中国産でも『らしさ』は表現できる? 4代目『ホンダ・インサイト』に込められた作り手の思い(後編)
気になったのはスポーツモード以外の音
4代目『ホンダ・インサイト』に搭載されるスポーツモードの『アクティブサウンドコントロール』は、ボーズ製スピーカーがいい仕事をしているのか、音質はよく感じた。
【画像】中国から輸入されるクロスオーバーSUV!4代目『ホンダ・インサイト』 全88枚
気になったのはスポーツモード以外で、EV特有の音が常に聞こえること。最初は滑走しているような音をわざと作っているのかと思いきや、聞けば単なるメカニカルノイズで、開発責任者である小池久仁博さんは「できれば消したい」と今後への課題を認識していた。

4月16日に発売された4代目『ホンダ・インサイト』。歴代初のEVモデルとなる。 平井大介
また、回生ブレーキについては、好みが分かれそうな気がした。パドルシフトで強さを変更できるのだが、スポーツモードでは選んだ強さを固定できるものの、他ではすぐに通常の強さに戻ってしまうのだ。
これは社内でもワンペダルモードを採用するかどうかも含め議論があったそうで、幅広い一般ユーザーの使いやすさを考えて、ここに落ち着いた。将来的なEV拡大に向けて、エンジン車からの乗り換えも想定しており、積極的なドライビングを楽しみたい層にはスポーツモードで応え、それ以外のユーザーは操作性重視というわけだ。
開発責任者は生粋のホンダ・ファン
1989年に入社した小池さんは、入社前から憧れていた生粋のホンダ・ファン。そこで、今回のインサイトで表現したかった『ホンダらしさ』を聞いた。
すると、「使い勝手とパッケージです」と即答。それはできていて当たり前のことで、犠牲にできない部分だと強調する。これはまさに、長年ホンダが受け継ぐ『M・M(=マンマキシマム・メカミニマム)思想』そのものだ。

開発責任者である小池久仁博さんは、初代NSX-Rを所有する生粋のホンダ好き。 平井大介
もう少し具体的に書くと、運転席に座った時の自然の姿勢であったり、後部座席への乗り降りのしやすさや、膝回りがゆったりとしていることなど、「顧客に寄り添う」ことが肝要で、それをEVならEV、ハイブリッドならハイブリッドで表現するという。
ただ、こうした一見すると地味な部分は、残念ながら必ずしも商品力に結びつかない。事実、中国でe:NP2とe:NS2の販売は苦戦しているようなのだ。
最近中国で売れるクルマはとにかくモニターが大きい必要があり、冷蔵庫やカラオケのマイクがついているなど流行に対応しているかが重要と聞く。また開発のスピードが速く、日本も欧州もそこへの対応が課題となっている。
小池さんは「同じリードタイムで開発できる仕組みを検討している」と話し、その一方で「変わらない部分はしっかりと作っていきたい」と、ホンダらしさを貫く姿勢だ。
「作っているのは同じ人間です」
今回、中国生産ということで、デザインなど全てが中国側での意志で作られたと言われることが多いそうだが、先に述べたように日本側から匠の技術も入っており、そもそも開発をまとめたのは生粋のホンダ好きだ。
「作っているのは同じ人間ですので」と小池さんは語る。つまり、肝心なのは『どこで』作っているかではなく、『誰が』作ったかなのだ。

3000台限定となる現在の販売状況は「計画どおり」となっている。 平井大介
正直に書けば、EV販売比率が他主要市場より極端に低い日本市場において、インサイトのが売れるかは未知数だ。限定販売というあたりに、ホンダが捉える現実が見え隠れする。現在の販売状況(5月末の取材時点)は「計画どおり」とのことだが、ガソリン代の不安定さや、政府や自治体の補助金充実という追い風も吹いている。
ただ、価格だけでいえば日産リーフには518万8700円のB7Xがあり、少しサイズは小さいがもっとリーズナブルなスズキeビターラもある。輸入車勢にもコンパクトEVは結構多い。
インサイトという言葉には『本質を見抜く』という意味があるが、『ホンダらしさ』という本質は、ユーザーにどれだけ伝わるのか。少なくとも今回の取材で、作り手が込めた思いを感じることができたのは、確かなのであった。
