賛否というか「否」ばっかり目立つフェラーリ・ルーチェ! ぶっちゃけ「カッコ悪い」の声だらけだが数年後には名デザインと呼ばれる可能性もある!!

この記事をまとめると
■フェラーリ初のEV「ルーチェ」のスタイリングが世界中で賛否を呼んでいる
■これまでもフェラーリは登場時に物議を醸したモデルが少なくなかった
■いまは不評なルーチェも、将来は名作として再評価される可能性を秘めている
賛否両論が巻き起こっているフェラーリの新作「ルーチェ」
フェラーリが新型モデル「ルーチェ」を正式発表した。イタリア語で「光」を意味するこのモデルは、フェラーリ史上初の5ドア・5人乗りというパッケージングに加え、こちらも史上初となる完全電動モデル、つまりEVのフェラーリであることで注目を集めた。しかし、そのパッケージングやドライブトレイン以上に話題となっているのがそのスタイリングだ。

デザインを手がけたのは、元アップル最高デザイン責任者のジョニー・アイブと工業デザイナーのマーク・ニューソンが設立したクリエイティブ集団「LoveFrom」。シェル状のグラスエリアがベルトラインの下まで伸び、ボディ両端に広がる独特のフォルム、前後の空力ウィングがガラスエリアのシルエットを包み込むように浮遊するデザインなど、これまでのフェラーリの文法とは明らかに異なる造形だ。
この見たことのないスタイリングに対して、世界中のクルマ好きの間で意見が真っぷたつに割れている。「フェラーリらしくない」「EVだからこそ許せる新解釈」「慣れるまでに時間がかかる」などなど。その多くは「賛」ではなく「否」であるが……。

しかし、じつはフェラーリのスタイリングに賛否が交錯するのはいまに始まったことではない。歴史を振り返ると、フェラーリには登場当時に物議を醸しながらも、のちに名車として再評価されたモデルが少なからず存在する。
たとえばフェラーリFF(2011年)。フェラーリ初の4WDの4シーターシューティングブレークとして登場したFFは、そのハッチバックに近いシルエットに「まるでフェラーリらしくない」という批判を受けた。

ところが実際に乗ってみると走りは紛うことなくフェラーリのそれであり、フェラーリが証明した「実用性と官能性は両立できる」というコンセプトは、後継のGTCルッソにも引き継がれている。いま見ればかなり先進的だったといえるだろう。
賛否を巻き起こしたということでは、テスタロッサも同様だ。そのフォルムには当初から好意的な意見も多かったが、サイドに大きく刻まれたストライプ状のエアインテーク、通称「チーズグレーター」は、登場当初「やりすぎ」と批判する声があった。

しかし今日では、1980年代フェラーリの象徴として熱狂的なファンを獲得し、中古車市場でのプレ値がそれを証明している。
「世界一醜いフェラーリ」と評された2台のモデルの現評価
また、登場当初の評判を後に大きく塗り替えたフェラーリの代表格として挙げておきたいのが、250GT SWB「ブレッドバン」だ。1962年に誕生したブレッドバンは、もともとフェラーリの創始者エンツォ・フェラーリの「激怒」が深く関わっている。

当時、フェラーリの大口顧客であったジョヴァンニ・ヴォルピ伯爵は、最新鋭のレーシングカー「250 GTO」の購入を申し込んだ。しかし、ライバルチームへの支援に対して激怒したエンツォによって250GTOの購入をキャンセルされたという。これに今度はヴォルピが激怒。フェラーリを飛び出したエンジニアのジョット・ビッザリーニを呼び寄せ、自らの250GT SWBをベースに独自の改造を施してGTOに対抗する車両を作り上げた。それがこの通称「ブレッドバン」だ。
ピエロ・ドロゴがデザインしたそのボディは、鋭いノーズとカム・テール理論に基づいてぶった切られたような四角いリヤスタイリングのシューティングブレーク的シルエットであり、当時の英国プレスがその姿を「パン屋の配達バン」と表現したことから「ブレッドバン」という不名誉なあだ名がついたというのはあまりに有名だ。

当然ながらエンツォは「ウチのマシンをめちゃくちゃにしやがって」と激怒したと伝えられているし、実際のところ、当時は「世界でもっとも醜いフェラーリ」と揶揄されることもあったという。
しかし、見た目こそ奇妙に見えたブレッドバンであるが、その空力性能は優秀で、1962年のル・マン24時間レースではストレートでGTOより速かったとも伝えられている。現在では1960年代フェラーリのカルト的存在として、世界でもっとも有名で価値あるワンオフ・フェラーリの一台となっているから、何が起こるかわからない。
さて、「世界でもっとも醜いフェラーリ」というフレーズが出てきたので、もう一台、そう呼ばれているモデルにも触れておこう。それがフェラーリ・コンシソだ。

1991年のジュネーブモーターショーに登場したこのモデルは、フェラーリ328GTSをベースにピニンファリーナが手がけた実験的デザインショーカーだ。しかし、その姿はあまりにも衝撃的。ドアはなく、ルーフもなく、ソフトトップさえも存在しない完全なオープンカーで、乗員は太いサイドシルを跨いで乗り込む必要があった。フォルムは丸みを帯びており、美しい曲線美を描くピニンファリーナが手がけたとはにわかには信じられないデザインで、当時から賛否というよりも「否」が圧倒的多数を占めていた。
とはいえ、それから30年以上が経ったいま、コンシソはその唯一無二のキャラクターゆえにカルト的なファンをもつ存在となっている。「ダサかっこいい」フェラーリというのもアリなのかもしれない。

というわけで、これまでにそのスタイリングで賛否を巻き起こしてきたフェラーリを何台か取り上げてみた。果たしてルーチェは後年、どのような評価を受けているのだろうか。どうか、フェラーリファンならばぜひ長い目で見守っていただきたい。



