主演映画が公開中の内藤剛志「演じる人物との距離感はいつも同じだから、苦手な役というのはありません」
1980年のデビュー以来、ドラマ、映画を中心に活躍を続けるベテラン人気俳優の内藤剛志氏が、『週刊ポスト』にて日々の思いを綴る人気連載「多面体道理論」。連日、主演映画『劇場版 旅人検視官 道場修作』の舞台挨拶でファンの前にも姿を見せている氏が、演じる役柄について明かした。
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少し前の話になります。僕のバッグの中には公開中の『劇場版 旅人検視官 道場修作』以外にも、何冊かの台本が収められていました。
収録の時間が空いたときなど、控え室で1冊か2冊取り出し、なんとはなしにページをめくっていると、その時点で向き合っていた役柄の多様さに感謝し、心が熱くワクワクしていたものです。
なにせ伝説の検視官・道場修作の他に、映画『幕末ヒポクラテスたち』で頑固な漢方医を演じ、公開中の『免許返納⁉』では、主演の舘ひろしさんに絡む反社会的勢力のボスを演じていましたから。
ドラマでもNHKの時代劇『浮浪雲』で、島流しから戻ってきた職人を演じました。6月28日には同じくNHKで『勿忘草の咲く町で〜安雲野診療記〜』という作品が放送されます。このドラマでは死神と呼ばれる冷酷な循環器内科の医師を演じています。
これまでに何度か取材などで「やりにくい役柄はありますか?」と訊かれたりしましたけど、そういう苦手意識は一切ありません。僕はどんな人物を演じても、その距離感は同じなので、得意も不得意もないのです。
わかりやすく言えば、この連載のタイトルにかこつけるわけではないのですが、僕と役柄の関係は結局、多面体なんだと思います。
ある時期は刑事役の面が多く出て、次は悪役が目立つところに現われてくるというような。もちろん、常にどの面も僕なりに工夫を重ね、仕上げていきます。
多くの人が僕を刑事役の役者であると強くイメージしているのは、その面が長く出ていたからでしょう。
例えば『警視庁・捜査一課長』の大岩一課長にしろ、『科捜研の女』の土門薫刑事にしろ、ありがたいことにみなさんに支持され、長きに渡り放送された事実が、さらに僕の刑事役の面を光らせているのかもしれません。
そういう面が、まばゆい正義の光を放てば放つほど、今度は真逆にある、冷酷な医師の面がじんわりと闇を醸し出し、観てくださる方の心を惑わすことができる──。
さて、いつ何時も内藤剛志の多面体なダイスは振られています。これから先、どんな役柄の面が現われるのか。みなさんには期待していただきたいですし、僕自身も楽しみにしているんです。
【プロフィール】
内藤剛志(ないとう・たかし)/1955年、大阪府出身。1980年に『ヒポクラテスたち』で映画デビュー。以後、ドラマ、映画を中心に活動、1995年から2001年にかけて27クール連続ドラマ出演の日本記録を樹立。『劇場版 旅人検視官 道場修作』が公開中
※週刊ポスト2026年7月10日号
