通りのプランを作れ、という要求が出て、ケアマネジメントの独立性が脅かされる」として、有料化に断固反対する姿勢を示した。

障害福祉分野への波及も…?

NPO法人日本障害者協議会の理事・斎藤なを子氏は、障害福祉の立場から法改正の問題点を指摘した。

斉藤氏は、これまでも介護保険制度の改定が、その後に障害福祉制度に影響を及ぼしてきた経緯に触れ、今回の人員配置基準の緩和などが、障害福祉の全ての施設・事業を対象に適用される可能性があることに強い懸念を示した。

ケア分野で広く起きている担い手不足の根本原因は公定価格が上がらないことによる賃金の低さにあるとし、「そこを無視した基準緩和によって、担い手不足の問題が解決するはずもなく、かえって地域間格差やサービスの質の低下、職員の疲弊を加速させる」と述べた。

また、今回の法改正審議が9つの法律を束ねた「束ね法案」として短時間で採決されたこと自体を問題視。「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という障害者権利条約の理念に反する当事者不在のプロセスだと批判した。

会見ではこのほか、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格更新制廃止は評価するものの、研修がペナルティを伴う義務化となることや、認知症基本法の施行後初の改正にもかかわらず新たな施策が示されなかったことなど、多岐にわたる問題が指摘された。