井上彩さん

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 フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で声優を目指した女性を取材した「声優になりたくて2」(2024年6月放送)。一度は夢を諦めかけた元公務員の井上彩さん(当時31歳)は、番組放送後の反響に励まされ、再び夢を追うことを決めた。2年後の今は、声優業界の厳しさを体感しているという。実際、その厳しさについて、井上さんと、井上さんが所属する事務所の代表・佐藤壮さんにも話を聞いた。
◆先輩の領域を目指し厳しさを痛感

――番組で放送されたオーディション結果を受けて、一度は夢を諦めることを考えたものの、視聴者から応援をもらって、続けようと決めたそうですね。今は事務所に所属し、声の仕事もされていますが、実際、厳しさを感じることはありますか?

井上彩:はい。「こうやってみて」と、瞬時にリクエストされることが多く、声優は適応力が求められる仕事だと思っています。私は、これと決めたら突き進むタイプなので、臨機応変に動けることや幅広い分野の知識など、勉強が必要なことは多いです。

事務所の仕事以外に、自分個人でも仕事のきっかけにつなげるように動いていて、朗読劇に出演したりしますが、この前、ベテランの声優さんのお芝居を間近で見る機会があったんです。言葉の持つ説得力が大きくて、自分ではシーンをイメージしながらお芝居をしているつもりでも、ベテラン声優の方は、もっと奥深くまで作品の場面がみえているんだなと身に染みて感じました。自分も先輩のあの領域までいかないといけないと強く思っています。

◆30代の声優が直面する壁

――井上さんが公務員を辞めて声優の仕事を目指したのは24歳頃でした。31歳で事務所に所属し、現在は33歳ですが、年齢のことは気になりますか?

井上彩:気になります。今の年齢が一番中途半端じゃないかなと感じていて。10代から声優になるために頑張っている子も多い中で、自分はスタートが遅かったと思ってしまうんです。例えば、「この年齢だったらプロとしてこのくらいできるよね」と厳しく見られることもあったので。

30代って声優人口というのか、人数が多いと思うんです。40代、50代になると味が出てきて、高齢の役が多くなったりすると思うんですけど、30代はよほどでない限りはすぐ自分の得意を活かせるといえないというか……。

私は声質が低いので、一番やりたいアニメでは、少年の役ができればと思っていますが、もっと若い年齢の子や声質の高い子と戦えるかいうと、そうでもないと思ったり。自分の等身大の声でできるといいんですけど、20代後半や30代の声の仕事は競争が激しくて、正直、難しいかもと思ったりします。

◆新規参入が難しい声優業界の構造

――井上さんが所属される事務所・代表の佐藤さんにお聞きします。佐藤さんは、「一回ダメとなった子にもチャンスを」というお話で、井上さんをスカウトされたそうですが、どんな理由からですか?

佐藤壮:僕はもともと声優の専門学校で、10年ほど教務をしていたんです。そこでは、2,000人くらいの受講生を声優やアニメの世界へ送り出しました。一方で、声優業界は事務所が200社くらいあるといわれていて、養成所だったら2年ほど通って、その後、テストを受けて合格すれば事務所に所属できます。事務所に所属してからはレッスンを受けたり、別の養成所に通ったりする子もいます。

時間をかけてレッスンを受けて、ようやく仕事が依頼されるというのが声優業界のシステムなのですが、例えば2年間、事務所に所属してレッスンは通ったけれど一度もオーディションを受けられなかった、という子がいるのも当たり前だとも言われています。